旅先の匂い
旅先の朝、小さなお堀のような川沿いを歩いていたら懐かしい匂いがする。
なんだっけ。
少し考えて、得心した。
ちょっと排気ガス風味が足りないけど、この感じはチェンマイだ。
水が違うから少し匂いが違うけど、懐かしい朝のお堀散歩の匂いだ。
川に向かって降りられる広い階段には、喫煙所を利用するスーツおじさんたちがぽつりぽつりと座り、テイクアウトの珈琲を飲みながら煙草をふかしている。
なにか既視感があった。
ホイアンだ。
ホイアンの川沿いにある、あの青空ベトナムコーヒー屋。ベトナムらしい、カラフルなプラスチックの低い椅子に腰掛けて飲んだ、あのベトナムコーヒー。
水のある風景は記憶に残りやすいのは何故なんだろうと思っていたけど、匂いとともに心に刻まれるからなのかな。
旅先って、朝がやっぱりいちばん良い。
暮らすひとたちの、日常の匂いや空気感を強く感じられるから。
朝の急ぐ車、自転車、仕事前に一息つくひとたち、子どもの送り迎えをする親御さんたち、通学の学生さんたち。
ここは私にとっての非日常であり、暮らす人にとっての日常なのだと思い出す瞬間が好きだ。
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