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わたしの大恋愛 大ショック編

塾講師と生徒から、家庭教師と生徒にレベルアップしたわたし達。これはもう、わたしにとっては奇跡の大躍進だった。なんたって、塾の教室とは違って、部屋にふたりきりなのだ。時間も気にしなくていい。授業が終わったらお菓子を食べながらおしゃべりして、もはや気分はデートだった。楽しくて楽しくて仕方なかった。

そんな、ふわふわのピンクオーラ全開のわたしに、ある日悲劇が訪れる。

その日は土砂降りの雨だった。授業の約束の日だったか、そうではないけれど質問があったかで、彼の携帯に電話をかけた。ほどなくして彼が出て、目的の話を終えて、電話を切る前にわたしは聞いてしまったのだ。

「先生、いまどこにいるの?」と。

なぜ、わざわざそんなことを聞いたのか覚えていない。子どもなりの、女のカンというやつだろうか。返ってきた答えは、

「彼女の家」。

目の前真っ暗、頭の中真っ白とは、ああいうことを言うのだろう。土砂降りの雨音が、彼の声をかき消してくれたらよかったのに。

そもそも、わたしは彼に彼女がいるという可能性をまったく考えていなかった。恋に夢中で、そんなことは頭の片隅にもなかったのだ。しかしよくよく考えてみれば、彼は一浪して大学に入ったばかりの1年生だ。人より一年長い受験生活から脱出して、バイトも服装を髪型も自由になって、ものすごい解放感だろう。そこに、「彼女」という存在がない方が不自然というものだ。

その後何を話したか、どうやって電話を切ったのか、まったく覚えていない。たぶん、何も考えられなかったと思う。聞きたくない事実を聞いてしまった。しかも、きっかけを作ったのは自分だ。

なんであんなことを聞いたのか、わたしはわたしを責めた。ものすごく後悔した。時間を巻き戻したいと、切に願った。

でも、聞いてしまったものは聞いてしまったのである。時間を戻せたとしても、彼に彼女がいるという事実は変えられない。でも、だからといってそんなことでめげるような恋心ではなかった。


「聞かなかったことにしよう」


わたしは、この日のことを忘れることにした。何も聞いていない、電話なんてしていない。そう思わないと、心が耐えられなかった。悲しみ、嫉妬、自分への怒り、すべてのドロドロした感情に蓋をして、なかったことにした。

次の日からも、わたしは以前とまったく変わらず恋愛街道を爆走し続けた。

#恋バナ #姉妹ママ #子育て #長男の嫁


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