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ポートフォリオ作りに1年かけて、結局いらなくなった人の話


先日のツイートでは多くの人にポートフォリオを見てもらえて、本当に嬉しかったです!そしてせっかくなので、ポートフォリオを作った1年間と、使わなくなった経緯についてまとめてみたいと思います。

そしておまけとして、過去の未熟なポートフォリオも段階ごとに載せてみたので、よかったら見てみてください🙌


1. ポートフォリオの「作り方を知る」編

2018年4月、私は途方に暮れていました。
作品も大してないまま、なりたい職業のイメージもついていないまま、深津さんの授業というだけで、うっかりポートフォリオを題材にしたリサーチの授業を取ってしまったのです。

なんなら、この時から院進学を考えていました。人の認知とデザインの関係について独学で勉強していて、その研究を深めたいという気持ちがあったのです。

そのため就職のポートフォリオ自体に実感が湧きませんでした。


しかし、いざ受けてみると深津さんの授業は私の予想と違い、ただのポートフォリオの講座ではないことに気づきました。

作品がなくても、架空の作品を自分の成果として構成して良かったのです。

この授業で大切なことは、作品集を作ることでも、持っている作品をどう並べるかでもなくて、「ポートフォリオを作ること」でした。

就活におけるポートフォリオは、「自分はこういう人間で、こんなことができます。欲しいでしょう?」とアピールするためのもので、それは今の手札を並べ替えることではありません。

企業が欲しいであろう人物像、スキル、資質を見極め、適した作品を適した形で見せる、相手の視点から逆算して考える大切さを教えていただきました。

そして私も逆算して考えた結果、やはり私の手札には相応しいものがないとなりました。
そのため私は、一番はじめのページ、ポートフォリオの顔とも言えるところに、でっち上げの説明に適当な画像をぶち込んだだけの、企画段階の作品を入れ提出しました(下に載せています笑)


授業の内容は、インタビュー、リサーチの手法の話や、実際に経験されたお話など様々でしたが、後半の大半を占めたのはポートフォリオのラフを改善する作業でした。

リサーチしてアピールする要件をまとめたら、スケッチでささっと描いて人に見せる。その粒度で改善を繰り返して、良いものができたら粒度を細かくしまた見せる。
そんな作業をイラレの冊子データになるまで繰り返します。

最速で60%の出来を目指して作り、それで判断しダメならやめ、改善して行けそうならやってみるこの作業は、スピード感と確信、そして正確さを持って進められて、とても楽しかったです。

楽しすぎて、授業が終わってもこの後7ヶ月にかけ、改善をライフワークのように続けることになります。


また、私自身の進路問題も少しまとります。ポートフォリオは目的がないと作れないことを知ったことで、真剣にやりたいことを考えるきっかけになりました。

授業を通して、表層に囚われない深津さんのようなデザイナーになりたいと思うようになり、IT業界のUI・UXデザイナー職を目指すことにしました。


01 ポートフォリオ作りでやったこと・相手を考えて逆算して構成を考える。・やりたいことが決まらなくても、とりあえず作る・作ってみてラフ段階で見せまくる・どんなポーフォリオが刺さるか分析する・テストして改善を繰り返す

【この時のポートフォリオ】



2. 脱・器用貧乏のため「強みを探す」編

就活と並行して、広野さんの個人事務所でアシスタントを始めることになります。

今までで一番レベルの高い現場に、今までで一番の壁を感じました。
任せてくれた期待にも応えたくて、必死に食らいついてロゴ案200個とか作る中で、自分は社会の中で何を提供できるのだろうと考えました。

今までの器用貧乏じゃ、就職では採ってくれないと思いました。
リサーチをして、欲しい人材になることはもちろん、
自分の良さが一番発揮できる、何か突出したものがあるポートフォリオを作ろう。と決めました。

私の良さといえば、
がむしゃらに考え続け行動すること、それから情報を伝えるビジュアルデザイン
あたりは得意でした。

それらを組み合わせて、
今まで考え続け試し続けたプロセスと熱量が伝わり、加えてそれらの情報が脳に負担なく入ってくるポートフォリオを作ることにしました。

情報が入ってくるか、というのは自分の基準では判断できないことなので、実際に読んでもらい、
人が私のポートフォリオを読んで何を得て、何を読み飛ばし、何を感じたか
テストを観察しては改善し、またテストする日々が続きました。


02 ポートフォリオ作りでやったこと・特徴づけるため、自己分析を行う・プロセスとその読みやすさで勝負することにする・情報を再構成する・どんな印象を与えているか、何の情報が残っているかテスト

【この時のポートフォリオ】


3. 就活を始めて「相手目線を再確認」編

就活か進学か迷う日々は続いていたんですが、「学校のことは結構調べてたのに、企業のこと意外と知らなくない?」ということで本格的に就活を始めました。

数を受ける戦法ができるような器用さがないことはわかっていたので、IT系でUI・UXデザイン職のみに絞り、そこから絞り込んでいくように、就活を進めました。

ここで嬉しい誤算が起きます。
就活に後ろ向きだったはずなのに、めっちゃ社会人がかっこよく、憧れに感じました。

広野さんやかみそるさんを見てデザイナーさんがかっこいいことは知ってたはずなんですが、実際に入るかもしれない会社でデキるデザイナーの方の話を聞いていると想像が膨らみ、本当に就職したくなりました。

