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後見人日記〜意思決定支援に挑む〜

今日は絶好の後見活動日和・・ではなかった。雨と風が激しい。土手の信号待ちで、突風で車が揺れる。嵐の中、午前中は予定していた意思決定支援のためのミーティングのために片道1時間の道のりを車でひた走る。今日帰ったら、久々にパンでも焼こうと思いつつ。
上の写真は、築100年になる私の実家の屋根部分。なんとか今日まで台風にも持ち堪えている。今日の話に若干関係があるため、なんとなく載せてみた。

意思決定支援とは?

基本的なことは、昨日の夜、あらためておさえた。
ガイドラインにはこうある。「意思決定支援とは、判断能力が不十分な人であっても、本人がその能力を最大限に活かして、日常生活や社会生活に関して自らの意思に基づいた生活を送ることができるようにするために、成年後見人等を含めた本人に関わるあらゆる人が行う、本人との関わり方の基本姿勢をいう」
重要なのは、本人には意思決定能力があると捉えて、支援すること。その能力が発揮できるよう、意思形成支援、意思表明支援、意思実現支援というプロセスを踏まえて実施する。


今回のケース


今回のケースは30歳代のFさん。精神障がいのため、3年前から保佐人として私が就いている。親亡き後の備えの一つであった。先日疾患を患っていた親が亡くなった。その相続と今後の生活のために意思決定支援のためのミーティングを関係者に呼びかた。他にも兄弟がおり、相続人として財産の相続をどのように分与して受けるか、具体的には不動産をどうするかの検討だ。
保佐人としての考えは、すでにある。が、本人がどうしたいのか確認したい。
幸いにも、3年の間に、支援者同士も本人とも、関係性は良好。前提条件は整っている。が、親亡き後の問題はどのケースも悩ましい。

課題は何か


意思決定支援は、その意思を形成する支援から始まる。つまり、情報を提供し選択から生じるデメリットなどを説明しなくてはならない。口頭のみでは心許なかったので書面も作ってみた。今回は私には珍しく準備万端。

さて、親亡き後問題で課題になることは、経済面と、どこで生活を送るか、であることが多い。Fさんも同様だ。家屋はあるが古く(築100年を途中で修繕、増築しながら保たせている)、田舎でもあるので金銭的な価値はないに等しい。そして、とても30歳代のFさんが高齢になるまで家屋が保持できるような気がしない。昨年も細かい修繕が必要だったし、いつしか屋根裏に猫が住み着いている。
また、大多数の方がそうであるように、収入は障害年金のみであり、経済的基盤は弱い。
つまり、自宅に住みたいが、家屋や土地の管理は金銭的には苦しいということになる。土地が広ければ広いほど、良いようで損することが多い。草刈りをしなければ近隣から苦情が出るが、草刈りだってタダではない。山林だって、「あんたの山の木が倒れて、わしの土地に落ちとる。撤去しろ」と言われることもある。私の家では実際にそのようなことがあって大変だった。田舎の土地は、高速道路でも通ればお金になるが、特に山林などはお荷物でしかないと思う。が、あくまで私の価値観なのかもしれない。本人の意向を確認する必要があるのだ。

ミーティングの実際


相続についてもやはり家族の関係性が大事。Fさんのケースでは、他の兄弟も良心的。土地家屋の所有権がどうなろうと売却意思がないため、住み続けたらよいとのこと。しかも家賃なし。管理費も必要ないなら願ったり叶ったり。

予定時間より早く、自宅に到着。全員が揃うまで、ウォーミングアップ。雑談しつつ、今日はどのようなことを話し合うか、あらかじめ伝えておく。
そうしているうちに、相談支援専門員等が自宅に到着。もちろん進行役は買って出る。
ミーティングは順調に推移。結論ありきにならないように話を進行。若干自閉傾向があるFさんのペースに合わせる。選択肢を示し、考えられるメリット・デメリットを説明。「住み続けられるなら、弟に不動産は譲る」と言葉少なげだが、明確に述べていた。所有するよりも、続けて住みたいとの思いが本人の意思なのだろう。
相続という言葉から連想するのは、お金や土地といった財物や、「争い」という言葉なのかもしれないが、今回あらためて思った。家族関係こそ財産だ。

まとめ

意思決定支援が取り立たされて久しい。成年後見の分野では徐々に浸透している。しかし、実際には私自身も「責任を全うしなければ」という責任感が高じて、本人の考えを2の次にしてしまう場面がないとは言えない。『己が他人の目にどう映るのか』がつい気になる。ソーシャルワークとは、側から見ると簡単な仕事に見えるだろうが、難しく奥深い、孤独でもある仕事だ。
これからソーシャルワークを目指す数少ない学生の方々よ、心してこの道に挑んでほしい。
さて、明日も仕事だ。明日に備えて今日もノンアルコールビールでほろ酔い気分。久々に古民家である実家に帰りたくなった。


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