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大切な時間 〈後編〉

移動中も


中央線に揺られ、ジャグリング関連のお話をしていた。私はそこまで詳しくないけれど、特にマニピュレーションが好きで、観るのもすき。それに友人から聞くお話はいつも楽しい。ひょんなことに私もきれいな色の布のついたポイをいただいたばかり。これは振り回すしかないよね…!と、動画を見て研究しないとだし、どこかに教えてくれる人いるかな?とか、練習会に参加しちゃおうかなとか、今日持ってきたら良かったね、とかとか。どう扱うのか、どんなふうに動いたら良いか、簡単なアクロバットも捩じ込んじゃう?とか。イメージを二人で膨らませる。そんな時間もたのしい。

高校の頃、選択授業で新体操を学んでいて、卒業前に発表する「団体 5リボン」の演技の構成を考えることが楽しくて楽しくて、放課後も居残って黒板上やノート上で緻密に構成を練ったり、かと思えば朝練(自主練)の時間を設けて動きながら実際に曲に当ててみたり、あーでもないこーでもない、こんなこともしたいあんなこともしたいと意見を出し合い、複数人だからこそできて、他のチームには絶対に真似できない要素を盛り込み、情熱的な曲に合わせて激しく入れ替わるフォーメーションや手具交換、目まぐるしく展開し技がぽんぽん繰り出されるかっこいい演目を創作したことがあった。話していて、そんな懐かしい記憶がふと蘇る。
またひとつ、やりたいことが増えてしまった。

車窓から見える空には、夏のような雲がぽこぽこと浮かんでいた。


それからお話はゼロコの『The Writer』や『モノノメ』のことに。友人はまだモノノメ未体験なので、「ぜひ何も知らずに観てほしい!」と、これ以上ないほどのキラキラな瞳で(※あくまでイメージです)おすすめをした。

当然、ゼロコを知らない方にも、モノノメがどういうものなのかがよく分かっていなくても、なんの情報も携えず身構えずに、たくさんの方々に観に来ていただけたら嬉しい。
そしたら私、踊って喜びます!!!


□大事な『モノノメ』の新着情報を載せておきます⬇
残席情報も、随時更新していきます!
よろしくお願い致します。


さて、久々の立川はというと。
駅はさすが日曜日の混みようでしたが、コンコースに白藤がいくつか飾られているのをみつけて少し気持ちが和んだ。今季はまだ白藤を見に行けていなかったので「わー♡」と駆け寄る。「藤の蕾は食べれるんだよ」と、ここでもひとつ藤のお花に関するお話をする。和装をした際に私が髪に挿したい生花ランキング1位だと、聞かれてもいない情報も勝手に添えて。笑

駅からGREEN SPRINGSへ向かう途中の階段下は大道芸のポイントらしく、この日もどなたかがパフォーマンスをなさっていました。ちょうど、客上げされて前屈姿勢での中腰になった男女大人3人の上を、助走をつけて側宙で跳び越えるところでした。

GREEN SPRINGS内、階段を上がったところに、いかにも速そうで蒼く燃える炎のような流線型をしたパブリックアートがあって、もしもこれを使った現代サーカスをするならどんなふうにしたいか、尖った部分をどんなふうに使うか、「私なら1000%登るなぁ」とか。使われもしないし、無意味かもしれないけど、想像を膨らませて真剣に考える。こういうことは普段からよくしている。相手が子供でも大人でも年配の方々でも。そして友人だからこそ。同じものを観ても違った視点や意見が出てくるのは単純におもしろいし学びにもなる。相手の好みや感覚を知る上での私にとって欠かせない大切なコミュニケーションのひとつにしている。
小さな想像の時間や、思考や価値観を言葉に出したり共有する何気ない移動中のちょっとしたやりとりは、実はとても大事なことで、私には重要な時間なのです。かといって、ずっとお話しているわけでもなく、沈黙の時間すらもこの友人とは心地いい。

