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映画感想#42 「神々のたそがれ」(2013年)

原題 Трудно быть богом
英題 Hard to Be a God
監督 アレクセイ・ゲルマン
脚本 アレクセイ・ゲルマン、スベトラーナ・カルマリータ
出演 レオニド・ヤルモルニク、アレクサンドル・チュトゥコ、ユーリー・アレクセービチ・ツリーロ、エフゲニー・ゲルチャコフ 他
2013年 ロシア 177分



泥の中で過ごす3時間、耐えられるか?

まさに今まで見たことのない映画でした。これモノクロだったんだ…そういう色彩がどうこうのレベルではない。超越しちゃってます。

地球からやってきたドン・ルマータという調査員が、中世のごとき惑星の都市・アルカナルで、神として崇められているという設定なのですが、特に起承転結もなく、その惑星の散々な様子が3時間延々と続くわけです。

あえてそうしているのだと思いますが、カメラワークもダラダラしているというか、「たまたま気が向いたのでカメラを向けてみました」といった感じで、何か・誰かを特定して撮っている風でもない。そんなカメラに向かって、惑星に住まう人々が時々こちらを見てくる。それが何だかギョッとするというか。「なんだお前」と言われているかのような気がするのです。

結局何が起きてどうなったのか、よく分からなかったけど、とにかくすごい映像です。映倫通していたらレーティングR15はつくだろうな…。暴力、殺人、グロ要素も盛り沢山。泥に塗れた世界はまず不衛生で汚いし、これが本当のカオスなんだと思いました。3時間これはキツイ。正直耐えられずに中盤ちょっと寝ました。

Hard to Be a Godというタイトルが意味深かつ皮肉な感じ。「神」って何なんだろうという根本的な問いが埋もれている。もしこの惑星でドン・ルマータが神であるならば、もはや存在しないも同然なのだから。
答えはあるのかないのかわからない。でも神が絶対的・超越的な存在という見方に対して、疑問を投げかけるような作品でした。

これがアレクセイ・ゲルマンの遺作。とんでもない野郎ですね。
秩序のある環境に感謝したいです。

☆鑑賞日 2015年3月21日


投稿に際しての余談〜原題の意図を汲む〜

原題・英題ともに同じ意味(Hard to be a  God)で、一応ロシア語の原題を直訳すると、英語と同じ意味で「神になるのは難しい」となるようです。

Google翻訳様

この「難しい」というのは、映画を見る限りでは「困難だ」というよりも、「〜辛い」とか「大変だ」という方が近い気がします。だってドン・ルマータ氏大変だもの、絶対。

それにしても、邦題はこの原題を生かせなかったものでしょうか。「神々のたそがれ」か。神って複数いたっけ。たそがれってどういう意味だっけ。

Google翻訳様②

となると、「神の盛りが過ぎて権力が衰退している様子」か。a Godを「神々」にしたのは何故だろう。語呂合わせ?
…細かいことはさておき、神の影響力が減退している世の中を風刺的に描いているということが窺えます。
しかし製作期間15年の大作がこれか…アレクセイ・ゲルマンってたぶん感覚がぶっ飛んでるんだろう。(それが天才ってこと?)


ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

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