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永遠に忘れない場所、高円寺。

長年住んでいても、あまり記憶に残らない土地もあれば、1年しか住んでいないのに忘れられない土地もある。

わたしにとっての忘れられない土地は「高円寺」だ。

(ちなみにこれまでの人生で8度ほど引っ越しをしている。)

2014年からたった1年間だけ暮らした街。
当時31歳だったわたしにとってその1年は、言うなれば「人生の再構築のための1年」だった。

初めて高円寺に降り立ったのは、内見のとき。8年に及ぶOL生活に挫折して自ら終止符を打つことに決めた。

次の仕事も決めぬままニートになったわたしにとって、固定費を下げることは最重要課題であり、知り合いづてに紹介されたシェアハウスの内見に訪れたのが高円寺とのファーストコンタクトだった。


大人が楽しそうにしている街だな。

駅に着いたのは夜。飲み屋が溢れる高円寺は、これから飲みに行くのにワクワクしてる人、すでに出来上がったご機嫌な人、そんな楽しそうな大人の街という印象だった。


青春のやり直しと初めてのお水の世界

一戸建てのシェアハウスには常時男女8人くらい住んでいて、いわゆる正社員の人が少なくて、わたし含めニートが3人いたりするタイミングもあった。

夜な夜な酒盛りが始まったり、みんなで無駄にパックしたり、海に遊びに行ったり、すごく青春な時間を過ごさせてもらった。

今でも"元家族たち"とはゆるく繋がっていて、みんな幸せでいて欲しいと思っている。

シェアハウスを出たものの、なんだかんだそのまま高円寺に住んでいる子もいて、ハマると抜け出せぬ、沼の属性を持つ土地なんだなと思っている。


駅前でスカウトされて興味本位で連れてかれたスナックで、そのまま面接に受かり、バイトさせてもらったのも良い思い出。

おかげでどんな相手とも楽しく話せるトークスキルとカラオケのレパートリーが増えた。水割りの作り方やタバコの火のつけ方も初めて教わった。

高校生の娘を育てる明るく美しいシングルマザーや、たまに現れては気難しいおじさんを手の上でコロッコロ転がすおねえさん、そんなおねえさん達に夜な夜な会いにくるおじさま達。

スナックとは、これまで出会うことのなかった人たちにたくさん出会える場所だった。

お水という仕事を低くみる人もいるけれど、一対一の接客業ってかなり神経使う。誰もができる仕事じゃないってことを実感した体験だった。


自分は社会不適合者という飲み込めない事実

大学を卒業して、会社に就職してそのまま勤め続ける。

この「当たり前の生き方」でやっていけると思ったのに、シャカイジンを始めてみると全然向いていなかった。

レールから外れた列車の行き先なんて誰も教えてくれない。

自分で全ては決めなくてはいけない。自由とは過酷で孤独だった。

しばらくは働きたくない。でも貯金もないので、最低限のアルバイトはしないとならない。

夜だけスナックで働き、たまにスタジオでカメラマンのアシスタントの仕事をして暮らした。

どうして自分はうまくやれなかったんだろうという自責と、もう社畜なんてまっぴら、ゆるく生きていくんだという意地のような切実な願いと、この先どうやって生きていこうという焦燥感と、毎日心が忙しかった。


「わたし、社会不適合者だから。」

今は笑って言えるけど、当時は胸がえぐられる言葉だった。


バーで出会った男の家に転がり込む

シェアハウスで数ヶ月暮らした後、当時付き合っていた男の家に転がり込んだ。

越して来た年のクリスマスに初めて入った高円寺のバーで出会った人で、高円寺のワンルームに住んでいた。

数ヶ月の交際を経て、そこに半同棲的に転がり込んだのだった。

シャカイジンを離脱したわたしが、真っ当に扱われるには普通の結婚をするしかない。  

今では信じられない考えだけど、半ば無意識にそう思い込んでいた。

それに、組織から離脱して、自分で自分の人生を全て決めないといけない環境にほとほと疲れ果てていた。誰かに背負って欲しかった。養って欲しかった。


彼の部屋はルック商店街の近くにあり、よくそこで一緒に買い物や食事をした。阿波踊りも一緒に見た。道端で一緒に猫を眺めた。老夫婦がやっている定食屋でよくご飯も食べた。

スナックで服も髪もタバコ臭くなって朝方帰っても、シングルのお布団でいつも寝ぼけながら抱きしめてくれた。貧しいながらも幸福な時間がそこには流れていた。

そのあと、二人で暮らせる物件に引っ越して、猫好きな彼のために知り合いから猫をもらってきた矢先に、別れを告げられて幸福な時間は幕を下ろす。

思えば初めての同棲だった。長くは続かなかったけれど、弱っちいわたしがちょっと寄りかからせてもらうには十分だったのかもしれない。



高円寺はわたしの一部。

たくさんの感情を垂れ流して受け止めてもらった場所。

新しい生き方をくれた場所。

生涯の悪友と出会えた場所。




正しさだけが全てじゃない、
回り道も横道も楽しいって思わせてくれた。

歩けばそこかしこに思い出。
あのとき、どうしようもなくて放った感情がそこかしこに立ち上る。
それを愛おしく思い返せる街。

きっとずっと、
わたしにとって忘れられない場所。




(半年前に書き始めた下書きを、やっと形にすることが出来ました。)




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