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【デビュー作】20日ぶり35回目 #仮面おゆうぎ会【私やで!】

いや〜〜〜〜〜楽しかった!楽しかったですね!

坂るいすさんが企画された『仮面おゆうぎ会』!

(以下引用)

だいたい、noteの記事のスキの数って、アカウントの大きさとか、誰が書いたか、とかに依存する部分が大きいじゃないですか。

だから、今回はそれを見えなくして、誰が書いたかわからない状態で、「文章のみ」をこのアカウントに投稿していくという、そういう実験みたいなことをしてみようと思ったわけです。

素晴らしい。各々がスキルとテクニックを駆使し、文章のみで勝負する心意気ある企画。noteのスキ文化にある種の疑問を投げかけるような最高にロックな内容に心が震えた。これは応援したい。読者として。最初は本当にそう思っていたのだ。思っていたのだ。

私は、小説を書いたことがない。

一度たりともない。詩も書いたことがない。正直私には文章力がない。ノリと勢いとちょっとの勇気だけでなんとか記事を残してきた人間だ。そんな私が小説など、書けるわけもない。いくら素晴らしい企画に賛同したからと言って、参加できるはずがない。そんなそんな。いやまさか、そんなそん

スクリーンショット 2021-05-30 8.12.38

書いていた。

持ち前のノリと勢いとちょっとの勇気発揮しちゃってた。
どのくらいノリと勢いだったかというと、この小説、スマートフォンのメモ帳で書きはじめている。
私はパソコンでしか文章を書けないのに、だ。
一度だってスマートフォンで記事を書いたことなんかないのに、だ。

お分かりだろう。本当に完全にスーパーイリュージョン勢いだった。思いつきだった。見切り発車と言っても良い。

なんかよくわからない使命感のみがそこにあった。
『まさかのちこが「#仮面おゆうぎ会」に参加するなんて!嘘〜〜!!!』その声が聞きたかった。

はじめは、「成れの果て」というタイトルで妄想女が妄想に取り憑かれて狂ってしまう物語を書こうとしてた。

わかる。皆さんが言いたいこと全部わかってる。出ちゃってる。のちこがはみ出しちゃってる。

「はみのち」だ。ブルマの影から顔を出すパンツと大体一緒。「や〜〜い!のちこはみパンしてる〜」小学3年生、同じクラスの田中くんが私をからかう声が聞こえる。そう、はみってる。完全にはみってしまっている。「はみのち」しちゃってる。

いや、どうだろう。「妄想の達人」と呼ばれはじめて久しい私。妄想女の話だなんて、はみだしてるどころか完全に全裸猛ダッシュで突っ込んでいるようなもんじゃないか。そんなもん「はみのち」だなんて生やさしいもんではない。「モロのち」、そう「モロのち」でしかない。全裸「モロのち」誰も求めてない。

のちこ通常営業、ひたすらに個性ほとばしらせてしまっている。よくない。それはよくない。この企画に賛同しながらもぶっ壊しにいくスタイル、全然よくない。

「仮面をかぶるのよ、のち」心の月影先生が言う。
「あたし、小説が書きたいんです!」
女優……じゃなくて、作家北島のちはこうして生まれた。

とそんなこんながあって書いたのが、この「20日ぶり35回目」である。

※上記記事は6月6日に見られなくなります。
※以下より小説が1,000文字ほど続きます。記事は小説後にも続くため、のちこの小説に興味ない方はするりとスキップスキップ〜〜!

