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私の好きな写真作家と、色について
私は好きな写真作家が何人かいます。そのうちの1人がウィリアム・エグルストンです。この他にもジョエル・マイエロウィッツやルイジ・ギッリも好きで、いわゆる「ニューカラー」と呼ばれる人たちが基本的に好きだったりします。
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上で簡単に「ニューカラー」と書いたんですが、一体なんのことかわからないですよね。ニューカラーというのがなんなのかといいますと、一般的にはこんな感じです。
1970年代に登場した、カラー・フィルムを使用して撮られた写真作品のこと。カラー・フィルムは40年代からすでに実用化されていたが、報道や広告の分野で使われることが多く、保存性や表現性の面でもモノクローム・フィルムに劣ると考えられていたため、作品としての写真に用いられることは稀であった。しかし、76年にニューヨーク近代美術館(MoMA)で開かれた、ジョン・シャーコフスキー企画によるウィリアム・エグルストンの個展が、カラー写真による表現の可能性を世に示したのを皮切りに、美術作品としての写真にも、積極的にカラー写真が用いられるようになっていった。
こう書いてあると、単にカラーフィルムを使った写真作品のように思えますが、それらの作品には次の特徴があると個人的に考えています。
大判カメラで撮られていることが多い=三脚を据えて撮られている
三脚を据えて撮っているため、水平垂直を強く意識している
大判なので、広角が多い(〜28mm)
大判なので、F14以上に絞って撮っている=パンフォーカス
元々モノクロ作品を撮っていた人なので、被写体のデザイン的なバランス・面白さ、例えば直線や曲線を強く意識している
カラーなので、モノクロで出なかった色を非常に好んで被写体に入れている
つまり、ニューカラーとは、それが出てくる以前のモノクロの作法と、全く新しいカラーの技法を貪欲に取り入れている作品、だから「ニュー」なのです。
例えば上のエグルストンの作品は、構造物と車のラインが綺麗に撮られています(よく見ると下に自分の影も入れています)。2枚目のマイエロウィッツは車の曲線と表情の面白さ、3枚目のギッリはタイルのラインと地図を踏む足が撮られています。彼らはモノクロでも面白い被写体に、色を加えています。
特に注目すべきは黄色を取り入れているところで、黄色はニューカラーの最も大きな発見だったのではないかと考えています。
理由は簡単で、モノクロだと黄色は白と区別がつかないからです。
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黄色と同じ明るさの空(青色)は周りと違うことがわかるでしょうか。
おそらくニューカラーの作家は、カラー写真を見て、黄色を作品に使えるということに気づいたのではないかと思います。今まで使えなかった色を使えるということは、表現の幅が大きく広がることに他なりません。白と黄色のタイルが交互に並んでいるような被写体は、モノクロでは表現できませんでしたから。上の3点はいずれも黄色が入っていますが、ニューカラーの作品に黄色を見つけることはさほど難しくありません。黄色を発見する喜びを見ているかのようです。
そして彼らはさらに、色によって浮き出てくる色と沈み込む色があることに気づきます。
下のチャートを見てもらうと、赤が飛び出してくるように、青が沈み込んでいくように見えないでしょうか。
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重要な事項は赤で書くことが多いですが、それは赤がどの色と比較しても一番浮き出てくるからです。これは色彩遠近法と呼ばれます。
色彩遠近法は、色の持つ心理的な作用や視覚的な効果を利用した空間表現法です。色彩は主に暖色と寒色に分けられ、暖色系の赤や黄などは、前方に迫り出してくるような圧迫感を与えます。一方、寒色系の青などは、後方に向かって吸収されていくように感じます。こういった色彩が人間に与える視覚・心理的特質を利用し、それぞれの色彩を変化や対比させることで、遠い近いなどの空間を表現する方法です。
ここで面白いのは、意外と黄色はニュートラルというか、迫り出てくる感じをあまり受けないということです。赤とオレンジに比べて意外と黄色は出てこない。上の2枚目のマイエロウィッツの作品は、まさにこの色彩遠近法を使った作品のように思います。ギッリの作品にしてもそうで、モノクロでも地図の上にある足という構造的な面白さはありますが、それにカラーが加わることで、黄色、オレンジと緑、青という色の対比がおもしろく表現されています。
モノクロとしてのおもしろさと、色についてのおもしろさ。例えばラインと色を見るという見方を教えてくれたニューカラーの作品が、私は好きです。
そんなニューカラーを真似して撮った写真を最後に載せて終わります。
めっちゃ恥ずかしいですが、どうぞ。
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