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2021年6月の記事一覧

恐怖の気配を滲ませた霧のなかを歩く「薔薇のなかの蛇」(恩田陸)

恐怖の気配を滲ませた霧のなかを歩く「薔薇のなかの蛇」(恩田陸)

霧。その一言からはじまる「薔薇のなかの蛇」は、恐怖の気配に満ちている。恩田陸の作品は“不穏”がひとつのキーワードだが、不穏とは、気配のことではないだろうかと本作を読んで思った。

霧。それは読書と似ている。仄暗く視界の悪い道を、ひとりぼっちで進まねばならない心細さ。立ち止まってしまいたいと心は願い、早く抜けてしまいたいと体は急ぐ。もう引き返す道も分からず、霧を掻き分けるように進めば、いよいよ不安の

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