見出し画像

強い女性が愛されている話が好き。吉乃とヨル #今こそ読みたい神マンガ

強い女性が好きだ。正確には、強い女性が愛されている話が好きだ。

普段は安易に「尊い」「萌…!」という言葉で片付けてしまうから、もう一歩踏み込んで、強い女性が愛されまくっている話について考えてみたいと思う。

よき母にして妻“役”、裏の顔は一騎当千の殺し屋

いま日本でいちばんHOTな強い女性といえば、漫画「SPY×FAMILY」(遠藤達哉)のヨル・フォージャーといって差し支えないだろう。4月からアニメ放送がはじまって、放送日のSNSには関連ワードがトレンド入りを果たす人気ぶりだ。

SPY×FAMILYでは、スパイが父親役に、殺し屋が母親役に、超能力者の少女が娘役となり、それぞれが自分の素性を隠して、かりそめの家族を築き上げる。世界平和や任務のために寄せ集まった3人が、いつしか本当の家族にーーなってほしいと、いちファンとしては願わずにはいられないハートフル日常コメディだ。

強い女性ことヨルは、殺し屋という裏の顔をもつフォージャー家の母親(妻)役。標的に数十人の護衛がついていようとも、たったひとりで仕事を完遂する実力者でもある。

普段は楚々とした女性で、人並みの幸せを外から眺めてきた生い立ち故か、世間ずれしていて天然なところも。彼女の並外れた身体能力さえ知らなければ、大抵の男性は美しい彼女を守ってあげたくなることだろう。

しかし彼女はそらもう、べらぼうに強い。正確には、強くならねばならなかったのだが。そんな彼女がかりそめでも家族を作り、別の強さを秘めたスパイと夫婦を演じる。あくまで<役>であるが、互いに信頼を寄せ合っていくのを見せつけられると、もう早く結婚してしまえと思わずにはいられない(一応書類上はしているが)。

そのため、強い女性が愛される話だから好き、というとやや語弊があるが、フォージャー家の母(妻)として、彼女がなくてはならない存在として大切にされているのを見るにつけ胸がいっぱいになる。そのままロイド(スパイの名)の奥さんになってくれたらこの上ない僥倖だ。

屈強な男どもを前にしても引かない、肝っ玉のヤクザ孫娘

強い女性が溺愛されまくっていて、個人的に狂おしく好きなのが漫画「来世は他人がいい」(小西明日翔)である。ヤクザの孫同士が勝手に許嫁にされてしまい、ドタバタ過激な共同生活を送るラブコメ(?)作品だ。

強い女性は、主人公にして関西ヤクザの孫娘、染井吉乃(そめい・よしの)。ヨル・フォージャーが身体能力的に優れていたのに対して、彼女の強さは紛れもなく肝っ玉にあり。

屈強な男たちに囲まれても、ひるむことなく啖呵を切る。圧倒的な腕力差があるはずの男どもが、一歩も二歩も後ずさってしまうほどの迫力で、もし殺られるなら刺し違えてでも道ずれにしてやる、っていう執念が備わっている女性(ひと)である。

そんな彼女をどろっどろに愛して執着する男。それが東京ヤクザの孫息子にして、吉乃の許嫁の霧島。こいつがもう最高にクレイジーなやつなのだ。

ヤーさんの偉いひとに溺愛されまくって困っています系のラブコメディはそこそこあるが、本作を一緒にしちゃいけない。霧島の上っ面は爽やかな好青年だが、敵をやっつけるにしても痛めつけて苦しめなきゃ気がすまないし(むしろそれを楽しんでいる)、平気でいろんな女性と寝るわばっさり切り捨てるわ、目的のためなら手段を選ばないKing of ゲス。

けれど、そんな霧島が絶対に手放せないと思うものがある。染井吉乃そのひとだ。普段は誰も手をつけられない狂犬じみているのに、吉乃がいない世界では生きていけないくらいに思い詰めている。

「強い女性」が「愛されている」のがたまらなく尊い

きっと、ヨル・フォージャーにしても、染井吉乃にしても、彼女たちがただ強い女性というだけでは、こんなに作品そのものを好きになってはいなかったと思う。強い彼女たちが愛されている世界線だからこそ、その先が読んでみたいと思うのだ。

蛇足であるが、つまり私は「線」を愛す。これは三浦しをん氏のエッセイにあった萌えの分類に基づくもので、萌えどころは人それぞれだが、大きくは点(猫耳や高校生などの人物造形)と、線(物語の流れや関係性)に分けられるという。気になる方は「夢のような幸福」収録の「欲望の発露する瞬間」を読んでほしい。

思えば、昔は「点」ありきで読みたい本を探していた気がするが、このごろは「線」に萌えることが増えた気がする。その線は物語の大筋のときもあれば、さりげない寄り道のときもある。

そうやって、世間的な評価に左右されず、自分の好きで作品と向き合えたら、私も少しは芯のある強い女性に近づけるだろうか。


この記事が参加している募集

#私の推しキャラ

5,455件

#今こそ読みたい神マンガ

2,604件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?