また、企業の方にポートフォリオ見ていただくことが増えました。

そして今までと違い選考の際は読むスピードが段違いということに気づきます。
冷静に考えてみると、私たちにとっては渾身の一冊でも企業から見ると100冊のうちの一冊なのです。

そこでパラパラ読んでもだいたいわかるように、そしてじっくりみても読み応えがあるように、2種類の粒度で成り立つよう調整しました。

同じように、企業の方に見ていただくと気づくことが多く、主に以下の3点を直していきました。


1つ目、長さを感じさせない工夫をしました。

構成の悠長さゆえ、最後まで読んで頂けないということが多々ありました。しかし構成内容を減らすことは既に限界までやっていたので、
・読んでいる時、全体のうちどこにいるか分かるようにする
・フォーマットを作り、ページごとに程よく崩して丁度よくリズムを保つ
・目次は地図のように、全体感がわかるように
この辺りを意識し、最終ページまで読み進めてもらえるように作成していきました。


2つめ、プロセスをもっと強化しました。

自分が見せたいプロセスと、人事の方が選考で見たいものは違うことに気づき、インタビューを繰り返して、何が見たいのかあくまでも相手目線で考え、内容を濃くしたり、いらない部分は省きました。


そして3つめ、構成を全体的に再構成しました。

元々UIデザインを最初に持ってきていたのですが、プロセスが強みなら実際に実現した、数値として結果が出た作品の方が良いのではと考え、サークルで制作した広告作品を一番前に持ってきています。
(そしてこの作品は、深津さんの授業で一番最初の作品に空想の企画を、その後実際に作っていたものでした。)


03 ポートフォリオ作りでやったこと・企業の方々に見て頂き、インタビューをして何の情報が求められるかまとめる・人に読んでもらい、どこを読み飛ばしたか、よく読んだか観察する・情報の再構成を行う・プロセスをさらに強める

【この時のポートフォリオ】

4.「就活やめる」編

就活には前向きだったし行きたい会社もすでにあったのですが、就職してから10年後の想像がつかず、いろんな人に壁打ちをしていただきました。

その対話の中で、今まで自分は決められたように見える箱の中で、行きやすい道を探していたのだと気がつきました。
その後日常生活で、「制約がないなら?」「本当はどうしたいか?」と考えるようになり、やはり私は進学して学問をしたいのだだと気がつきました。

大学出たら就職が正解とされているから、親に負担をかけないから、親戚に何も言われないから。そんな否定する思考が、本当にやりたかった知識の追求と研究への行動を妨げていた気がします。

器用貧乏のくせに変なところが不器用なので、どうせバレるし、就活では嘘だけはつかないようにしていました。
そして最終面接って受けたら絶対入ります!って宣言な気がしていたので、進学するのかしないのか、最終面接の前に決断すると決めていました

両親に改めて研究計画のプレゼンをして了承をもらった後、選考に進んでいた全ての会社に、辞退の連絡をさせていただき、私の就活は一旦の終わりを迎えました。

そしてポートフォリオも同時期に、就活においては完成と言えるものになりました。先日のツイートでたくさんの人にも見ていただけて、良いポートフォリオになったと思います。

【最後のポートフォリオ】

しかし、まだまだポートフォリオはブラッシュアップし続けます。

なぜなら、アプローチする相手が変わるからです。

次見せるのは院試なのか、お仕事をもらうためなのかはまだわかりませんが、エゴをできるだけ廃し、見る相手の目線から逆算して作ったポートフォリオなので、相手が変われば表紙すらコロコロ変わっていきます。

70ページのラブレター作りは、お相手が変わる限りまだまだ続きそうです。


5.あとがき

美術大学に入ると、正直将来、潰しが効きにくいです。(もちろん努力次第ではあることは承知の上ですが、内側から見てそう思います)でもそれは高校生の頃に調べて覚悟していたことです。

そのため、必死に自分がやっていける所を探そうと、必要な人間になろうと必死でした。フリーのデザイナーも、DTPオペレーターも、演劇の舞台監督も、メディアサイトのデザイナーも、カメラマンにもADのアルバイトもやってみました。

結局何者になっても道を見つけることはできず、行く先々で出会った人たちに助けられて、やっと自分の進路を決めることができました。ストレートで社会人になっていたら、できないながらも頑張って、2年後はちゃんとしたデザイナーになっていたかもしれません。

ただせっかく人生をかけて研究したいことに気がついたので、自分のために研究をしてみようと思います。

たくさん向き合ってくださった皆さんがいなければ、大事に大事に1年育てたこのポートフォリオを「使わない」選択はできませんでした。助けてくれた人に敬意と感謝を込めて、あと残り3年の学生生活頑張ります!

長い文章、ここまで読んでいただきありがとうございました!

そして私の分身であるポートフォリオたちも多くの人に見ていただけて本当に嬉しいです。

今後ともどうぞ、よろしくお願いします!

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