栗井

くちなし

栗井

くちなし

マガジン

  • ひとりごと

    日記、遺書。私のひろいあつめ。

  • いいたいこと

    世界に思うこと、丁寧に書くやつ。

  • ふぃくしょん

    読んだ本や観た映画から、浮かんだこと。

記事一覧

4月季。

桜とともに意識が霞んでゆく。 花見をした。 桜を愛でる風情を、私はあまり持ち合わせていないが 枝が伸びすぎて地面すれすれに咲いている桜の散り際、の風情についてに…

栗井
7日前
5

3月季。

あったはずの巣を目指して戻ってきたツバメが、行き先を見失って飛んできていた。そこに巣はなくてツバメは行ったり来たりを繰り返している。 凍えそうな寒さもなくなり花…

栗井
1か月前
3

2月季。

朝、静電気をくらいながら車を降りる。 あられが降った。 雪のように白く積もってはいないように見えるのに、歩くと地面からしゃりしゃりと音がする。 あられはすごく跳ね…

栗井
2か月前
8

1月季。

新年会に行った。ジョージアのワインを飲んだ。初詣に行った。山の上は雪と霙と雨だった。ターナーをみた。たくさんの感性と表現が集まる場所に行った。人知を超えた美味し…

栗井
3か月前
3

いばしょのおまもり

どうしようもなくだめになったとき 私の人に頼れない性格を加味してもそれでも助けてほしいと、 手を伸ばせるような人が東京にしかいない。 だから私は早く東京に出なけれ…

栗井
4か月前
18

肉まんと、

冬の寒い夜、1つのコンビニの肉まんを2人(多くの場合それはカップル)で分け合うという幻想が冬、もしくは肉まんの風物詩として世の中に擦り込まれたきっかけはなんだった…

栗井
5か月前
6

未必のいのり

(写真すべて:@manimanium) 今年の初めに、ある写真家の方と女の子が話しているのを聞いた。 「カメラの前にいる貴方の輝きが、光が、貴方に届きますようにと願いながら撮…

栗井
5か月前
21

花向け

「魔法を持っていて、たしかにそれはとても苦しかったです。 でも捨てたくはありませんでした。 私は必ず、それを好きになれると信じていました」 -- 奇麗な声で生ま…

栗井
6か月前
3

偶々の運命

「こんなに可愛いのに、こんな思いをしてるなんてかわいそう」 母に連れられ会わされた、母の同僚らしい人間はそう言った。 私に同情したような目を向けて、心からそう言…

栗井
9か月前
17

みつきぶりの月報

赦されたくて生きている、 罰かのような気持ちで生かされているとでも言いたげな 生きているというにもおこがましいほど、ただ意識だけがここに置かれている。 今までの私…

栗井
10か月前
16

月報、というには余りあるもの

久しぶりに文章を書きました、 ずっと書いていなかった 外の世界に目を向ける以上に、自分の内側に触れることをずっとずっと拒絶していたから どんな自分もどんな感情も取…

栗井
1年前
2

芸術の深淵

また、表現が糾弾される現場を見た。 芸術や創作物を構成する表現というものに、不適切という概念をあてはめてもいいものか。  「芸術」と「広告」は全く別物なのだとい…

栗井
2年前
21

幸せなことが かなしかった

「毎日楽しいけど、でもたまに辛くなる。夜、眠るときなんかに。 その一日が楽しかったら、楽しいだけ、辛くなる」 そう彼は言った。 この言葉にかつてないほど心を触れら…

栗井
2年前
14

死生活

或る賞レースから1週間、私は穏やかな興奮状態にあった。変わり映えのない日々も家に引きこもる生活もずっとそれは1年前から変わりないのだけど、気持ちは前を向いていた。…

栗井
3年前
10

みえるものしかほめられない

りすとかっと、 その言葉をツイッターの検索タブに入力した日があった その先には私の英知を越えたせかいが、という話はあまりしたくない 世の中では目に見えるものしか判…

栗井
3年前
27

好きとは愛とは恋愛とは、について

恋愛感情を持って好きになる相手の特徴ってなんですか 恋愛感情を抱く相手に求めるものってなんですか 一緒にいて楽しい、困ったときにそばにいてくれる 頼れる分類の相手…

