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物語はいつでも

わたしはディズニーが好きだ。
学生時代は年間パスポートを持っていて、
アトラクションやパレードを数時間前から待ったりしていた。
ここ数年誕生日はパークで過ごしているし、
2年前なんて大好きな白雪姫にお誕生日を祝ってもらえて心臓が止まるかと思った。

しかし、わたしはわたしよりもディズニーが好きなひとたちを知っている。
Dヲタと呼ばれるみなさんだ。

特定のキャラクターが大好きな人や、
パレードに出ているお気に入りのダンサーさんを推して楽しむ人、
とにかくひたすら同じアトラクションに乗り続ける人、
ディズニーやパークの歴史を調べまくる人、
パークの植物を愛でる人など、
ひとくちにDヲタと言っても色々な人がいる。

とはいえ、わたしはそういったもののどれにも属していないから、
大したことないだろうなと思っていたのだけれど、
どうやらそうではないらしい。

ある時特技を聞かれ、
「ディズニーで撮った写真の背景から撮影場所を当てること」
と意味わからないことを口走った。
好きなこと、とか趣味、ならまだなんとか言えるけれど、
取り立てて特技が思いつかなかったわたしの苦肉の策だった。

そのセリフは世の中的にはキャッチーだったらしく、
毎回誰かしらがディズニーに遊びに行ったときの写真を見せてくれる。
自撮りなんて本人たちが可愛く写っていれば背景は正直どうでも良いものなので、なかなか場所を特定するヒントが少ないものもあった。
しかし「この地面の色はここかな」「このゴミ箱のデザインはこのエリアかな」「この壁の雰囲気だとここかな」と推測し、恐る恐るエリア名やアトラクション名を伝えると、高確率で驚かれた。

これは絶対にわからないだろうと友人が彼女の写真を見せてきたとき、
「アンバサダーホテルで結婚式の時に使うエリアだね。池に囲まれていて、イクスピアリの階段からも見えるところの」
と答えたら、しっかりとどん引かれた。
つい最近、親しい人にも十分やばいよと言われて、
そうか、わたしはディズニーに詳しい側の人間なのかとやっと思えた。

そもそもわたしが本格的にディズニーにはまったのは高校生の頃。
小学生時代からトランペットを吹いていたわたしは必然的に吹奏楽部に入り、中学高校と楽器を続けた。
高校時代、指揮者の先生に
「どんなシーンでこの曲が使われているのかイメージしながら吹くことが大切だ。映画を観てないひとは観て勉強してこい!」
と言われ、文化祭や演奏会で吹く予定だったディズニー作品を借りてきて観た。
それが全てのはじまりだった。

ディズニーの物語は夢と魔法と希望に溢れていた。
そこに被せる音楽もとっても素敵だった。
それまでも人並みにディズニーランドへは足を運んでいたけれど、
特別な感情を抱いたのはそのあたりの時期だった気がする。

大学生の頃、友人に
「ディズニーに行くなら富士急のほうがいいな」
と言われたことがある。
わたしはそのセリフに純粋に驚いた。
この人にとって、ディズニーランドと富士急ハイランドは同じ土俵に並べられるものなのか。
確かにディズニーランドは遊園地のひとつだけれど、それ以上に唯一無二のテーマパークだ。
ひとつひとつのエリアに物語があり、
その物語に合わせてアトラクションも、レストランも、お土産屋さんも存在している。

アンディのお部屋をイメージしたトイストーリーマニアでは、アンディが寝たあとの設定なのでキャストさんは朝でも「こんばんは」と声をかけてくれる。
アトラクションの待ち時間の表示は本来5分刻みだけれど、プーさんのハニーハントではたまに「82分(ハニー)」という表記を見ることができる。


そういう遊び心や物語があるから、
ディズニーのアトラクションは楽しいのだ。
あっと驚くアトラクションがたくさんある遊園地も好きだけれど、
やっぱりわたしは物語がある空間のほうが大好きだ。

✳︎

先週末は、高校生の頃から仲の良い友人の誕生日だった。
仲良しの3人でディズニーに行こうと話していたけれど、
この状況なので延期にせざるをえない。

でもせっかくならと、
「オンラインディズニー」を決行することにした。

挑戦してみたいキャストさんを事前に3人で振り分け、
それぞれがセリフをネットで調べて練習をし、
当日楽しく披露しようというもの。
ディズニーフードのレシピもちらほらあがっていたので、
各自でつくって持ち寄ったら楽しいよね、なんて話していた。


「でも、せっかくならもっとディズニーっぽいことしたくない?」
サプライズが好きな友人にそう言われ、
わたしたちは誕生日を迎える友人のために「ディズニーっぽいもの」を手作りすることにした。

イベントやお土産情報などが載っている”TODAY”、
パークチケット、ファストパス、
抽選に当たった人だけがゲットできるショーのチケット。

それらを全部、パワポで作った。
ファストパスの一番下に書いてあるよくわからない数字の羅列は高校の電話番号にしてみたり、ショーの時間をビデオ通話開始時間に設定して事前に作った動画を送ったり、チケットの裏側のQRコードを読み込むとネタで作ったInstagramのアカウントに飛んだりと、無駄に凝って作り込んでしまった。
その過程ひとつひとつが、全部めちゃくちゃ楽しかった。

サプライズも無事に喜んでもらえて、
「これができるなら、パークに行くのは年に1回とかでいいや(笑)」
と友人は笑ってくれた。


ディズニーランドやディズニーシーといったパークだから楽しめることは、きっとある。
女の子はみんな憧れのプリンセスになることができるし、
今日が特別な日なんだと伝えるとキャストさんもキャラクターたちもこれでもかというほどお祝いしてくれる。
どのエリアでも素敵な音楽が流れていて、それぞれの物語の登場人物として、キャストさんが挨拶してくれる。
ショーやパレードが始まれば、パーク全体を使ったエンターテインメントを目の前で楽しむことができる。
なにより、ポップコーンを片手に「120分も並べないよー」と文句を言いながら、話し込んでいる間にあっという間にアトラクションの目の前にくるワクワク感は、あの場でしか感じることができないだろう。

あの空間が創り出す夢や魔法、冒険やイマジネーションにはもちろん到底敵わないけれど、
それでもわたしたちはとても楽しかった。
重たい足を引きずりながら舞浜駅に向かうところまでがディズニーだとしたら、電話を切ったあともしばらく耳を頭につけて写真を見返していたわたしは、同じ余韻を引きずっていたと思う。


”ディズニーランドは永遠に完成しない。”
ウォルト・ディズニーが残した有名な言葉だ。

本当だったら、4月に新しいエリアがオープンするはずだった。
大好きなトゥモローランドが少し潰されたことを恨めしく思いながら、
それでもきっと一瞬で「美女と野獣のエリアめっちゃ可愛い!」「ベイマックス超おもしろかった〜!」と掌を返したように喜ぶはずだった。
でも、それがいつになるのかわからない。
だったら、自分たちで、自分たちのためのディズニーを作って楽しんで待てば良い。

YouTubeでおうちディズニーと称してアトラクションを手作りしている動画のリンクが、色々な友人から送られてきた。
くだらなくてめちゃくちゃ笑った。ところどころポイントを押さえていて最高だった。

でも、彼の表現するディズニーの良さと、
わたしたちが愛するディズニーの良さはちょっとずつ違う。
だから、それぞれの方法で楽しめば良い。
自分が楽しいと思う方法で、ディズニーの世界に浸ればいい。

おうちだからできるディズニーの楽しみ方が、きっとある。


だってほら、”全ては一匹のねずみから始まった”んだからね。


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