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難民とともに学ぶ

7月の初めにドイツに来てから早2ヶ月。エアコンも殆どない欧州で、40度の熱波にうなされていた暑い夏はあっという間に過ぎ去り、すっかり秋の冷たい風が吹き荒れるようになった。

ドイツ政府から支援を受けられる、移民用のドイツ語コースに通い始めて、5週間が経った。僅かではあるものの、少しずつ街中でドイツ語を使えるようになっており、自分の成長が学ぶモチベーションになる。(明らかに見た目の違う外国人が頑張って伝えようとしているので、相当めちゃくちゃに話しているものの、周囲が一生懸命理解しようとしてくれる)

現在、平日は毎日朝早くから4時間、全てドイツ語で展開される授業を受けている。ドイツ語で書かれたテキストやプリントを使い、教員もクラスメイトもドイツ語で話す。初めの1週間、周囲で何が起きているのかわからず、特に初日は何を言われてもわからず、明らかに「劣等生」になっていた。しかし、2−3週間も経つと様々な状況が理解できるようになり、相変わらずドイツ語会話レベルはクラスでも下から数えて何番目かのレベルなのだけれど、「お勉強」は苦手でないので、毎週の単語テストではクラスで上位になるようになった。(他のクラスメイトはほとんど数年ドイツにいるものの、きちんと学ぶ機会がなかったという人が大半)

この移民用のドイツ語コースは移民の社会統合政策の一環で、7ヶ月ほどかけて計600時間ドイツ語、さらに100時間ほどドイツの社会について学び、B1という6段階で下から3つまでの言語レベルの習得を目指す。(そのレベルでは掃除の人レベルのドイツ語力で、実際にドイツ語で仕事をするならば、もう1段階くらい上のドイツ語力が必要とされる)殆どの受講者が半額もしくは全額分ドイツ政府から資金支援を受けてドイツ語を学ぶことが出来るという、外国人にとっては非常にありがたいプログラムである。

そして、対象者は「移民」というだけで括られているので、20人強クラスメイトの属性は非常に多様だ。出身国は、ロシア、シリア、イラン、インド、セルビア、ボスニア、カザフスタン、ポーランド、グルジア、エストニア、ナイジェリア、南アフリカ、ブラジル、ベネズエラ、インド、ベトナム、日本…。

今までも欧米の大学院で学んで来たので、クラスメイトの多様性にはそれほど驚かないのだけれど、今圧倒されているのは、その他の属性の多様さである。私のように知的労働者の配偶者としてドイツに入った人も数人はおり、中東やアフリカからの難民申請者、東欧からの移民、シングルマザーになって移住して来た女性など、属性も職業も様々である。

教育レベルも様々で、私以外にも修士号を持っているクラスメイトもいるかと思えば、戦争で学校に数年しか通えなかったというクラスメイトもいる。それまでの教育レベルが多様すぎるので、言語を学ぶという基礎的な「お勉強」に対する姿勢や理解度が非常に大きく異なって現れる。だから私よりずっとまともなドイツ語を話すクラスメイトは、非常に基礎的な文法を理解できなかったりする。(難民として中東辺りから欧州に逃げられている人は比較的高所得者であり、高学歴な人が少なくないと聞くが、実際はそれも多様そうである)

私は幸い日本という、安定し、かつ経済も成熟した国に生まれ、幸運が重なって高い教育を受けることができ、やりたいことをやってこられた。ミャンマーで開発援助の仕事をしていた時は、ミャンマーで同様に支援を行うドイツ政府の人たちとも細かくやり取りをしていたし、どちらかというと「支援する」側に回って来た。

そんな私が、今は初めて「支援される」側に回っている。(本来は知的労働者の配偶者というステータスから、この講座の対象とならず、本来全額自分で支払うことができるのだろうけれど、受けたいということを申し出たところ、制度上問題なく支援を受けられることとなった)だからこそなのか、受講しているこの授業の中で、毎日驚きがあり、考えさせられることがある。

外国人受け入れについて、技能実習生の搾取という非常に大きな問題を抱えたまま、外国人の社会統合の施策をほとんど持たずに外国から労働者を次々と受け入れる日本。Brexitで外国人に対して非常に排他的になるイギリス。極右政党が徐々に力を伸ばしつつあるドイツ

ドイツで外国人の社会統合のための施策の恩恵を受けながら、日々の気づき、この3か国について思うことをつらつらと書いていきたいと思う。

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