栗井
3年前
14
4月季。

4月季。

桜とともに意識が霞んでゆく。

花見をした。

桜を愛でる風情を、私はあまり持ち合わせていないが

枝が伸びすぎて地面すれすれに咲いている桜の散り際、の風情についてには思いを馳せたりする。

片づけをしながら、また秋ね、と誰かが言う。

その確実性の全くない約束の言葉の中に、きっと私も含まれているのだろうな、と遠くを見ながら考える。

買って行った少しいいところの手土産、

こういった場には数百円

もっとみる
3月季。

3月季。

あったはずの巣を目指して戻ってきたツバメが、行き先を見失って飛んできていた。そこに巣はなくてツバメは行ったり来たりを繰り返している。

凍えそうな寒さもなくなり花粉の飛散量だけが気になる頃。
朝、洗顔のためにお湯を触り、初めて自分の手が冷たいことにきづく。

身体が、置いてきぼりになっている。
今までは自分の心にしか意識が向いていないあまり自分の体が蔑ろになっていた。
最近は自分の内側に意識を向け

もっとみる
2月季。

2月季。

朝、静電気をくらいながら車を降りる。

あられが降った。
雪のように白く積もってはいないように見えるのに、歩くと地面からしゃりしゃりと音がする。
あられはすごく跳ねるので、掴むのが難しくキャッチする遊びをしていたら会社についていた。
というのは嘘。冷たく寒くてすぐに飽きてしまった。

ひとり遊びが得意な人はかわいいなと思うので、ひとり遊びが得意になりたい。

軽い気持ちでいった病院で、手術が必要な

もっとみる
1月季。

1月季。

新年会に行った。ジョージアのワインを飲んだ。初詣に行った。山の上は雪と霙と雨だった。ターナーをみた。たくさんの感性と表現が集まる場所に行った。人知を超えた美味しさに触れた。
体調を崩した。心がひっくり返ってしまった。

最近は幸せすぎて、心がかけていく感覚をずっと忘れていた。
見えないふりと、なかったことにされていく心を留めておく方法を私はもうあまり思い出せなかった。社会人ってすごいね。
でもこん

もっとみる
いばしょのおまもり

いばしょのおまもり

どうしようもなくだめになったとき
私の人に頼れない性格を加味してもそれでも助けてほしいと、
手を伸ばせるような人が東京にしかいない。
だから私は早く東京に出なければいけない、私に息をさせるために。

そんな思いで生きていた。

今月頭、東京に遊びに行った。
半年前に行ったバーで会った人たちに、また会うためだ。

そこではたくさんの懐かしい顔に再会した、
今回私を誘ってくれた人だけじゃなく、半年前に

もっとみる
肉まんと、

肉まんと、

冬の寒い夜、1つのコンビニの肉まんを2人(多くの場合それはカップル)で分け合うという幻想が冬、もしくは肉まんの風物詩として世の中に擦り込まれたきっかけはなんだったのだろう。

残念ながら、私の肉まんは孤独の象徴である。
夜に予定もなく、中途半端な時間に寒さの中1人で家路についているとき、遅い時間であればあるほど、寒ければ寒いほど、私はコンビニで肉まんを買って、家までの道で歩きながら頬張ってしまう

もっとみる
未必のいのり

未必のいのり

(写真すべて:@manimanium)

今年の初めに、ある写真家の方と女の子が話しているのを聞いた。
「カメラの前にいる貴方の輝きが、光が、貴方に届きますようにと願いながら撮っています」
そういったことを話されていた気がする。

「今はわからなくても、受け取れなくても、それでも写真は残り続けるから。受け取れる状態になったときに見返して、その光を、写真に込めたものを受け取ってもらえたらいい、その瞬

もっとみる
花向け

花向け

「魔法を持っていて、たしかにそれはとても苦しかったです。
でも捨てたくはありませんでした。
私は必ず、それを好きになれると信じていました」

--

奇麗な声で生まれたかった、私があの絵を描きたかった。
うまく笑える人間でいたかった。
なんでもいいから、わたしを外に出す手段が欲しかった。

憧れにはいつも届かなくて、
自力で作らなければあるはずのない特別を、わたしだけのとくべつを、
ずっと

もっとみる

偶々の運命

「こんなに可愛いのに、こんな思いをしてるなんてかわいそう」

母に連れられ会わされた、母の同僚らしい人間はそう言った。
私に同情したような目を向けて、心からそう言っているようだった。
ここには、多感で人生経験の少ないまだ若い女の子が、とか、そんなような意味も込められていたのだと思うけれど、
とにかく気持ちが悪かった。

