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eスポーツ選手の人気を生む方程式【強さ×キャラクター×ストーリー】

eスポーツシーンの界隈では、よく「eスポーツ選手は強いだけじゃダメだ」と言われています。たしかに、eスポーツをビジネスとして成り立たせるためには、チーム・選手の持つ人気や影響力が欠かせません。

ただ、その人気や影響力を生む要素については、断片的に語られることが多いようにも思います。ということで今回、私が思う「eスポーツ選手の人気を生む方程式」をまとめてみました。

私はライターとして、2017年11月からeスポーツシーンを取材しています。選手を取材するようになってから、今ピックアップすべきチーム・選手を客観的に考えるために、いつも自分の中で3つの要素を中心に整理していました。それが「強さ×キャラクター×ストーリー」です。

なので、あくまで私が思う方程式なのですが、これを書いておくことで、eスポーツシーンで活動する選手自身や、選手をサポートする側の方々にとって、何かヒントになれば嬉しいです。

なお、私は『PUBG』をメインとして、主にFPS/TPSゲームのシーンを追ってきたので、ジャンルやタイトルによっては(特にチームではなく個人でプレイするタイトルなど)、当てはまらない部分もあるかもしれません。

また、これは競技シーンで活動する選手に焦点を当てた内容で、ストリーマーに必要な要素は別物だと考えています。

「強さ×キャラクター×ストーリー」は”掛け算”

eスポーツ選手の人気を生む方程式は、「強さ×キャラクター×ストーリー」という掛け算だと考えています。これは足し算ではなく掛け算であることが重要で、どれか1つでもゼロなら、他の要素がどれだけ大きくてもゼロになります。

例えば、どこかから国宝級イケメンを連れてきて、eスポーツシーンへの華々しいデビューをお膳立てしたとしても、大会で勝てる実力がなければ選手としての人気は出ないでしょう。逆に、大会で勝てる実力がある選手でも、バッドマナーや問題発言でいつも荒れているようなら、ファンは離れていくはずです。

このように、どの要素も欠かせない掛け算になっていることを前提としつつ、方程式に含まれる3つの要素について、それぞれ説明していきたいと思います。

1:「強さ」

eスポーツは勝負の世界ですから、「強さ」が人気を生むことは間違いありません。強い選手がカッコよくて皆の憧れであるというのは、揺るぎない世界です。具体的なeスポーツ選手の「強さ」を表すものとしては、大会での実績が指標になるでしょう。

私はこれまで記事を出す度に、Twitterでのエンゲージメント数や記事のPV数など、定量的にもその反応を見てきました。「強さ」以外の要素にフォーカスした取材記事も出してきましたが、やっぱり「強さ」と影響力は明確に比例していると感じます。

では、大会で優勝した実績があれば「強さ」が最大になるかという話なのですが、実はもう1つ重要なポイントがあると感じています。それは、勝ち続けることです。

大会で優勝することは、それだけでも十分に誇れる実績です。でも、例えば国内の主要大会で一度だけ優勝したことがあるチームと、複数の優勝を果たしているチームでは、記事のPV数なら数倍は変わるくらい影響力に差があることが多いです。

つまり、選手の影響力に繋がる「強さ」とは大会で勝つこと、さらには勝ち続けることが求められていると言えます。改めて、とてもシビアな世界だと思います。

2:「キャラクター」

「キャラクター」という要素には、その選手のプレイや人としての魅力が、かなり幅広く含まれると考えています。

プレイスタイルの特徴はもちろんのこと、年齢や出身地などのプロフィール、見た目や声、トークの面白さ、ファンへの対応、選手としてのスタンスなど、何か魅力を感じるきっかけになるものであれば、すべてここに含まれます。

逆に、人として魅力が感じられない言動をすれば、この「キャラクター」の要素はマイナスになっていきます。

大会の試合後に選手がTwitterへ投稿するたった一言からも、ファンはその選手の人となりや、競技シーンへの向き合い方を感じ取っています。もしそれがリスペクトできない内容だと感じれば、その選手のことを応援したいとは思わないでしょう。

ちなみに、あれこれ難しく説明しなくても、「○○選手といえば○○だよね」と、一言で言い表せるような魅力があるほど、キャラが立っていると言えると思います。1クリップですごさが伝わるような名シーンを持っている選手も、キャラが立っていると言えるでしょう。

そういう意味で、天才的なエイムの持ち主であるDep選手(REJECT)などは、この「キャラクター」の要素が最大まで振り切れている存在だと言えると思います。

3:「ストーリー」

先ほどの「キャラクター」は、主に選手個人の魅力を指しているのに対して、「ストーリー」は、一定の時系列を含むチームとしての魅力を指しています。

例えば、そのシーンの初期からトップを走り続けているとか、ダークホースとして新たな風を巻き起こしたとか。因縁のライバルとして戦うチーム同士の関係性なども含めて、チームにはさまざまな背景や物語があります。

この「ストーリー」の要素は、選手自身が発信する内容に限らず、チームやメディア、大会運営など、周囲の人々が伝えることを大きくサポートできる要素だと思います。

ただし、どんなに強くて魅力のある選手でも、チームの移籍を重ねていると、この「ストーリー」は薄れてしまいます。eスポーツシーンでは、メンバーの入れ替わりが激しいことが多く、変化を追いきれないことで気持ちが離れていってしまうファンも、間近にたくさん見てきました。

やはりメンバーの入れ替わりが少なく、同じメンバーで大会に挑み続けている期間が長ければ長いほど、チームとしての「ストーリー」は厚みを増していきます。

とはいえ、勝つためにはメンバー変更が必要とされる場面もあるでしょうから、必ずしも同じメンバーで挑み続けることが正しいというわけではなく、とても難しい部分ではあると思います。

この3つの掛け算において、最強なのは?

ここまで挙げてきた「強さ×キャラクター×ストーリー」の3つの要素を当てはめながら、皆さんの頭には、いろいろなチーム・選手が思い浮かんでいるのではないでしょうか。

ちなみに今、私がこの方程式において最強だと思うのは、『VALORANT』のシーンで活躍する「Absolute JUPITER」の選手たちです。

国内の絶対王者として優勝を続ける紛れもない強さがあり、誰が欠けるのも想像がつかないほどメンバー1人ひとりのキャラクターが確立していて、『CS:GO』から『VALORANT』へと続いてきた「Absolute」というチームとしてのストーリーも申し分ありません。

むしろ国内の『VALORANT』のシーン自体、あらゆるチームが「Absolute JUPITER」に挑むというストーリーの中にあると言えるほどで、彼らが大きな人気や影響力を持つのも当然のことと言えます。

ただ、彼らが『VALORANT』への移行を決断した背景を考えれば、実際は「強さ×キャラクター×ストーリー」の他に、そのゲームタイトルの人気や競技シーンの置かれた状況が、とても大きな影響を与えていることがわかります。

しかしながら、シーンの盛り上がりに貢献することはできても、そのゲームタイトルの運営が決定するeスポーツシーンへの展開や方針そのものは、チーム・選手の立場でどうにかできる範囲を超えているため、今回の方程式からは外しています。

まとめ

以上、私が思う「eスポーツ選手の人気を生む方程式」についてお伝えしました。もしあなたがeスポーツ選手として活動していて「もっと影響力が欲しい!」と思うのなら、3つの要素に分解して考えてみると、何かのヒントになるかもしれません。

改めてまとめてみると、わりと当たり前のことばかり書いたような気がしますが、こうして整理してお伝えしたことで、考え方の1つとして何かの役に立てばいいなと思います。それでは、また。

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