乳がんになった私 #56「豊田スタジアム-前編-」
9月23日。
【名古屋グランパス VS 北海道コンサドーレ札幌】
グランパスのホーム、豊田スタジアムでの試合。
私の体調はと言うと、案の定、下半身の関節痛がとてもひどかった。手足の痺れもあり、正直なところコンディションは悪い。
豊田スタジアムに到着するまでは、身体の痛みのせいでかなり弱気になっている自分がいた。しかし、ライブ中はきっと大丈夫だ…!となんとか自分を奮い立たせていた。
会場入りし、サポートメンバーやスタッフ、関係者、そして前日にも自宅へ取材に来てくれていたテレビの撮影クルーの方々に会うと、自然とスイッチが入った。弱気な自分はどこかへ行ってしまった。
テレビのディレクターさんに、体調はどうかと尋ねられた。
「実は、めっちゃ身体痛いです!!!朝起きてちょっと不安になったりもしてましたが、でも、ライブ中は気合でいけます。がんばります!」
と、笑顔で答えた。
取材を受けているので、体調に関して嘘はつかない。事実を述べた上で、自分がどんなメンタルで臨むかだ。
イベントのタイムスケジュール上、ライブの前にグッズ販売とサイン会があった。
購入していただいたCDのジャケットにサインを書く。サインの列に並んでくれた方たちから「森さん応援してるから!」「結婚おめでとう!」「このあとライブ楽しみにしてます!」など、色々と声をかけていただいた。とても嬉しかった。
次にサインの順番が来た女性が、私に近付いて話しかけてくれた。
女性「あの…インスタでメッセージを送らせてもらった…」
私「………あ!!!わかります!嬉しい…!来てくれてありがとうございます!」
その方は、私よりも少し後の時期に乳がんだと診断されたという30代の女性で、インスタグラムにメッセージをくれていた。初めての抗がん剤を投与したばかりのタイミングにも関わらず、この日のイベントに会いに来てくれたのだった。
女性は涙ぐみながら話してくれた。
女性「彩乃さんに絶対に会いたいと思って来ました…!いつもありがとうございます。」
私「こちらこそですよ!こうやってお会いできてめちゃくちゃ嬉しいし、パワーをもらえます。ありがとうございます…!」
私も嬉しくて泣いていた。
国立競技場でのライブの時にも、サイン会で、「私も乳がんなんです」と教えてくれた人や「自分の妻も同じ病気で…」と話してくれた人がいた。やはり、なかなか知るきっかけがないだけで、乳がんの人はたくさんいるんだとその時あらためて思った。
そして、「パワーをもらっています」とか「彩乃さんも頑張ってるから私も頑張ります」と言っていただけることがあるのだが、それはお互い様。私だってたくさんのパワーをもらっている。励まされている。
乳がんを公表しなければ、分かち合えなかった気持ちや、出会えなかった人もいたんだと思うと、やっぱり公表して、発信をして良かったと思う。
ライブの前にパワーをもらうことができた。
もちろん体調は悪い!だけど精神で勝つ!
グランパスの試合の前に、まず、私は自分との戦い。
さあ、まもなくライブスタート。
(#57へ続く)
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