どうして、生身の人間を目の前に、その人生を美化して悦んで、挙句かわいそうなんて

もっとみる

みつきぶりの月報

赦されたくて生きている、
罰かのような気持ちで生かされているとでも言いたげな
生きているというにもおこがましいほど、ただ意識だけがここに置かれている。

今までの私を作ってきたもの、そんなものになんでもなかったような顔をして笑って幸せに生きることが世界への復讐だなんて、ぎらついていたこともあったのだけど
ここに存在する肉体と魂はとにかくとくとくとすべてが希薄である。

言葉が頭と思考を覆いつくすよ

もっとみる
月報、というには余りあるもの

月報、というには余りあるもの

久しぶりに文章を書きました、
ずっと書いていなかった

外の世界に目を向ける以上に、自分の内側に触れることをずっとずっと拒絶していたから
どんな自分もどんな感情も取りこぼさないようにと今まで必死に大切に紡いでいたものを、自分で指の隙間からぼろぼろと零してぐちゃぐちゃにしたくせに、今更またかき集めてくっつけようとするなんて、とても滑稽だったから

でもまた最近心が文章として浮かんでくるようになって、

もっとみる

芸術の深淵

また、表現が糾弾される現場を見た。
芸術や創作物を構成する表現というものに、不適切という概念をあてはめてもいいものか。

 「芸術」と「広告」は全く別物なのだということ。
本人のエゴによって表現者の内側から絞り出して生み出される「芸術」と、世の中の人々を啓蒙するため、明確な意識の変化を目的として作られる「広告」とでは、性質が全く違っていることをわかっていてほしい。

 広告には適切さが求められてい

もっとみる
幸せなことが かなしかった

幸せなことが かなしかった

「毎日楽しいけど、でもたまに辛くなる。夜、眠るときなんかに。
その一日が楽しかったら、楽しいだけ、辛くなる」
そう彼は言った。

この言葉にかつてないほど心を触れられた。

たくさん優しさを向けられた日、愛を向けられた日、笑顔で溢れた日、私という人間を生きられた日。決まって夜、間接照明のオレンジの光に照らされながら、ベッドの上で悲しくなった。寂しさとは少し違う、申し訳なさと喪失感を混ぜたような、確

もっとみる
死生活

死生活

或る賞レースから1週間、私は穏やかな興奮状態にあった。変わり映えのない日々も家に引きこもる生活もずっとそれは1年前から変わりないのだけど、気持ちは前を向いていた。

何かしたい気持ちに溢れていた。あぁこれはいい。鬱はもう治るんだろう、連れ添ってきた鬱もミスiDも、この1年は通過儀礼だったのだ。むくむくと湧く元気とともにそう感じていた。だけどやっぱり長くは続かなかった。木曜日、金曜日、と日が進むごと

もっとみる
みえるものしかほめられない

みえるものしかほめられない

りすとかっと、
その言葉をツイッターの検索タブに入力した日があった
その先には私の英知を越えたせかいが、という話はあまりしたくない

世の中では目に見えるものしか判断されない.
こんなだったけどここまでかわいくなったよ、太ってたけど私こんなに痩せたよ、虐められてたけど 今こうして輝いてます、
好きでしょそういうの、目に見えるから.

努力した人も努力本体も否定するつもりはないけれど、目に見えてす

もっとみる
好きとは愛とは恋愛とは、について

好きとは愛とは恋愛とは、について

恋愛感情を持って好きになる相手の特徴ってなんですか
恋愛感情を抱く相手に求めるものってなんですか

一緒にいて楽しい、困ったときにそばにいてくれる 頼れる分類の相手なら恋人でなくてもいいはずだし ではそれは私にとって恋人に求めることではないんだと思う

ならばどんな人が好きかと考える
私は弱さと強さを表裏一体で持ち合わせているような 人間味のある人が好きだ
その人なりの苦しみや葛藤があって、そんな

もっとみる