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【10作品目】わたしは最悪

こんにちは!
映画鑑賞が趣味で2022年は120作品を観ていましたAyumiです。

今年は観た作品の概要を整理するためにも簡単な記事に起こそうと決意いたしました。2023年10作品目は「わたしは最悪」です。

わたしは最悪はどんな作品?

この映画のあらすじは以下です。

学生時代の成績は優秀で、アート系の才能や文才もあるのに、決定的な道が見つからず、未だに人生の脇役のような主人公・ユリヤ。そんな彼女に恋人・アクセルは、妻や母といったポジションを勧めてくる。ある夜、ユリヤは招待されていないパーティーに紛れ込み・・。

自分に正直に人生を選択していくヒロインの恋と失敗と成長の物語です。

優秀で才能がある20代後半の女性・ユリヤは、何でもそつなくこなします。しかし、息詰まるといつも思う「これじゃない」感。

そんな彼女のもとに現れたのは、年上で知的な男性・アクセル。
彼との幸せな生活を送るも、違和感を感じたユリヤは、パーティーで出会った青年・アイヴィンへと気持ちが動いていきます。


はたして、彼女はどんな選択をするのか?

自由奔放過ぎる女性・ユリヤ

主人公ユリヤの性格を分解していきます。
ひと言で表すなら、大胆で好奇心旺盛な女性です。

医大に進学するも、興味があるのは「肉体」ではなく「魂」だと気づき心理学の道へ転向。恋人と別れ、講義担当の教授と寝たりしたもののこれじゃない感。自分は「視覚」の人間だとひらめき写真家を目指す。

そつなくこなせるがゆえ、明確に方向性が定まらずフラフラするユリヤ。

映画の序盤では主人公に対して「このままで大丈夫なのか?」と不安を抱く人も多いでしょう。

しかし、終盤に近づくにつれその感情が「共感」へと変化していきます。

全14章からなる物語

本作は、序章・終章とそれにはさまれた12章からなる物語です。

出来事が短い章でまとめられており、タイトルも簡潔であるため、テンポよくストーリーが進みます。まるで小説を読んでいるかのような感覚です。

▶ざっとあらすじ
序章:自由奔放な彼女のもとに15歳年上の知的な男性アクセルが現れる。互いに惹かれ同棲する。
1章:仕事も順調で40歳を過ぎたアクセルは子どもを切望するも、自分探しの途中であるユリヤは難色を示す。
2章:不意に参加したパーティーで同年代の男性と出会う。互いにパートナーがいるものの親しい関係になっていく。
3章:「#Mee to 時代のオーラルセックス」という記事をブログにアップし反響を呼ぶ。
4章:ユリヤ30歳の誕生日。ともに過ごしたアクセルは、彼女の複雑な家庭環境を知り「自分の家庭を持ったほうがいい」と告げる。
5章:ユリヤの働く本屋に青年・アイヴィンが現れる。完全に心惹かれたユリヤはアクセルに別れを告げる。
6章:アイヴィンの物語。先住民の血縁であったことを知った恋人・スニバは先住民族の権利を擁護する活動に傾倒。そんな時期にユリヤと出会う。
7章:アイヴィンと暮らし初めたユリヤ。別れた後も彼女のインスタをフォローするアイヴィンに難色を示す。
8章:マジックマッシュルームを試したユリヤは正気を失い部屋は荒れ放題になる。そんな彼女を気遣うアイヴィンに対して「自然体でいられる」と告げる。
9章:ジムのTVでフェミニストと討論している元恋人・アクセルを観る。番組に釘付けになるユリヤ。
10章:アクセルが膵臓がんであることを知る。捨てた原稿をアイヴィンに勝手に読まれたことに激怒するユリヤ。
11章:妊娠が発覚。子どもを望まないアイヴィンに相談できずアクセルのもとを訪れる。「君は最高だ」というアクセルの言葉に涙する。
12章:仕事中のユリヤのもとにアクセル急変の連絡が入る。途方に暮れる彼女であるが帰宅後のシャワー中に流産。
終章:スチールカメラマンとして働くユリヤは、落ち込んだ女優を励ます。仕事を終え帰ろうとする女優を迎えたのは赤ちゃんを連れたアイヴィンであった。

序盤からは想像もできない結末です。
いい意味で裏切られました。

全体として120分のボリュームでありながら、心地いい余韻と充足感に満たされます。この構成こそが本作の魅力です!

自分探しのゆくえ

自分探し中のユリヤは結局何をやっても長続きしません。

おそらく「自分はまだ本気を出していないだけ」と本人は思っています。

他人から仕事についての質問をされるたびに、現実を突きつけられ打ちのめされるユリヤ。本作では、このような場面が何度か登場します。

男女平等の先進国ノルウェー

ユリヤのキャリアに対する期待感、そして自己肯定感の低さはノルウェーの時代背景が絡んでいるように思います。

ノルウェーは男女平等の先進国であり、世界でもトップ3に入っています。
とはいえ、非正規で働く女性も多いのも事実。

そんな中、国民の意識として、女性も男性同様どんどん働くべきという意識は強いようです。

女性たちは何者かにならなければともがき、子どもを持てば仕事と子育てを両立させなければと焦っているのです。

根拠のない自信、何者かになれる期待・・

家族やしがらみに縛られずに自由に生きたいという願望や才能ある他人への嫉妬、いつか何者かになれる期待・・・。

これらの感情は誰にでもある経験であり、10代であればこれから経験するであろう感情です。

人生はうまくいかないこともあります。むしろ、思い通りにいかないことの方がほとんどです。

一番大切なのは、その失敗から何を学ぶかということ。

自己肯定感の低い自分を「最悪」と感じることは誰にでもあることです。他人との関わりの中で成長し、大切に思ってくれる誰かに「最高だ」と思われる、それこそが本当の幸せなんだと気づかせてくれる作品ですね。

総評

私達は、選択肢の多い時代に暮らしています。

SNSを使えば世界中の人と繋がることができ、莫大な情報をも手に入れることができます。しかし、情報が多いゆえに結局何を選べばいいのかわからない。そんな状況に陥っています。

自由だけど複雑である。矛盾するような表現ですが、私達は難しい時代に生きていると言えるでしょう。

本作は、この難しい時代に生きるひとりの女性にスポットを当てています。
何者にもなれる時代だからこそ、仕事や結婚、妊娠の間に揺れる女性・・。

この映画が最後、優しい印象を与えるのは監督のこのようなメッセージがあるからではないでしょうか。

「現代の女性は結婚する必要も、ある程度の年齢で子どもを持つ必要もない」

直接的には述べてはいませんが、作品全体を通して感じ得ることです。

仕事や人生に悩む全ての女性にみて欲しい作品です。

以上。

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