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あや
2021年3月6日 10:26
学生の頃、現代文のテストに出題されて「続きが読みたくてたまらない」と思った作品が1冊だけある。宮本輝の『泥の河』だ。本作の舞台は、戦後まもない大阪の町。戦争は終わったとはいえ、まだまだ人々の生活は苦しくて、ただ生きていくことが難しい時代。思えば、作中で生活への不満を漏らす人がいないことが、余計に当時の苦しさを物語っている。主人公は、河口のそばで食堂を開く両親と暮らす小学2年生の信雄(以下、