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12. 造作キッチン|鎌倉の家づくりのはなし

「私がこの世でいちばん好きな場所は台所だと思う」

大好きなよしもとばななさんの小説『キッチン』の冒頭の一文です。

私も子どもの頃、というか大人になってからもしばらく住んでいた実家では、家の中でいちばん好きな場所はキッチンでした。

料理好きの母がこだわって注文をつけたキッチンで、壁一面の収納棚には食器やキッチン道具、調味料やスパイスが何でもたくさんあって(実家ってすごい!)、ワクワクと遊び心がくすぐられる場所でした。

オーブンから料理が焼けるおいしい匂い、お菓子づくりを手伝った子ども時代、家族といっしょにごはんをつくったり食べた記憶、人の出入りが多い家だったので、8人くらいの食卓になることもしばしば。

平日は母が仕事で帰りが遅い日も珍しくなかったので、父と姉と3人の、あるいはベビーシッターのお姉さんとの夜ごはんが基本だったのですが、それでも、料理がごちそうかどうかではなく、「お家でみんなで食べるごはんはおいしい」という感覚が肌に染みついているのは、そんな家族との時間を過ごしたからだと思います。

子どもの頃の台所と食卓の記憶が、もっと味気ないものだったら、きっと今ほどつくることにも、食べることにも関心がなかったかもしれません。

そんなわけで、新しい家に引っ越すなら、広いキッチンがあることは、わたしの中ではけっこう優先度の高いポイントでした!

幸い、キッチンは唯一わたしに決定権をゆだねられた場所だったので(笑)、こだわりたいところを箇条書きにしたメモと、好みの雰囲気のキッチンをPinterestやInstagramで写真を集めて、工務店の担当者の方にお伝えしてイメージ共有をしながら、すすめていきました。

わたしの理想は、

・大皿料理やパンが焼けるようなガスオーブンがあること
・豪快に料理やお菓子づくりができるくらいの広さ(友だちとつくるのも楽しそう!)
・お皿を買っても「もう置き場がないよ?」と文句言われないくらいのゆとりのある食器棚、など

食卓に立つ時間が、ふわっと心が躍る、自由な気持ちになれる空間にしたいというのが、新しいキッチンのコンセプトです。

そこに、見た目重視の夫からのリクエストで、「アイランドキッチンがいい(かっこいいから)」「食洗機はマスト」が加わり、全体的にはリビングにもなじむナチュラルな雰囲気で、使い勝手にもこだわって細かな仕様をつめていきました。

ここでも、はじめにいろんなキッチンの写真を眺めて「こんなキッチン素敵〜!」とワクワクするのは楽しいのですが、実際に自分がそこに立って料理をするシーンをリアルに想像すると、「いや、これは使わないな」とか「ここにこれがあった方がいいよな」とか色々でてくるもの。

結局毎日使うのは自分なので、見た目のおしゃれだけにまどわされずに(笑)、現実的な視点で決めていった方が、あとあとの誤差が少なくすむような気がしました。

ゴミ箱をどこに置くかとか、収納を引き出し式にするかどうか、キッチンや収納棚の高さ(わたしが背が低いので高すぎると使いづらい…)、食器棚をオープンにして見せるタイプにするかどうか(主にコストダウンのため)、などなど、ライフスタイルと好みと予算で、あれこれと決めていき、最終的には、しあがりがとても楽しみなキッチンの仕様に決まりました。

新しいキッチンになったら、いっぱいオーブン料理するぞー!


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