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「誕生日のための詩」をはじめます

誕生日のために詩を書き、手紙を添えて、届けます。
まっさらな白紙の前で、あなたが生まれてきた日のこと、ここまで生きてきたことを思い、手紙が届くその日を思うことから始める詩作です。
対価をいただいた上でたったひとりに向けて完全オーダーメイドの詩作をすることは初めてです。
これは私がずっとしたかった「仕事」です。
ふたつのお話をします。

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あなたのための光を宛てる

誕生日はその人の真上にぴかぴかの太陽がやってくるイメージです。
(台紙上部の箔押しデザインの由来です)
一年の中で一日だけ、この日だけは自分のための光を感じられる日。
私にとっては一年の中で一番大事な日です。自分の誕生日も誰かの誕生日もめでたくて大すきです。
昨年8月から今年の1月まで「星渡りの便り」という手紙の企画をしていました。「たったひとりのあなた、たったひとりのわたしを感じ直すための試み」として毎月約100通ほどの手紙を出しまくってわかったことは、ひとりに向けて宛てるということが私にとって(きっとあなたにとっても、だからそう、今の私たちにとって)何にも代え難いものだということです。
詩集の制作を続けてゆく傍らでこれからも手紙を書いてゆきたい。
これらの思いから手紙の形式で詩を届けることを選びました。

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人が死なないために働きたい

「誕生日の自殺、普段の1.5倍 孤独感などのストレス増か」
この見出しが書かれた2016年6月の新聞記事を切り抜いて持っています。
衝撃的でした。自分が一年に一度盛大に浮かれている、誰しも浮かれて然るべき日だと思っていた誕生日への感じ方が大きく変わりました。「そういう人もいるんだ」では済ますことができない何かを5年間ずっと持ち続けています。
持ち続けているだけで自分にできることがあるとは思えなかったし、何に悲しんで何に焦っているかもうまく説明できないままです。忘れてはいけないと思ったということだけが自分にとってのほんとうでした。

「星渡りの便り」の最後の手紙の中で私はしたい仕事を見つけたということを書きました。
「人が死なないために働きたい」
これが今の私の仕事の動機です。

私は子どもの頃からなりたい職業がなくて「将来の夢」というものを具体的に持ったことがないです。そんなことについて真剣に悩んでいた十年前にもらった言葉「何にもならなくていいよ。池田彩乃という職業でいいじゃない」、その言葉ひとつで何者にもならないことに大きな恐れを持たずにいられた。でもこの冬は十年前と同じくらい深く深く自分の在り方について考えていました。書くことは仕事と言われても趣味と言われてもほんとうはどっちでもよくて。なぜならこれは死ぬまで続く自分の生かし方だから。池田彩乃で在り続けることに加えて今、私は人が死なないために働きたいと思い始めました。
人が自ら死んでしまわないようにどうしたらいいか。それを考えることもまた自分を生かすということ。私が30代を自分の手当てに使うと宣誓したことと、今打ち明けていることも地続きの関係にあるはず。
(中略)
私は私を生かしながら、人が死なないために働きたい。まだできることがある。できないことを数えてもまだ諦めきれないのは私がここにいるから、あなたがそこにいるから。

(「星渡りの便り 2021年1月」収録 「最後の手紙」より抜粋)

自死という生き方を否定するために誕生日を祝いたいわけではないです。
誕生日に手紙が届くこと、それだけで変わる何かがあるとも思っていません。
こうした思い入れがある限り自分にとって重たい仕事になることは始める前からわかっているけれど、それでもここで生きている間にしかできない仕事として、私はあなたへ手紙を書きたい。

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おわりに


大きすぎる思い入れはありますが、いろんな人の誕生日を祝えることがものすごーくたのしみです!どんな詩が書けるだろう。
今後は台紙デザインのバリエーションを増やしたり、箔の色も選べるようにしようと考え中です。長く続けてゆきたいので流動的に変わってゆこうと思います。

あなたの大事な日をお祝いさせてください。
よろしくお願いいたします。


「誕生日のための詩」に届いた言葉たち

追記:
ツイッター上でいただいた言葉たちをまとめました。
またご依頼してくださった方にお願いしているアンケートもまとまり次第公開します。

よくあるお問い合わせへの回答と祝うことに就いて一年経った今思うこと

「おめでとうの詩」をはじめました

誕生日以外でもこの星で起こるいろんなお祝いへ言祝ぎます。


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