後に調べると、このパブリックアートは中村哲也さんの「上昇輝竜」という作品でした。未来のアートやアーティストと、立川を訪れる人々の幸せを願って創られたという思いを知りました。


草花の生い茂る素敵な細い道を見つけ、入ろうと片脚を伸ばしたところで「✕🩰  ✕🐕」の表示に気づく。スッと足を引っ込めた。そういう場所へ入っていきがちな私を知っている友人は、そんな様子を見ていつもにこにこ笑っていてくれる。
そういう道に仕掛けを置いておいたら、私、すぐに引っ掛かりそう!笑

昼間の陽射しは思いのほか強く、どちらかのお店が体験用にと外に用意してくださっていたテントに吸い込まれるように入った。風の通り抜ける心地よいテント内から見える噴水をぼんやりと眺めながら、吹き出してはぽちょんぽちょんと緩く落ちてゆく動きがいちばん好きだなぁと二人して呟いたり、テント内に付属されていたアジャスターバックルの受け側に私のリュックの差し込み側がカチッとフィットするのでは!と、地面に置かないタイプの新たな荷物掛けかな?と、試してみたり。


中央の池にも寄り、石や池の上に散るヤマブキの黄金色の花びらや、大小の魚、水滴をキラキラと乗せた浮き草たちを、膝をついて覗き込むように愛でた。「押すなよ、押すなよ」と言ってみたけど、押す人はいませんでした。
ドボンした暁には腹をくくって、頭に浮き草でも乗せて「あなたが落としたのは、この黄金の花びらですか?それとも頭に浮き草を乗せた人間ですか?」とか言いながら池の中から現れようと思ったのになぁ。笑



PLAY!MUSEUM「谷川俊太郎 絵本★百貨展」

はじまりのあいさつの一言一句がとても印象的でした。

えほんは、たびすること。


観るもの、聴くもの、体験するものどれもが新鮮で好奇心が刺激され、童心に帰ってはしゃいでしまった。

植物で出来た鈴を持つと、
跳ぶたびに音がなって愉快。
写真は後ろ向きに跳んで、
勝手にけんけんぱを巻戻ししているところ。
🥛
つれていかれている最中

中でも大好きになった展示がありました。
『これはすいへいせん』という、絵本から飛び出した世界を歩きながら物語も進んでいくのですが、途中から急に増える情報量に笑ってしまった。絵本の癒やし空間にうかうかしていた。「ことば」と「できごと」を一つ一つ確認して整理していかないと登場人物名すら覚えられない。前の行や前のページに歩いて戻ったり、最後は一番最初のページを思い出して確認に行ったり。笑いとツッコミとリアクション総動員で楽しんだ。きちんと回収される(振り出しに戻る)ところに小さく拍手、ふたりで大笑いしました。

続いて靴を脱ぎ、絵本の中の世界にも入りました。ビーズクッションに体を預けて鑑賞するのですが、身体が、ゆったりとすすむストーリー(ナレーション)とクッションに沈んでゆき、心地よすぎてどんどん砕けた体勢に。

かろうじて座位

絵本コーナーではそれぞれに気になるタイトルやイラストの絵本を順に手に取る。するとここで、谷川俊太郎さんのはじまりの挨拶の右側が(※載せた写真は左側です)、すべて絵本からとった言葉たちで作られたものだと気づく。気づけたことが嬉しかった。このコーナーにもし立ち寄らなかったら、きっと気づけず、いまも知らずにいたと思うともったいない。

最後にもう一冊、と手にとった絵本は『へいわとせんそう』。
言葉にならないものが溢れて二人で泣いた。ものすごい絵本だった。

私はプロテスタントの幼稚園・小学校で育ち、カトリックの中学校へ通い、高校は体育大附属(無宗教)、寺院に長く勤めた。デパートでのフルーツギフトの担当責任者をワンクッションに、今は看護・介護の世界にいる。異色な経歴すぎるのか、面接では必ず掘り下げられつっこまれる。けれどそれらを経験したからこそ思うのは、どっちが良いとか悪いとか、どちらが先で後だとか、どちらが正しくてどちらが偉いとか、聖地はどっちのものだとか。本当にちっぽけなことで。争いや諍いはすべて人間の作り出すところのもの、どんな宗教でもどんな国の人も関係なく貴賤も同じくひとりの人間、生老病死も変わらず五臓六腑に差はなく、誰しも食べて寝なくてはならず、陰陽太極と六道輪廻の中にあっていつ何時でも助け合い敬い合うべきだということ。これは永劫に堅く変わらない人の道。

