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まあ、なんとなく③

励ましと聞けなくて

俺がないというなんの話をなんでそんな話したんだろう。心を許してくれたのか?
わからん…。彼は全くわからん。だけど、とにかく生きてほしい、そう願う毎日だった。ただ生きるだけじゃなくて少しでも楽しい毎日を過ごしてほしい。私がなんとなく過ごした今日一日中は、彼にとってどれほど貴重で価値のある1日なんだろう。どうにか1秒でもいいから笑って過ごして欲しい、そう思って気持ちはずっと心配なものの一緒にいる時間は病気のことは忘れられるように笑って過ごした。彼の為にも、自分の為にも。友達にも相談した。もう半年で死ぬ気でいる彼を励まして欲しいと父親を学生の頃に突然亡くした友人にお願いして手紙まで書いてもらった。
「別れる」とは言いつつも彼は私と会ってくれていた。同情してくれていたのか彼も離れたくなかったのかわからないが、それだけで充分だった。

もしかして…

ふと脳裏によぎった。

そういえば私って彼の家に行ったことがない。

居候と一緒に住んでいるという話を付き合う前に聞いた。仲良しな友達が住む場所がなくなって転がり込んできた、と。「家に帰ると家の廊下一面にイカ干されとって、なんやねんこれ!!言うたらイカの一夜干し食べたくてって言うとって(笑)家中がイカ臭くなっとって大家から臭い言うてクレーム言われてん。そんなめっちゃ変な奴が家におんねん。やからあんまり会わしたくないねん。」そんなエピソードを話してくれた。私は別にそれならそれでええわと思って深追いもせず行ったことがなかった。が、これは怪しい。もしかして彼女がおってなんか魔が刺してアプリやって変な女(私)が釣れて変に同情してもて別れられんくなって変な嘘(癌)ついて別れようとしてるんか??!と。あーそうであればそうであってほしい。癌じゃないならもうそれでいい!!頼むからそうであってくれ。でも、本当に癌だったら…?なんて嫌な女だろう…。そんなことを疑うなんて…。数日葛藤した。しかし、迷うくらいなら聞いてしまえ!と思い、ちょっと聞きたいことがある、と言って上野公園で散歩しようと言って呼び出した。

意を決して

夜の上野公園で彼に聞いた。「もしかして、もしかしてやねんけどさ、ほんまに違ったらごめんな。ちょっと考えてたら思ってんけど、家に行ったことないやん?ほんで思ってん。もしかして彼女おる?居候ちゃうくてそれって彼女で。なんか彼女にもちょっと飽きてきたし〜、って軽い気持ちでアプリしてみたら自分みたいな変にいい奴がひっかかってもて、別れたいけど妙にええ奴やから傷付けたくないからってなってて癌って嘘ついて別れようとしてる?ほんっまに嘘ちゃうかったらごめんな!でも、そうやったら自分はそうがええねん!全然今からでも友達普通に戻るし!ほんまのこと言うてほしい。自分の存在がめんどくさくなったんやったら全然それでええねん!全然普通に別れるし!!!そっちの方がええ!!ほんまのことが知りたい。」と。すると彼が間髪入れずに「え、ひどいな!!」と言って笑った。「んなわけないやん!」と。「今はちょっと家には呼ばれへんけど、全然今度おらん時来てもらったらええし。」と。私の中では嘘だということは少しの希望だった。本当に癌じゃなくてほしいと願って聞いたことだった。これで癌じゃなかったらどうしようと思っていた。これを聞いた時には聞くんじゃなかった、と心底後悔した。

