執着と完了
数年前にすごく好きな人がいた。
2,3年ずっと彼女未満みたいな立場で粘っていた。
家に泊まりに行き合ったり、土日にデートをしたりするものの、関係性に名前がつくことはなかった。ただわたしはすごく好きだった。
当時のわたしは、まだコントロールと執着と好きな気持ちをうまく分けることが出来ず、彼にとって影響力を成す女でいることを最優先とした。恋じゃないな、あれは彼を手段とした自己実現だったな。失敗したけど。あいたたた。
ご飯を作るのはもちろん、オシャレに興味のない彼に服を買い与えたり、冷蔵庫の不要な食品や調味料を捨てたり、汚れたグリルを磨いたり、ほぼ汚部屋だった部屋に45リットルのゴミ袋数袋の断捨離を積極的に行い、漫画が好きだった彼にちょうど良い本棚を送りつけて組み立てまでやったりしていた。もはや母親だったと思う。わたしがいないとダメだって本気で思ってた。
彼のお部屋はきれいになり、汚くて諦めていた念願の引越しもして、派遣から正社員になって、彼は無事に別の女の子と付き合い始めた。めでたしめでたし。・・・・なわけないだろーーーーー!!!
こんだけやったんだから、応えろよなという無言の圧をかけまくっていたのだと思う。そりゃ嫌だよな。逆なら絶対嫌だもの。
その彼の最近の写真をたまたまSNSで見かけた。SNSってそういう飛び道具的なところある。急な飛び出し事故危険危険!!事故に巻き込まれながら5年ぶりくらいに彼の顔を見た。
まるで知らない人みたいだった。
顔も雰囲気も当時とそんなに変わりはないのだけれど、まるで心が動かず、まるで美術室の彫刻を眺めるように画像を拡大して細部まで観察してみたけれど、心はスンとしたままだった。あんなに好きだったのにね。
数年前のわたしとは細胞もエネルギーも全然別物体になってしまった。もしリアルに会えたとしても何も話したいことはないし、会話が続かない未来が見えた。
その事実に悲しさもない。無事に関係が完了しただけだった。あんなに執着まみれでも、ゼロポイントに戻る。ネガティブな思い出になることもなく、ただスンとしたゼロ地点へ。
別になんとも思ってないけど、わたしに出会えるくらい強運なんだから幸せでいてよね。
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