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「心のふるさと」が必要な時代。今あるものを伸ばし、「わぐわぐ」 する地域へ。 - 山形新聞2021年9月1日掲載「提言」より

20210901_山形新聞「提言」_8面s

※山形新聞の2021年9月1日朝刊に掲載された「提言」(合同会社COCOSATO代表・阿部彩人)の記事です。

酒田市八幡地域の大沢地区に移住して3年半がたちました。地域おこし協力隊として活動した3年間を経て、4月に同地区の集落支援員に就任し、5月には中山間地域の持続可能な発展を目指す合同会社「COCOSATO」(ココサト)を設立しました。

今まで、私は地域の方々から否定されたことがありません。大沢の住民には地域のために協力し合い、何でもDIY(ドゥ・イット・ユアセルフ)で実現できる知恵とパワー、おおらかさと人間力があります。だからこそ、草刈りで山に描いた「大」文字のライトアップや、2018年から開いている「大沢『大』文字まづり」、地域の沼でのジュンサイ採りを約20年ぶりに復活させるなど、自由に活動できていることに心から「もっけだの(ありがとう、恐縮です)」と伝えさせていただきたいです。

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私は酒田市漆曽根で生まれ育ち、高校卒業までの18年間は「こんな田舎には何もない。清水屋しかない」と思い込んでいました。しかし東京に進学して故郷を外から見たことで、初めてその良さを発見できました。清水屋がなくなってしまった今も、酒田のいいところを108個以上言えます。自分の暮らす地域と他地域を比べて、ない物ねだりをする時代はもう終わったのではないでしょうか。今あるものを伸ばして発信し、地域と地域が協力し合い、1人ひとり、世界のために何ができるかを考えるべき時が来ています。

地域おこし協力隊はスーパーマンではなく、1人の人間です。大きなことをしようと肩肘を張る必要はないと思います。住民と対話して地域のためにできることを考え、小さなことからでも実現しようとチャレンジすればいいのです。その挑戦に対し、地域や行政ができる限り協力するのがあるべき姿と思います。地域にも人にも大いなる「歴史」があり、自らを卑下する必要は全くありません。

新型コロナウイルスの感染拡大以降、以前より活動しづらい状況が続いています。地域や行政は、協力隊に対して過度な期待をしないでほしいのです。人口減と高齢化が進む地域に、居住・関係人口が1人増えるだけでも、大きな意義があります。変異を続ける新型コロナウイルスは、来年になっても収束は難しいかもしれません。以前の世界に戻ることはできず、人の価値観や行動の仕方にも“変異”が求められています。

8月8日にオンライン配信した「大沢『大』文字まづり2021」では、青沢獅子踊り、大沢清流太鼓といった地域の芸能や住民のトーク、白崎映美さんと山口岩男さんによる素晴らしいライブなどを全世界に発信できました。協力していただいた方々には感謝しかありません。

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コロナ禍でも「まづり」に関わる全ての人が幸せになれる形を模索しましたが、日々刻々と変化する状況の中で、あるべき「答え」を用意するのは非常に難しいことだと感じました。しかし、イベント後に出演者・スタッフとして参加した住民の皆さんの笑顔を見て、開催してよかったと心から思いました。当日の様子はYouTubeのアーカイブ動画でぜひご覧ください。

「おめさんの心のふるさとどご、つぐり続けでいぐがらの。」大沢を拠点とするCOCOSATOの看板に書いた言葉です。

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こんな時代だからこそ、故郷のほかに心のよりどころとなる「心のふるさと(ココサト)」が必要と感じます。地域の特産品と自然体験サービスをつくり「里山エンターテインメント」を形にしながら、世界に先駆けた“超高齢化先進地域”を実現していきたいです。

人口減と高齢化は止められなくても、そこに住む人や関わる人たちが「わぐわぐ」しながら生きることはできます。そんなおもしぇ(面白い)地域をみんなでつくっていきたいのです。何が正しいのか答えがわからない、矛盾と混沌を抱えた時代だからこそ、人と人のつながりや「心のふるさと」が必要であり、大事にしたいと思います。

(山形県酒田市 八幡地域 大沢地区在住・阿部彩人)

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(↑大沢地区で住民の皆様約150人にご出演いただき撮影した、『大沢「大」文字音頭』Music Videoです。)

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