見出し画像

今日の本|「アドルフに告ぐ」手塚治虫

昔、暇なときに繰り返し読んでいたマンガ、「アドルフに告ぐ」作:手塚治虫 を約20年ぶりに読みました。
本屋パトロール中、マンガコーナーでこれを見かけ、懐かしくて、衝動的にどうしても読みたくなって買った。

手塚治虫といえば、学校の図書館にあった唯一のマンガ、というイメージ。
「マンガだ!!」と手にとっても、小学生の私には理解できない歴史が絡んだ作品が多かった…。
当時は物語背景や史実はスルーして、人間模様や恋愛描写など、わかりやすいストーリーをなぞるだけでしたが、妙に生々しく重い作品ばかりだ…と感じていました。

✳︎

第二次世界大戦を背景に、ナチスの独裁者アドルフ・ヒトラー、日本で育ったドイツ人・日本人ハーフのアドルフ少年、同じく日本で育ったユダヤ人のアドルフ少年、同じ「アドルフ」という名前を持った人物たちの物語。

20年ぶりに読んでびっくりしたのが、この作品でイスラエル・パレスチナ問題がすんなりと理解できてしまったこと。

この複雑な民族問題は、物語の終盤、ハーフのアドルフ君とユダヤ人のアドルフ君が戦う場面で持ち上がります。
ここまで読み進めると、物語とともに歴史的背景にも理解が深まります。

今まで自分には歯が立たないと思っていた疑問や問題が、急に浮かび上がって、色がついて、立体的になってくるかのようです。
これが物語の力だなぁ、と知的興奮を感じました。
20年前の私にはわからなかった。

こんなふうに、自分の中に、知りたくてもまだわからない扉が無数に、本当に無数にあって、作品に触れることで、偶然にその扉が開く瞬間があると思います。
得難い瞬間。
「偶然」としか思えないけど、無意識でも、自分なりに扉の高さまで知識を積み重ねてきた結果だよなーと思ったりもして、ちょっと悦に入る時間でもあります。
そして、それを世に残してくれたクリエイターの皆様!

✳︎

第二次世界大戦や民族問題を扱った作品は数多くありますが、この「アドルフに告ぐ」も、その周辺問題の理解を深める手助けになると思います。
ご一読をおすすめします。




この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?