乳がんになった私 #72「100%納得の全摘」
11月15日、待ちに待った手術説明の日。
診察室に入り、私は椅子に座るか座らないかのタイミングですぐに話し始めた。
私「あの、前回、全摘するって決めたじゃないですか。でも、あれから疑問や質問が出てきてしまって…!今日あらためて色々聞いていいですか?」
S先生「はい、もちろん。」
私「99%全摘で心は決まっている上での質問なんですけど…MRIの画像上、がんらしきものがほぼ見えなくなったじゃないですか。でも、画像は100%じゃないから全摘を選択した方がいいということだと思うんですけど、こんなにも画像の結果が良いのに部分切除を選べないんだ、と思えてきてしまって…。見えないがん細胞が残っている可能性があるからってことはもちろん分かってはいるんですけど、じゃあどんな人が部分切除を選択するんだろう、と…。私の場合、元々、がんの位置的に全摘予定だったじゃないですか。そのがんが一度広がってしまって、その後、見えなくなったわけですけど…そういう色んな理由から、やはり全摘なんですかね?」
S先生「うんうん。まず、森さんの場合はもともと3㎝ほどのがんがあって、それが途中、広範囲に広がってしまって、今はほぼ見えなくなってますよね。でも、前回もお見せしましたがほんの少しだけ白く点のように見えるものがありますよね。これは、一番最初にあったがんとは別の場所ですよね。これががんなのかも切除してみないと分からないけど、この箇所だけを部分切除したとすると、元々がん細胞が存在していた場所を無視して残すことになってしまう。それが怖い。残したところに実はがん細胞があったとしても、切り取っていないから病理検査に出せず結果が出ない。それが今後、遠隔転移してしまったら、取り返しがつかないことになってしまいます。」
なるほど、やはりそういうことか。と納得したと同時に、身体にもしがん細胞を残してしまった場合を想像し、そしてそれが転移してしまった場合を想像したら、泣けてきた。
S先生「そして、部分切除を選択する人は、がんの位置的にも部分切除がしやすい腋の近くの方で、例えば元々数センチあったがんが、抗がん剤で小さくなったとして、その場合、元々のがんの大きさの範囲も含めて切除します。つまり元々がんがあったところを残すのは危険なんです。」
納得。100%納得。
私「聞きたいこと全部聞けて納得しました。全摘で!お願いします!」
付き添いで来ていた母も、100%納得していた。
今度こそ全摘に決定したところで、手術の説明を受けた。手術の内容、方法、流れなど。聞いていたら、どんどん実感が湧いてきて緊張した。
説明を全て聞き終えたタイミングで、母が言った。
母「最近、情緒不安定だって言って…ねえ…?」
私「あー、まあね。やっぱ流石に緊張してるのもあるし…!」
S先生「森さんはずっと気を張って頑張ってきて、EC療法の時はがんが大きくなってしまってとても不安だったと思うし、でも抗HER2療法が効いてホッとして気が抜けて、ここまで頑張ってた分、その反動で気分が落ちてるんじゃないですかね。気持ちが沈む時は沈んでいれば良いと思いますよ。」
先生…!!!涙
S先生「手術はもちろん緊張すると思いますが…森さんは寝てるだけで、頑張るのは僕なんで。(ニコッ)」
先生ーーーっ!!!!!涙
主治医がS先生で良かった!私はこれまで何度こう思っただろうか。
診察室を出て、別の部屋に移動し、あらためて看護師さんからも手術についての説明を受け、同意書にサインをし、他に質問はないかと聞かれた。
私は笑顔で、大丈夫です!と言った。
看護師Sさん「森さんはいつ見ても明るくて、ちゃんと弱音を吐ける場所があるのかなあって少し心配して見てたの。」
そう言われ、驚いた。
私「え!!!そう見えてたんですか!…確かに、病院に来るといつも明るく喋ってるかもしれませんね、私。でも、大丈夫です。家ではめちゃめちゃ弱音吐いたり泣いたりもしてます!」
看護師Sさん「そう、それなら大丈夫!」
病院の駐車場で母と別れ、私は車に乗り込んだ。(この日、内田は予定があり付き添いに来れなかった。)
帰り道、ひとりで運転をしながら、今日の先生や看護師さんとのやりとりを振り返っていた。
手術は2週間後。次に病院に行くのは、手術前日の入院日だ。
でもその前に、私は数日後に36歳になる。
(#73へ続く)
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