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「 カルティエ、時の結晶」展

「 カルティエ、時の結晶」展
国立新美術館


まったく行く予定ではなかったのですが、この展覧会の会場構成を「旧素材こそ最も新しい」をコンセプトに活動されている新素材研究所の杉本博司さんと榊田倫之がされてるとのことで、普通の展示とは一味違うらしく、いったいどういうアプローチ方法でカルティエのジュエリーや時計が展示されているのか見てみたかったので行ってきました。


行ってまずびっくり!音声ガイダンスが無料貸し出し&スマホタイプで画面に作品詳細が出る!この前のCHANEL展の時みたいな超絶ハイスペックなクオリティではないですが、それでも国立の美術館でこのサービスをやっていただけたのはとても素敵!♡


世の中いろんな意見がありますが、作品を「目で見て楽しむ」だけではなく「背景を知る、学ぶ」ことでわたしはアートに対しての価値観だけでなく、日常においての人や物の見方が変わったし視野が広がったので、とってもうれしい傾向だなぁとおもいました。


まず、入り口入るとすぐにでーんと1908年製のめちゃくちゃ大きい時計が置かれているのですが、全然カルティエと関係ない杉本さんの私物なのですが、スイスの時計修理工房に依頼してギアを1つ加えて、時計の針を逆行させるようにしたらしい。なんでかっていうと、「今からジュエリーに刻まれた時をさかのぼるわよ」という意味。
か、か、かっこいいかよ…!


そして肝心の展示会場についてですが、これもびっくり!!

いつもの国立新美術館の四角の部屋から四角の部屋へ移動するのとはちがい、円の空間を中心にぐるっと回っていく感じなのですが空間の仕切りが日本の美のまさにそれで、最強に最高に完璧にうっとりでした…!♡

昨年ぐらいに、日本画や浮世絵に効果的に用いられる「仕切り」の作用について興味がわいて、雲や霞、屏風や襖や簾、しめ縄や鳥居などの結界的なものまで色々勉強したのですが、完璧に締め切ったりすることなくやんわりと空間を仕切れる日本の美意識にメロメロな「仕切り」大好き遠藤にとって、杉本博司さんの徹底的なこだわりと日本の職人さんたちの伝統的な技術がかっこよすぎて、わたしの心の中のIKKOさんが「本物~~!」ってずっと興奮してました。


最初の空間で使われていた「羅(ら)」という織物、初めて知ったのですが、光を美しく透過させながら、目の荒々しさが粋で素敵だったなぁ。


この展示ではカルティエの時代を越えても変わることのない普遍的な美しさを表現するために「時」にフォーカスをあてた内容になっているのですが、最初の大きな時計をはじめ、時の経過を表すための展示方法がまじでいちいち全部かっこよすぎました…。


例えばジュエリーを展示するためのトルソーなのですが、神代杉、神代欅、神代桂、屋久杉を使ってて、すべて仏師による1点1点手彫りの特注品だそう。「木の年輪」と「時」を掛け合わせるなんて…わたしの心の中のIKKOさんが「本(以下略)


ほかにも彗星の軌道を模したショーケースとか、なんかもうヤバかったな~(すごすぎて言語化放棄)


というわけで、カルティエの1点物のジュエリーや時計は言わずもがなどれも本当に素晴らしかったです。

インドのマハラジャなど世界各国の文化からインスピレーションされた多彩な色使いに圧倒されたし、

プラチナをジュエリーで初めて使用して、長年輝きを保てるようになったことや象徴的な豹(パンテール)のモチーフについて初めて知ることも多く、

またマジックのようにぜんまいの見えないミステリークロックや第一次世界大戦の時に生まれた戦車をイメージした腕時計タンクについてもおもしろい発見がたくさんあり、

ジュエリーも時計にもアールヌーボーの時代に先駆けてアールデコのような工業的で洗練された直線や左右対称をデザインに落としこんできたのが垣間見えて感激しました。

カルティエが産み出してきたものの歴史を杉本さんたちが本気で作り上げられた空間のなかで拝見できて、これ以上にないほど贅沢な展示でした。

本気ってかっこいい。

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