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不倫をするということ

どうやら私は不倫に好都合な女らしい。

いや、今更「どうやら」は白々しいだろうとは思う。「やっぱり」という方がよほどしっくりとくる。けれど、不倫に好都合たる所以は私が自己の最も嫌悪する部分であり、できることならば認めたくないし、永遠に目をそらしていたかった。

私は男の浮気は当然だと思っているし、そこにそれほど大きな意味などないと思っている。本当にたかが浮気である。

もちろん離婚原因のトップが浮気であることは承知しているが、離婚を望んで浮気をする男性が一体どれほどいるというのだろう。男性のほとんどは離婚する気なんてさらさらないのに。結局は妻が一番なのに。どうしてたかが浮気を許せない女性が多いのだろうと常々思う。

私は人と比べて圧倒的に自己肯定感が弱いので、浮気を断罪する女はどれほど自己愛が強いのだろうとさえ正直思っている。自分が妻の立場であったとして、自分を捨てる気がないのならば少しの浮気ぐらいいいではないかと。

だから私は不倫を持ち掛けてくる男を心から憎むことができない。

そして「たかが浮気」、「結婚したからといって一生妻や夫だけを好きでいるなんて無理」なんて本気で言ってしまうものだから、気楽に、簡単に不倫に誘われてしまう。ほかにも、はっきり自分の意見を言えないところとか、「なんか求めてそう」なところとか、重くない付き合いやすい女を演じてしまうところとか、自分がいやでいやでたまらない部分が、不倫をする男性にとってはうってつけのようだ。

でも、違うんだよな。

「たかが不倫、そのくらい許せ」と常々思っているのは妻である場合の話であって、実際私は独身であるしそう若くもないので、先のない大切にされない都合のいいだけの関係なんて、言葉では言い表せないほどにむなしい。

それはこちらも遊びだと割り切っていても変わらない。

なのに、頭ではそう分かっていても、寂しさだったり性欲だったりに負けそうになる。というか、結局負ける。

「お前みたいな女のせいでうちの主人が不倫するんだ!」と既婚女性には怒られるのだろうが、私の言い分としては「私ごときがたかが不倫したくらいであなたの家庭など壊せませんよ」である。

自己肯定感の話に戻るが、自分を大切にしている女性なら、自尊心の強さから「そんな男ありえない!都合のいいように使われているだけ、ふざけるな!」とはっきりと問答無用でNoを突き付ける。しかし、私にはそれができないし、それができないことを隠すこともできず見抜かれて、ずるい男に不倫に誘われてしまうのである。

昔の話だけれど、子供が生まれた途端、まったく家に来なくなった人がいた。

強がりではなく、別に好きでもなんでもなかったけれど、やっぱりなんだかもやもやした。

そして最新の出来事としては、奥様が出産間近の男性に誘われた。

正しい人はきっとこう言う。妻が妊娠中の性欲の捌け口だと。

そんなことは当然分かっている。だから私もじゅうぶんにむなしい。

欲望と自制の間で死ぬほど悩んで、子供が生まれてから考え直すように伝えた。あえて伝わりにくい表現を選んだのだけれど、これは「No」ではない。相手に品行方正を求めたわけではなくて、子供が生まれても私に会いたいと思ってくれるならそのときは受け入れるよ、という未来のYesだった。おそらくは理解されていないだろうけれど。正直、私にYesかNoかなど選ばせずに、有無を言わさず押しかけてくれたらどんなにありがたかっただろう。

求めているのかいないのか曖昧にするしかなかったし、断ることも受け入れることもできずに、本当は求めてしまっていることを悟られないためには、もう無視をするしかなかった。

結局はただシンプルに、「奥さんが今できないからって、さすがにそれはちょっといやだな」というだけの話なのだけれど。


不倫をするということ

むなしさに耐えて楽しむだけの強い心があるかどうか

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