見出し画像

カーボンニュートラルを目指すと、使うエネルギーは増えていく

ざっくりまとめ

  • 電化が進むと変換ロスが増えるのでエネルギーがたくさん必要

  • 再エネは薄いので、元のエネルギーはたくさん必要

  • 再エネは薄いので、設備がたくさん必要で、設備を作ったり運ぶにはエネルギーがたくさん必要

  • 以上のためカーボンニュートラルではエネルギーがたくさん必要

正確には、必要なエネルギー投入量が増える

なぜでしょうか?

化石燃料を使っている産業に電気を使わせる

カーボンニュートラル達成のために重要なのは、CO₂に代表される温室効果ガスを排出しないこと。
主な排出源は化石燃料なので、社会の様々な場所で化石燃料を使わないように変えていく必要があります。
とはいえ、化石燃料を使っているところでは、なにかしらのエネルギーが必要です。
そこで、化石燃料を使うのをやめたところでは、電気を使うように変えていきます。これを電化といいます。

こうして、今まで電気を使っていなかったところでも電気が使われるようになり、電気を大量に使う時代になります。

これからは電気を大量に使うことになる

電気の変換ロス

化石燃料を使っている産業は、基本的に熱を必要としています。
そこに電気を送っても、そのままでは役に立ちません。(電気は熱ではないため)
なので、電気を熱に変換する必要があります。
この変換というのが厄介で、基本的に、エネルギーを別の形に変えるときには変換ロスがあります。変換すると減ります。

なんでも電気を使うようになると、変換の機会が増えます。
再エネ→電気→熱とか、再エネ→電気→化学反応→電気→運動とか。
そしたらそれだけ変換ロスも増えますので、無駄が多いことになります。
モッタイナイ!

電気は変換する必要があるので、減る

再エネで作る電気が大量にあるのが前提

以上のように無駄があるにもかかわらず、電気を大量に使うのがカーボンニュートラルにつながるというのは、温室効果ガスを排出しない電気が大量に供給されることが前提です。
太陽光、風力、原子力といった、燃焼を伴わないエネルギーを使って電気を作る必要があります。
太陽光や風力はほぼ無限に得られますし、原子力は少量の燃料から熱を大量に取り出すことができます。(今回は再エネの話なので、原子力は置いておきます)

たくさん必要でも、変換で減っても、グリーンにたくさん作れるならヨシ!

再エネは”薄い”

ここで問題になるのが再エネのエネルギーの薄さです。

再エネは、長い時間をかけて回収することができるのであれば、ほぼ無限に得られるエネルギーです。
にもかかわらず、化石燃料が使われてきた理由は、すこしの量を燃やすだけで、たくさんの熱を得ることができたからです。
たとえば、ガソリンを燃やしているところに人間は近づけません。対して、たとえば太陽光は人間が直接浴びても平気です(これは一般的に日光浴と呼ばれ、適度であれば健康によいとされます)。
つまり、化石燃料はエネルギーは濃くて、再エネは薄いのです。(出力密度が高い/低い)といいます)

再エネは薄いので、電気をたくさん作るのは大変

薄いなら薄いなりのやり方をする

薄さを補うためには、回収の効率を上げるか、回収量を増やす必要があります。
太陽光パネルで言えば、より効率のよいパネルを開発するか、パネルの数自体を増やします。

効率を上げるのは、今の技術ではできないことをできるようにすることなので、開発の時間や開発費用がかかります。
いつでも確実にできるのは後者。回収量を増やす、つまり設備の数を増やすことです。

たくさん作るために、設備がたくさん必要

設備を増やすにもエネルギーがいる

さて、設備を増やすとなると、エネルギーではなく、実際のモノが必要です。
設備を作るために使われる材料。プラスチック、鉄、レアメタルなどを手に入れるためには、採掘、運搬、加工などでエネルギーが必要です。
そしてそれを組み立て、据えつけるにもエネルギーが必要です。

エネルギーが薄いということは設備がたくさん必要ということ。
設備がたくさん必要ということは、その設備のために使われるエネルギーが増えるということ。
そして、気候変動が取り返しのつかない段階に進んでしまう前に、急激に再エネ発電を増やさねばならないということは、しばらくのあいだは急激にエネルギーを使わなければならないということです。

なので、当面はエネルギーをたくさん投入する必要があります。
再エネの普及が十分に進み、かつリサイクルの体制も整った将来には、投入されるエネルギーはほとんどが再エネ(太陽光や風力)になるはずですので、エネルギー消費量が多くても問題ないはずです。
(なお、SF的になりますが、太陽光や風を大量に電気に変換するときに、それによる地球環境に影響はないのかな?という疑問があります)

設備をたくさん作るために、エネルギーがたくさん必要

まとめ

というわけで、カーボンニュートラルを目指す、またはカーボンニュートラルを達成することで、エネルギーはたくさん必要になります。
だけど、そのもととなるのが再生可能エネルギーなので大丈夫!となります。
心配なのは、再生可能エネルギーではない部分(レアメタルなど)が足りるかということと、設備を増やすペースが間に合うかな?という部分。
そこらへんは再エネ頑張りマンが頑張っていますので、頑張ってほしいなと思います。
我々は省エネなどで、増やさなければならない再エネ設備の量を減らせるように頑張っていきましょう。

がんばろう!

余談:再エネを増やすためのレアメタルは足りるだろうか

プラスチックや金属など、設備によっても必要なものは違いますが、最近足りないだろうと言われているのはレアメタルです。
下の図は、電源別のレアメタル必要量を示したもの。洋上風力が最も多く、陸上風力、太陽光、原子力、石炭、天然ガスの順番で少なくなります。

再エネはレアメタル消費量が多い

レアメタルは化石燃料のように燃やされるわけではないので、リサイクル技術が発達すれば持続可能かもしれません。
しかし、現在のように急速に再エネ発電を増やしたい!という場面では、当面の生産能力が問題になります。また、長期的には採掘可能な量も問題になるかもしれません。

参考:元tweet


ご覧いただきありがとうございます! 知りたい内容などあればご連絡くださいね。