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『きれいごと、なきごと、ねごと、』(戯曲)

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『きれいごと、なきごと、ねごと、』(戯曲)パート1、2、3を公開しています。(完結)
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記事一覧

『きれいごと、なきごと、ねごと、』パート3(戯曲)《完結》

『きれいごと、なきごと、ねごと、』パート3(戯曲)《完結》

20 「遠い街」

翠雨 豪くんと気まぐれに電車を乗り換えて、眠っているうちにたどり着いた街は、みおぼえのない遠い街で、ここで誕生しなおすんだと決意するとめまいがした、そう、ここからわたしは赤ちゃんになる、不純物のない赤ちゃんになる、第二の赤ちゃんになる、おじいちゃんとかが生死の境をさまよって生還した後に「これから第二の人生だ」なんていうけど、人生っていっちゃうと以前のわたしと地続きになるから、別

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『きれいごと、なきごと、ねごと、』パート2(戯曲)

『きれいごと、なきごと、ねごと、』パート2(戯曲)

12 「地獄巡り」

どこにも逃げ場なんてない、学校も地獄なら家も地獄、前門の虎後門の狼、それでも逃げ出そうとした奴らの頭蓋骨が、辺り一面に転がっている、逃げ出す気力も残されていないわたしたちは、地獄巡りをひたすら楽しむしかない、苦しむのが逆に楽しい変な思考回路を見出すしかない、いずれ落ちる本当の地獄のまえの、予行演習だと思い込むしかない、そう考えでもしないかぎりは、とてもじゃないけどやっていけな

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『きれいごと、なきごと、ねごと、』パート1(戯曲)

『きれいごと、なきごと、ねごと、』パート1(戯曲)

『きれいごと、なきごと、ねごと、』

○登場人物

♀愛雨(あいう)…長女。高校三年生。家族の中では唯一、自分のことではなく家族のことを優先的に考えている。あらゆる物事に対して諦念を抱いている。
♀白雨(はくう)…次女。高校二年生。自分の片想いしていた豪のことを妹に取られて以来、翠雨に激しく嫉妬している。物凄く自己中心的で、いまの不幸さは自分の可愛さに見合っていないという苛々を募らせている。
♀翠

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