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ものがたりの世界へ入り込む

今回は福岡市美術館で開催されている『高畑勲展-日本のアニメーションに遺したものへ行ってまいりました。

おととしの8月に東京国立近代美術館でも開催されており、全国巡回して福岡へやってきてくれました。同じ展覧会を2回見に行くことは稀ですが、より深く高畑勲さんの世界へ、そして自分の世界へ入り込んで楽しむことができました。会社の有休を取得したこともあり、気分も上々でした◎

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子どものころからスタジオジブリが好きで、大人になっても見続けている唯一のアニメーションでもあります。当時はなんとなく映像をみていただけだったと思いますが、言葉や時代背景を理解できるようになってから見ると、アニメーションの中にドキュメンタリーや思想、文化など現実世界ともつながる共感できる要素が多くちりばめられていることに気づかされました。

この引きひきつけるものとは何だろう?

展覧会を通して、そのワケを少しばかり分かったような気がします。

アニメーションの世界には偶然の出来事が存在しない。だから目に見える全ての世界をつくらなければならない。

と、キャプションの言葉に記されていました。高畑さんはノートに膨大な量のメモを残されています。ものがたりの構築から登場人物の性格、背景美術や音楽に関することまであらゆる言葉が残されており、非常に感慨深いものでした。丸みをおびた特徴的な文字が、高畑さんの人柄を表しているのかなと勝手に思ったりしました。

また、当時多くの製作スタッフを抱えていた現場では登場人物たちの複雑な関係や心境の変化をものがたりへ反映するために、人物相関図や感情の変化をチャートにして、全員で共有されていたそうです。

全て高畑さんの手書き。当時の苦労が思い浮かばれます。

なかなかこんな裏側の制作の様子を目にすることがなく、非常に新鮮でした。私自身その作品を見たことがないのに、ものがたりの世界へ入り込んでいく感覚になり、と同時に作品に対して親近感をおぼえました。

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ここで私が個人的に気になる作品「おもひでぽろぽろ」の話を。主人公・タエ子が訪れる山形と、当時小学生の回想シーンの場面転換が印象的です。

気になる理由としては、美しい背景美術と妙に動きがリアルな登場人物たちの口や表情の動き。

背景を手掛けられた、男鹿和雄さんはこの作品から本格的に高畑さんの作品に携わるようになったそうです。朝もやや朝露をそのまま映像として体感できる「しずる感」を感じられる背景は、私のnoteアイコンにしているくらいお気に入りです。

かわって、登場人物たちの表情ですが、声優さん自身の表情をそのまま活かして口の動きも忠実になるよう、母音の口の動きをアニメーターの方々と共有されていたそうです。だからこそ、山形弁の印象も強く残り、少しユーモアのある表情が印象的だったのでしょう。「そういう表情私もしてるのかも」と感じますね。

またあらためて「おもひでぽろぽろ」を楽しみたいです。

年を重ねても、子どものときと同じようにものがたりの世界へ入り込んで楽しめる高畑さんの作品と出会えたことは何にもかえられないものです。


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