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問題は、「色」ではない|「非色」有吉佐和子

いわゆる「戦争花嫁」の物語。
日本に駐留したアメリカ黒人兵士と結婚、日本に残された妻と子。
娘が「黒ン坊」と驚かれ、蔑まれる日本を離れ、人種のるつぼ、ニューヨークで生活していくことに。


「非色」。色に非ず。すごいタイトル。
黒い肌は色としてみなされない、無視されるということか?と思って読みましたが、読み終わった後は、「(問題は)『色』ではない」という意味ではないかと考え直しました。


色ではなくて、社会的階級や職業、出身地。
使う側と使われる側。

もう20年も前に、母親がなにげなくいった一言がよみがえる。
アメリカに留学し、そのまま結婚して移住した娘を持つ友人に、「でも結婚した人、黒んぼじゃなかったんでしょ?よかったじゃない」。


私の地元は、黒人はおろか、日本人以外を見かけることがまずない小さな田舎。観光資源もないため人の出入りが少なく、国際的感覚を持つことはなかなか難しい地域。
そんな場所で生まれ育った母なのに、「黒人」をそう判断する材料はなんだったんだろう。そして、「黒んぼ」という蔑みのこもった言葉に感じた違和感。


人が人を判断するときの「軸」や、その濃淡は、時代や文化によってかなり異なる。そして、時に自分が、「判断」それ自体に強い反発心を抱くことも思い出しました。

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