この絵本にも、多くの言葉はなくとも通ずるものがありました。深い深い絵本でした。

この絵本に出会えたこと、そして「今」に幸せを感じると同時に、なおも戦争や貧困に苦しむ国々や人々と、過去の歴史に深い哀しみを感じて胸が引き裂かれそうになる。
そっと胸に手を置き目を瞑って深呼吸をしたけど、伝う涙は途切れなかった。


箱の最適化展

2021年7月に“サーカスバザール キラリ☆ふじみ”を訪れたときにメイン会場でかかっていた『サーカスが来た』という曲を調べていたときに、オグロエリさんという、紙を使ってものを作るデザイナーさんを知った。町田で『カミノサーカス展』が近々開催されるという情報を入手し、そちらの会場にも中山うりさんのサーカスの曲が使われるとのこと、意を決して観に行くことに。
これがもう本当に、ずっとここにいたいと思うくらいかわいい紙アートの数々や手法に囲まれた会場で、長時間を過ごしてしまい何周もしてしまった。

町田の街を紙で再現
切ったり折ったり貼ったり丸めたり。
なんだかちょっと、
ゼロコの角谷さんにも見えてくる不思議。
それぞれの営みを感じる窓辺図


▶中山うりさんの『サーカスが来た』

よろしければ続きを、曲を再生しながらお楽しみください♪


SUPER PAPER MARKETにそのオグロエリさんの作品や商品が出展中と知り、また、箱の最適化とは?と、展示のタイトルもとても気になっているところでした。
私は紙が大好きなのですが、そこはSUPERなPAPERのMARKETなわけです。文字通り様々な材質の紙や紙から作られた商品がいっぱい並んでいました。大興奮を抑え、静かに悉に、時々手にとりながら、じっくり見て回りました。楽しかった〜〜!!!

入ってすぐの左手に展示されていた箱箱の、その計算し尽くされた展開図に声が漏れた。細かく緻密な設計や工夫、企業の試みや努力や遊び心がひしひしと伝わってきた。箱、かなり奥深いです。

ゲームもしました。どれもやったことのないゲームばかり!まずはルール説明を読むのに必死。ひとまずやってみるも、所要時間5分と書いてあったけれど、私達がのそのそしているからなのか、ぜんぜん5分なんかじゃ終わらない。笑
途中から神経衰弱みたいになって新ルール(並べ方)を付け足したり、ずる賢い勝ち方を編み出してようやく完遂。笑笑

指先の感覚を研ぎ澄ませる新感覚ゲームもありました。もちろんどれもすべて紙でできていて、メンコのようなちょっと厚めの手札で遊ぶ。そこに今も昔も変わらない良さを感じました。さすがはエシカルやSDGsを謳いサスティナブルな社会の実現に注目が集まる時代、インクやパッケージにも気を付けている会社がたくさんあった。