小説「20日ぶり35回目」

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「結婚しよう」

たぁくんのクリっとした目に、光るものがあった。私の手を握り、今度は少し背筋を伸ばして噛み締めるようゆっくりと言う。

「結婚、しよう」

ここは私の部屋で、たぁくんと私はミルクたっぷりのコーヒーを飲みはじめたばかりだった。

ああ、またか……。そう思った瞬間、目の前の恋人の姿は突然解像度が低くなり輪郭を失いはじめる。
ビリビリ、ジジジ。
音を立ててゆらりと歪み、そして消えた。

今年で12回目。正確には20日ぶり35回目となる。

何故だかわからないが、私の恋人は、消える。
今回はそこそこ続いたと思ったのに、またも私の恋人は幸せの絶頂で消失した。

机の上のスケジュール帳を引き寄せる。このスケジュール帳は、去年の11月、20人目の恋人コイズミと渋谷のLOFTに行った時に購入した。表紙の猫の絵がお気に入りで、欠伸をする間抜けヅラがちょっとだけコイズミに似ている。あの日コイズミは2人で住む家へと帰る電車の中、手を繋いだ瞬間に消えた。多摩川の先に見える窓越しの夕陽が綺麗で、コイズミとならずっと一緒にいられるような気がしたんだけど。

スマートフォンで今日の日付を確認し、スケジュール帳のマンスリーページを開く。5月15日の欄に「たぁくん サヨナラ」と書いた。

それだけ見ると多少感傷的な一文のようだが、35回目ともなると実験記録のようなものとそう変わらない。ログを残すためだけのメモ。もはや記録更新を目指しているのではないかとすら思う。こんな記録、毎回世界初で世界新記録なんだろうけど。

私の恋人は、消える。
それも幸せの絶頂の中で、消える。
もう5年も前からそういう仕様なのだ。最近はどんどん頻度が上がってきている。

口のつけられていない2つのコーヒーカップを流しに置いた。コーヒーカップはまだあたたかく、うっすらと湯気が出ていた。ふいにたぁくんの体温が人よりも高かったことを思い出してしゃがみ込む。

ひとりぼっちだ。

涙も出ない。でももう立っているだけの元気は私になかった。膝を抱えて目を閉じる。私はもうずっと、ひとりぼっちだ。
誰が私を愛そうとも、孤独が癒えることはない。幸せだと思った瞬間に、世界が崩壊する。恋人が消える。

……本当にそうなの。

たぁくんが私に問いかける。いや違うまっつんか。あれは3回前の元カレまっつんだ。私は彼のうなじが汚くてすきだった。

……僕が消えたんじゃなくて、君が……。

ビリビリ、ジジジ。
君が、何。教えてよ。誰だっていいから、ちゃんと言ってよ。私の叫びに呼応するように、ノイズが大きくなる。

ビリビリ、ジジジ。
まっつんの声も消えた。

どれくらいの時が経っただろう。なんだかこのうずくまる姿勢も悪くないような気がしてきた。どうだっていい。幸せは見えた瞬間に消える。いつもそうだった。本当にそうか。幸せって見えたり見えなかったりするものなんだっけ。本当に。いやいや、どうでもいいや。幸せは見えた瞬間に消える。私の人生はそういうものなのだ。さっきまでの絶望感が薄らいで、居心地がよくなってきたような気すらしてきた。

コーヒーカップを洗わなきゃ。立ち上がり流しをのぞく。コーヒーカップがひとつ。もうあたたかくない真っ黒い液体を排水溝に流した。

カチャ。
寝室のドアが開いた。

「こうちゃん、おはよう」

36回目が始まった。

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食い気味だった

正直なことを言う。書いたには書いたが、企画に参加するかについてはめちゃくちゃ迷った。小説についてはズブの素人。私なんぞが参加すること自体もおこがましいのではないか。なにより全然「書けた」という気がしなかった。ノリと勢いとちょっとの勇気、完全に萎んでしまった。

そこで、敬愛する涼雨零音さんに相談することにした。

「小説、書いたには書いたんですけど、仮面おゆうぎ会に出そうか迷ってt「『のちこ』が出したら絶対おもしろいじゃん!出しなよ!」

食い気味だった。

「いやでも私のは誰かの模倣でしかないし、ちゃんと小説になってるかもわからn「おもしろいって!出そう!みんなの予想を翻弄しよう」

涼雨零音、完全に面白がっていた。
ダークホースのちこを期待しまくってた。悪い男だ。

※感謝してます(あと実際はもっと優しかったです)

ノリと勢いとちょっとの勇気女、その場で提出した。

誰か、気付いて……

提出して、数日が経った。Twitterやnoteでは予想合戦が繰り広げられていた。「○○は××さんじゃない?」「いや、△△さんかも」楽しそうだった。すごく楽しそうだった。

