見出し画像

M&A株式1-4 株主が未成年者・成年被後見人等のとき

 株主が未成年者、成年被後見人の制限行為能力者にあたる場合は、その親権者、後見人等を確認します。
 株主の行為能力が疑われる場合(認知症等を患っている)には、成年後見の手続をします。ただし、成年後見の手続きは一度行うとやめられないため、実務では、相続人全員の同意があるなど関係者に文句がなくトラブルの要素がないなら場合、手続きを行っていないこともあります。


未成年者、成年被後見人等への対応方法

 株主が、制限行為能力者である場合は、保護者が誰であるかの確認が必要です。そして、株式譲渡においては、その保護者が手続を代理するか、保護者の同意を取得する必要があります。制限行為能力者の内容については、以下の厚生労働省のHPがわかりやすいと思います。

(1)未成年者
 株主が未成年者(18歳未満の者)の場合は、未成年者が親権者または未成年後見人から同意を取得した上で株式譲渡を行うかまたは親権者若しくは未成年後見人が未成年者に代わって株式譲渡の手続をします。親権者または未成年後見人が代理によって手続をすることが一般的です。
 親権者とは、婚姻中の両親がいれば父母両方です。離婚等により、親が1人である場合には、当該父または母が親権者です。親権者がいない場合には、未成年後見人が法定代理人となります。
 親権者を確認する書類は、未成年者の戸籍謄本・抄本(発行後3カ月以内のものが望ましい)です。未成年者であっても、婚姻している場合は、成年者として扱います(民753)。

(2)成年被後見人
 株主が成年被後見人(判断能力がほぼない方)の場合は、成年後見人が、成年被後見人に代わって手続をします。成年後見監督人がいれば、その同意が必要です。成年後見監督人がない場合に、特に株式譲渡価格が多額になる場合には、家庭裁判所に事前の相談が必要になります。
 成年被後見人が単独で行った行為は、一部を除き取り消すことができます。
 成年後見人および成年後見監督人の権限を確認する書類は、登記事項証明書(発行後3カ月以内のものが望ましい)です。登記事項証明書は、各都道府県の法務局の本局の窓口(戸籍課)または東京法務局後見登録課に対し郵送で取得が可能です。
 
(3)被保佐人
 株主が、被保佐人(判断能力が少しない方)の場合は、原則、被保佐人が保佐人の同意を得て手続します。保佐人に代理権がある事項であれば、保佐人が代理人として手続をします。保佐監督人がいれば、保佐監督人の同意が必要です。
 保佐人および保佐監督人およびその権限を確認する書類は、成年後見人と同様に登記事項証明書です。
 
(4)被補助人
 株主が被補助人(判断能力がときどきない方)の場合は、原則、被補助人が補助人の同意を得て手続をします。被補助人は、補助人の同意が必要とされた行為以外は、単独で有効な行為を行えます。補助人の同意が必要な行為および補助人に代理権がある行為は登記事項証明書で確認します。

(5)任意後見契約の本人
 株主が代理後見契約(自分の財産等の管理をしてもらう契約)を締結している場合には、登記事項証明書で、任意後見契約の効力が生じているかどうかを確認します。任意代理人として代理人として手続を行うときは登記事項証明書と任意後見契約公正証書を確認し、任意後見人が手続きを行うときは登記事項証明書と任意後見監督人の同意を確認します。

株主の判断能力が不十分な場合

 認知症、知的障害、精神障害等の理由で株主の判断能力が不十分な場合には、成年後見人の手続きを検討します。手続きについては、以下の裁判所のHPが参考になります。また、別の記事でも記載します。


 当該株主が、株式会社の役員である場合に成年被後見人または被保佐人に該当すると、その時点で役員の欠格事由に該当し「退任」となりますので、株式会社の役員の必要人数を満たさなくならないかどうか確認します。

 成年後見人等の手続きは、株式譲渡をきっかけで検討することになりますが、株式譲渡が実行された後も成年後見の状況が終了する訳ではありません。実際のところ、今まで、認知症の親の財産を自由に管理していたのに、成年後見人が就任した後は、自由に財産を管理できないため成年後見制度の利用を避けたいと考えることも多いように思います。この場合、相続人や関係者全員の同意が得られておりトラブルが生じる要素がないのであれば、成年後見制度を使用せずに、親族等に株式譲渡を行っていることもあるようです。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?