楽しくて時間も忘れて熱中。思えばちょっと早いお昼の時間帯にドーナツを2個食べただけで、お腹も空いていた。
GREEN SPRINGS内の店舗で、以前PLAY!PARKに「マカロニと世界」を観に来たときに食べたRojiura Curry SAMURAI.というカレー屋さんのカレーがお野菜たっぷりで美味しかったのを覚えていた。でもこの日はちょっと別の気分で(前回 下北沢で野菜たっぷりの薬膳カレーを食べたこともあって)、他のお店に。オシャレな店内とを迷ったけれど、外があたたかかったのでテイクアウトすることにした。手渡された呼び出しベルを持って席を探す。芝生が気持ちよさそうだったので、芝生に行くことになった。芝生の上はすごく賑わっていて、みんな好き好きに過ごしていた。なだらかな坂の中央上辺にこじんまりと場所を確保。絵本★百貨展に入る直前の限定ブースで購入した大きめの風呂敷がここでさっそく役に立つ。もう少ししたら、予めお知らせくださっていた呼出予定時刻になるので、少し早めに受取にいこうと立ち上がった瞬間にバイブとアラームとがけたたましく鳴り響く。芝生から店舗までは少し距離があったので駆け足で。激しく鳴り続けるアラームを握る私は、まるで時限爆弾を抱えた人のよう。もしくは逃走中でミッションを時間内にクリアできずにアラームが発動し、ハンターから逃げ惑うプレーヤーのような面持ちだった。お買い物に来た多くの方々が家族やペットと優雅に過ごす中、こんなにも長閑で幸せにあふれた日曜日に、足音も立てずに(アラームがうるさい分、足音を静かに?)疾走している自分の状況に途中から笑えてきて楽しくなった。

友人の待つ芝生へ2種の焼き立てほかほかピザをるんるん持って戻る。砧公園を断念した時点で、まさかピクニック気分を味わえるなんて思ってもいなかったので、外での焼き立てのピザは本当に美味しくて楽しくて、ピクニックを超えてパーティーだった。

食べていると、ぽつりぽつりと雨が降り始める。確かに車窓から見えていた夏のような雲=積乱雲。あれよあれよという間に大粒の雨になり、周りの方々が一斉に荷物をたたんで退散、あんなにいた人々はみんなどこかに消え、芝生の上は私達ふたりと、雨の中を楽しそうに走り回る数人のこどもたちだけになった。
私達も荷物をまとめて移動した。芝生の中央寄りに!……えっ?笑
真上にある黒っぽい雲からは光芒が見えていて、風上の空は明るく、“雨が降る前に吹く風”も無かったことを鑑みて、今を耐え忍べばすぐに止むとみた。
貸し切り状態になった芝生にテンションもあがり、「いえーい!」とばかりにででーんと中央寄りに場所を移動、「わーい♪」とふたりして両手を広げてラン。席替えもした。芝生に寝そべってみたりもした。気分は最高に爽快で開放的、雨もスパイスだねって言って食事を再開。楽しすぎた…!


少し離れたところを赤い服の鮮やかな幼児がはいはいで登ってきた。母親はベビーカーを押していた。時々ぺたんと芝生にお尻をつけては、こちらに手を振ったり拍手をしたり。しばらく笑顔と笑顔で対話し模倣し合う。両手を上に広げ、ひの字のようにして空を持ち上げるポーズで、雨が降っていることを誰に教わることもなく何度も全身で伝えてきてくれた。私達も同じポーズをして「雨、降ってるね」って全身で返した。嬉しそうに雨の降る空を見上げる姿があまりに純真で、その子と交わした無言のやりとりもまた神聖だった。

そうして非言語的コミュニケーションに癒やされているうちに、ピザも無くなり、雨はだんだんと降り方を弱め、気づいた頃にはすっかりお日様も戻っていた。



楽しい時間はあっという間でした。
壁や問題や悩みも日々立ちはだかり、泣きたくなったり、挫けそうになったり、心折れそうになったりすることもたくさんあるけど、それらの存在にも感謝を忘れず丁寧に向き合い、常に前向きにいつまでも成長を続けてゆきたい。
生きるとは準備と処理、問題と解決の連続だ。それを楽しんだ者勝ちだと思います。


こんなふうに心がふかふかしてまあるくなるプレゼントのような1日があるから、私はまた日々をおもいきりがんばれるのです。

こさえた風呂敷はお尻には敷かず!
ピザを置く。笑


お家に帰るまでがお出かけ、展示場の入場時に貼ったシールをリュックに貼ったままで、ふたりとも仲良くお家に帰ってから気づきましたとさ。めでたしめでたし!


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