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趣味との付き合い方を考える「趣味で腹いっぱい」山崎ナオコーラ

山崎ナオコーラさんの「趣味で腹いっぱい」を読みました。自分は多趣味で、今まで本当に多くの時間を趣味に費やしてきました(主にゲーム。先日の「あなたのPlayStation®2020」 でもよく遊んだな…という時間が出てびっくりでした)。キャリアチェンジに向けて勉強中の身の私。今後、趣味とどう向き合うのか教えてほしい、縋るような思いで手に取った本が「趣味で腹いっぱい」です。

「趣味で腹いっぱい」。理想的な生活ですよね。自分の好きなことをしているだけで生活できたら…誰しもが一度は考えることなのではないでしょうか。その一方で、「趣味がない、仕事以外何をしたらいいのかわからない」という方もいる。

私は圧倒的に前者なんですが、キャリアチェンジするにあたって、「趣味」の優先順位のつけ方や、本質的な意義なんかを考えてしまっていました。趣味を楽しみたいんだけど、ほかのこともしたい。そんな自分にある種の道しるべを示してくれた、この作品を皆さんに紹介します。

価値観に”風穴”を空ける出会い

上を目指さないから、趣味は素敵――絵手紙、家庭菜園、小説……と結婚後趣味に興じる鞠子。仕事一筋の銀行員・小太郎も次第にその世界に惹かれるが!? 矢部太郎(カラテカ)さん絶賛!
https://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309027784/

こちら、出版元の河出書房新社さんのHPからあらすじの引用。ぱっとこちらを読む所、違う価値観を持った二人が結婚することによって、「仕事人間が好きなことをして生きる魅力を知る」のようなテーマを推測できるかなと思います。

主人公である小太郎はたしかに「仕事」への考え方を改め、「趣味」によって自分の感情が豊かになったり、「働かざるもの食うべからず」という考えを改めたりするので、推測は間違ではありません。しかし、読み終えたあとに気づく本作の魅力は、上を目指さず、自分が好きなことだけしてきた鞠子の変化にもあります。

鞠子の変化については割愛するのですが、この正反対の二人の変化や気づきこそが、「趣味」との付き合い方や「生き方」を模索している私のすべてを肯定してくれている気がしました。

「自立」じゃなくて「他立」が美しい

主人公の奥さんの鞠子は、大学院卒業後、アルバイトで最低限必要なお金を稼いで生活を営み、結婚後も主婦を希望し、アルバイトをしながら小太郎に全力で寄りかかり「他力本願」な生活をします。

他力という言葉は、「他力本願」など他人の力をあてにするという意味合いで使われることが多いですよね。私も、ついさっきまでそう思っていました。

このブログを書く上で、他力について調べてみた所、現在使われている「他力本願」の意味合いは誤用のよう。もとは仏教の言葉で、広辞苑では「他人の助力。仏・菩薩の加護の力を指す。浄土門において阿弥陀仏の本願の力をいう。」と定義されています。

要するに、自らの力のみは願いは叶わないので、他人(仏)の助力のはたらきに身を任せなさいという言葉らしい。自立を重んじる現代社会に変遷していく間に、意味も転じたのでしょうね。

知らず知らずにいろんな人の他力が、どこかの誰かに作用している。自身では「当たり前」のことをしているつもりが、思わぬ所で感謝されたりすること、ありませんか?そういう積み重ねが自分の世界を作っているんだなぁということを、小太郎と鞠子の他立の形を見ていて思い出しました。

この読書感想文だって、誰も読まないかもしれない。でも、こうやって形にしておくことで、いつか誰かが同じように悩んだときに、道しるべにだってなる。そう考えるだけでいくらでも暖かい気持ちになれそうですね。

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