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狂犬病予防法(昭和25年成立時)の理解のために(狂犬病予防法が出来るまで)

今まで書いてきたものをベースに、気軽に聴ける音声コンテンツを作ろうと考えていたのですが、すぐ隣で解体工事が始まり、音声コンテンツを作るのは難しくなったので、文書コンテンツの続きを書きます。


狂犬病のことを書いてきたので(今の)狂犬病予防法を理解する参考として、昭和25年に成立した時の狂犬病予防法を読んでいき、私がどう読んだかを書いていこうと考えています。
これから書くことは世の常識ではないので、疑ってかかったり、各自調べながら読み進めてください。
間違ったこと、誤解を招くような内容があった場合、コメントしていただければ嬉しいです。

今回は、今まで書いてきた中から狂犬病予防法が必要とされ、成立し、機能してきたことを簡単に書きます。


狂犬病予防法が出来るまで

東京が長期間の温床となる

明治より前にも狂犬病が日本にあったことは諸々の記録から想像できるます。
ただし日本全国大流行は起こらなかった(世界中を見てもそのようなことはほとんどないと思います)。限定された地域や街道を伝って感染者、感染動物と推測される記録があり、命を落とす人々の記録も多々ありました。しかしある程度の期間で治まっているようにみえる(昔のことなのでしっかりした調査などないので今の基準で「治まった」とは言えません)。

明治になり東京に多くの人が集まるようになった。
また、海外とはあまり関係をもってこなかった(私が子供の頃)鎖国と呼んでいた時代も終わり、人も動物も幅広い地域から多々やってくるようになる。この結果なのか狂犬病の感染が日本国内でも確認され続け、人が多く集まる東京では看過できない問題となった。
社会情勢としても、明治の始めは政治が安定していなかったし、その後も戦争や関東大震災などもあり、混乱した時代が続き、それがひと段落するのは、第二次世界大戦の敗戦となってからのこと。

明治以前は単発的に起こっていた狂犬病の流行が、この期間は東京が長期間の温床となりました。

狂犬病対策のはじまり

これに対し、各地域で対策がされたり、狂犬病を含めた身近な動物の伝染病対策のために獣疫予防法(その後の家畜伝染病予防法)が成立されたりしました。
狂犬病に限ったことでは、世界に先駆け狂犬病の予防注射を地域で行い、その効果を確認出来たのですが、それは限られた地域の試験的なこと。
これを国として行う必要性を感じていたようですが(先にも書きましたが)戦争をはじめとする混乱もあり、後回しになっていました。

敗戦と狂犬病予防法の成立、そして狂犬病の撲滅

皮肉なことに狂犬病予防法の成立は、敗戦により占領軍の指示・指導の下でのことでした。欧米では、食肉文化もあり身近な動物の感染症対策に対する感覚は日本より高かったからだと想像しています。そのような人たちに占領され、法律全体を作り直す過程で、家畜伝染病予防法から狂犬病予防法は独立した法律として成立しました。

狂犬病予防法成立(昭和25年=1950年)により、予防注射と感染が疑われる犬の管理を徹底することで、人間の最後の感染者は成立から6年後(昭和31年=1956年)であり、その翌年、猫に感染したことが確認されたことが最後の国内感染とされています。
明治からの経過を振り返ると、狂犬病予防法の成立とその施行の効果が証明されたと言っても過言ではないと考えています。

狂犬病は完全に撲滅されたのか

昭和32年の猫の感染を最後に国内では感染の記録はありません。それは人間が調査したデータの話であり、現実がどうであるかは分かりません。

台湾も日本と同様に清浄状態であったのに、ある時「狂犬病、ありました」となりました。日本もその可能性が否めないのではないかと思うことがあります。

台湾のことは、一般的には以下のページの様なニュースを見た記憶がある方もいらっしゃると思います。

台湾で52年ぶりに野生動物の狂犬病が発生しました
(八王子市のサイト内)

野生動物から狂犬病が見つかったのです。この動物は人間が暮らしている所にも姿を現す動物です。
上記ページだけ読むと「ひょこっと狂犬病の野生動物が見つかったのね、人間は関係ないのね」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、次のページをよく読んでいただければと願います。

台湾における狂犬病の発生について
(農林水産省 消費・安全局 動物衛生課 のページというか、PDFの資料)

先に紹介したページでは、平成25年(2013年)にイタチアナグマに狂犬病が発見されただけの情報になりますが、遡って調べたら 2010年の保存材料からも見つかっているし、民家に侵入した野生ジャコウネズミも感染していたようです。また犬一頭の報告も書かれています。

2012年から野生動物の疾病モニタリングを開始し、2013年に狂犬病もモニタリング項目に加えたところ、2012年に回収した死亡原因不明の3頭が「狂犬病のRT-PCR検査を実施したところ、陽性」となり、2010年7月から保存材料があったので検査をした結果、2010年のものの中にも陽性となったものがありました。

つまり、野生動物の間では既に根付いていた。
個人的に恐ろしいと思ったのは、ジャコウネズミにも感染し人間に感染の脅威をもたらしたこと。
ジャコウネズミは、トガリネズミ目トガリネズミ科ジャコウネズミ属。日本には、この属は長崎県、鹿児島県、沖縄県に分布している(亜種という説もあるらしい)し、トガリネズミ科まで広げると北海道に分布している。

トガリネズミ目は、一般的なネズミよりもモグラに近い動物ですが、農林水産省の資料を見る限り(全くの素人感覚ですが)ネズミに似ているし、モグラにも感染しているのではないかと考えたりします。そして日本のそれらの動物はどうなんだろう。

日本にも狂犬病が見つかったら

もし日本でも同様のことがあり、ある時「野生動物間では、狂犬病は普通にある病気でした」となったとしても、ある程度の犬には狂犬病の予防注射をしているので、明治の頃のように「人に飼われている犬でも疑ってかかれ」という状況にはならないと考えています。
しかし現状、接種をしていない犬もある程度いるとか、接種率が下がってきているとか。また、注射済票は小さいので見えづらいのも難点ですね。

犬全般が人間にとって脅威の対象とならないように、多くの犬に接種してあげてほしいものです。
そして、接種済みの犬かどうか分かり易くしていただければと個人的に考えています。

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