変わろうとする彼

私の母親から癌にいいとされるものが小包でよく届くようになった。黒ニンニクや、自然療法が好きな母親はこんにゃくと枇杷の葉、タオルを詰めて送ってくれた。こんにゃくを熱々に温めてタオルに包んむ。患部に枇杷の葉を置いてその上にそれを置くといいと言う。私は彼が家に泊まった時は毎朝その枇杷の葉の治療をした。そして友達に書いてもらった手紙も渡した。両親には絶対に病気のことを伝えないと言っていたので、それもなんとか説得していた。なかなか病気について聞かれなかったが、聞けそうな時にはちょこちょこ体調は大丈夫なのか聞いていた。すると、彼に変化があった。母親に伝えて、とりあえず抗がん剤治療を始めようと思う、と。そして、最近離婚した姉が埼玉に1人で住んでたけど、一緒に住むことになった。だから引っ越すことになった。と。私はすごく嬉しかった。このまま一人暮らしを続けていくことに対してすごく心配していたから誰かがそばにいてくれるなら本当によかったと。そして母親もすごく驚いて、すぐにでもこっちに来ると言って、しばらくはこっちに来るとのこと。私は安心した。今まで何度も別れたいと言っていた彼とやっと別れる決心がついた。これで彼の側には家族の支えがあって、私と別れたいという彼の要望にも答えられる、そう思った。だから彼に、ちゃんとお別れしよう。と伝えた。

お母さんからのライン


そんなお母さんから急に私にラインがきた。彼のお姉さんの子供のアイコンだった。前に彼から甥っ子めっちゃかわいいやろ〜って言って見せてもらった男の子だったからすぐにわかった。内容は「初めまして。息子から病気のことを聞きました。突然で驚きましたが、⚪︎⚪︎ちゃんもさぞ驚いたことでしょう。ごめんなさいね。息子が別れるって言ってたみたいね。本当は別れたくないはずなんだけどね。学生の頃から変わって自分勝手な息子で⚪︎⚪︎ちゃんも大変でしょう。突然学校休んで1人でひょこひょこどっか行ったり、母親も理解し難い息子です。そんな息子が⚪︎⚪︎ちゃんに会ってからすごく変わって私も驚いてます。いつもありがとう。」そんな内容だったと思う。めっちゃいいお母さんじゃん!!!なんで仲が良くないんだろう、と思ったが、親子関係というものは当事者にならないとわからないものってあるよなぁと思った。

行方不明の息子

別れて数日、「⚪︎⚪︎ちゃん、夜分遅くにごめんねえ。そっちに息子行ってない?突然行方不明になってしまって…。電話にも出ないし、ラインも既読にならないのよ。心配かけてごめんねぇ。」と。はああああ!!?!心で叫んだ。私は仕事終わりで1人で家でのんびりしていた。別れたものの心配だったのでラインで彼とは普通にやりとりはしていた。「来てないですけど、心配ですねえ。ラインしてみます!また何かあったらすぐ連絡しますね!」と返した。あいつなにしよんねん!!!!とか思いながらずっと返却できていなかった本でも返しにいくかと散歩がてら外に出た。するとお母さんから、「息子どうやらこの辺にいるみたいなんだけど、⚪︎⚪︎ちゃんちの近くじゃないかなぁ?」と、場所を示すスクショとともに送られてきた。場所は私が返却する図書館の近くで、え!!!めっちゃすぐ側おるやん!!!こわっっっ!!!!って思いながら彼に「ねえ、めっちゃ側におらん?」って送った。「え?!なんでバレたん?!」と返事が来た。そんなラインをしていたが急に後ろが気になり後ろを振り返ると、そこには彼らしきシルエットの男がいた。え!!おるやん!!!!そんなことを呑気に思い、なんしよんねん!!ストーカーかよ!!声掛けろよ!!と笑いながら彼に近付いた。すると彼は近付いていくとすぐそばのコインパーキングの影に隠れた。あ、こいつ恥ずかしいんか。と察した。ニヤニヤしていたが彼の性格を察しそのまま何事かもなかったかのように帰路に戻った。「お母さんが心配しよんで。近くおるんやったら家来たらええやん。」と送った。そのまま家まで辿り付き2階から眺めているとうろうろしている彼が出てきた。こいつ、まじでなにしよんねん…。そう思いながら眺めた。すると「行くわ!」と返事が来てしばらくして彼が家に来た。「おかんに絶対言うなよ。」と言われたがこっそりお母さんには連絡した。

ここから私達は別れたのにまたずるずると関係が続いていく。

つづく

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