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武装して本当の自分を隠したらカーテンが揺れた

武装とは、戦闘の準備をすること。
別に世間と戦っているつもりはないのですが、わたしにとってのメイクは、武装のひとつなんじゃなかろーか、と思っています。

まぁやっぱりわたしは昔から人付き合いが苦手なのでしょうね。
戦闘モードのスイッチを入れないと、外に出られませんでした。
若いときに化粧が濃かったのも、そういうことだと思います。

わたしのシガナイ人生での1番の武装は「ピアス」でした。
両耳合わせて7コ、鼻、口、舌、おへそに1コずつ。若気の至りとも言います。
今はもう塞いでしまって、両耳にひとつずつしか残っていませんし、ピアスをする機会もグッと減ったので、穴が活躍することはごく稀です。

ボディピアスが流行っていた頃だったので、それで手を出したのですが、そしたら止まらなくなってしまい、あっという間に次々と開けてました。
そして髪型はブレイズ、もしくはド派手なエクステどーん。

別にギャル道を突き進んでいたわけじゃないし、もちろんヤンキーでもないし、パンク寄りでもないし、派手でいたかったわけでもないんです。
自分が空っぽだということを、悟られないように「武装」していました。
本当の自分を見せたくなくて、見た目で誤魔化してたんですね。

お金を使うことで自分の空っぽを埋めるのと同じで、見た目に迫力を出すことで、空っぽを埋めていました。だからわたしにとってはそれが「武装」。

病んでたね、なんてことは思いませんよ。それは自分が選んだことで、空っぽが埋まったと思えていたから、それなりに楽しんではいました。
時々、虚しくなることもあったけど、それはお得意の見て見ぬふりで。

今はもうそんな「武装」をすることもなくなりました。
メイクする楽しさはもちろん変わってないです。女も男も同じでしょ。
相変わらず自分の空っぽは埋まってないけど、それを自分で認められるようになったんだと思う。

おしゃれを純粋に楽しんでいたわけじゃなく、戦闘モードに入るスイッチでした。
自分と戦ってた。毎日毎日。
ありのままの自分でなんて、いられるわけがなかったです。
自分をこれまでかと隠して、生まれ変わりたいと願って願って、たどり着いた一種の破壊願望。
内側から自分を変えるのは、とても難しくてできませんでした。

今でも鏡をよく見ると、ピアスの跡が残っています。それを見る度に、戦ってた毎日を思い出します。

そうそう、自分でボディにピアスは怖かったので、皮膚科で開けてもらってたんですよ。
確か池袋だったかな? そんな都会の方にピアス専門みたいなクリニックがありました。

受付の横にはニードルがズラーっと並び、看護師さんの耳にも至る所にピアス。
待合室には初ピアスであろう女子高生が何人かいて、キャッキャしてました。

舌に開けてもらうときに、口から舌をビヨーンと出して、機械に固定されるんですね。そして前フリも何もなくピアッサーでズキュン。
これが一番痛かった! ちょっと涙ぐみました。
そして開ける瞬間、看護師さんがニヤッてしてた。絶対Sだわー。あなた天職見つけましたね。

まだあるのかなーあのクリニック。なんとなく、時代的にもうアウトな気がしないでもない。

自分を大切にする、なんてことは考えてみれば今までなかったし、現在進行形で今もそう。
簡単に言う人がいるけどさ。なかなか難しいことなんだよ。目指してはいるけどね。自分に関心が持てないのは相変わらず。

ちなみに、あのクリニックの待合室で、今日はどこに開けますか?って聞かれて「舌にお願いします」と言った時の、女子高生たちのドン引き具合はすごかったです。
空気の流れが変わって、待合室のカーテンがちょっと揺れました。