でもそこにのちこの名前が出てくることはなかった。一度もなかった。

当然だ。のちこには小説のイメージが全くない。むしろそのほうがネタバラシの時の面白さが増すからいい。いいはずなのに、

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気付いて、誰か、気付いて……

想像以上の寂しさだった。せめて一緒に予想合戦をしてキャッキャしたかった。でもいつもから小説界隈にいない私、変にキャッキャするとエントリーしてることがバレてしまう。でもはみ出したい。ちょっとくらいはみのちさせて欲しい。このままでは大声でモロのちしてしまいそうだ。押し寄せるジレンマ。孤独感。苦悩の日々であった。

はじめてのコメント

それでも、自分の作品に対してぽつり、ぽつりと感想をいただくことがあった。処女作、はじめてコメントをくれたのは、マリナ油森さんだった。

嬉しかった。飛び上がるほど嬉しかった。
私が小説に込めたメッセージが誰かに伝わるということは、これほどの興奮が伴うことなのか。記事を書いたときとはまた違う感覚。感動した。何度でも言おう。嬉しくて嬉しくてたまらなかった。

他にも多くの感想をいただいた。私がただ小説をあげるだけではこんなにもたくさん感想をいただくことはなかっただろう。一部を紹介したい。

※もしツイートの掲載に問題がある場合はお声がけください。

amazing〜〜〜!やった〜〜〜!!!海外のミステリ映画をイメージして書いていたので、嬉しいです。

まっつんの声は、読者に想像して欲しい場所だったので、ここに言及いただいたのはめちゃくちゃ嬉しかったです!そして鋭い、鋭すぎる。
ちなみにまっつんの声を含め、消える恋人たちには私の中で意味があるのですが、解釈はすべて読者の方のものなので、こうして言及してくださること自体私は幸せでした。

ぎゃ〜〜〜〜〜〜鋭すぎる!怖い怖い!!!文学作品を読まれる方は読みが深くて驚かされます。

実は裏設定として、「コイズミ」のことを主人公は本当に愛していたんですね。証拠に冒頭のたぁくんは『プロポーズの瞬間』に消えますが、コイズミは何気ない日常のなかで消えてしまいます。そんな心から愛したコイズミの愛をも、彼女は正面から受け入れられなかった。

と、自分がほくそ笑みながらニヤニヤ書いていた一文が、拾い上げられると快感すら覚えますね。感想をいただいた皆さん、ありがとうございました!!!

推し記事及び作者予想

この記事を書いているのは、5月30日。結果発表前である。そのためずっとやりたかった感想をば書かせていただきたい。
作者予想は正直わからなかったので、?が多し。

作者予想:?

『家路、川に映るかげはひとり。みたされぬまま今日もひとり。』
この最後の一文になんとも言えない哀しさと美しさが詰まっている。詩のように、一文一文が心を突き刺すインパクトを持つ。

作者予想:マリナ油森さん

パーフェクトなあの人の少しのほころびを見つけてしまったとき、秘密を共有してしまったような甘やかな独占欲に心ざわついてしまう。明日私の日常にも起きてしまいそうな、そんなシーンを細やかな心理描写で表現されている大人の作品でした。

作者予想:たけのこさん

うわ〜〜面白すぎる、面白すぎて、続け様に3回読んだ。最後にやってくる衝撃がたまらない。この感覚はたけのこさん、たけのこさんの作品のはずだ!

作者予想:涼雨零音さん

不思議な会話劇、掛け合いの絶妙な噛み合わなさ、「キレちゃダメだ。キレちゃダメだ。キレちゃダメだ」。コメディであり、ミステリであり、エヴァンゲリヲン。夕顔もそうなんですけど、冒頭のカエルを交通事故として処理しろと言う輩もなかなかあれなので、おそらく街全体が不思議空間。このシリーズもっと書いて欲しい。

作者予想:?

涙が出た。泣いたのは全作品中、この作品だけだ。ボロボロと泣いた。読んでいる間、すべての情景が目の前にぱっと現れて、蛍の光だけを残して今も私の心に残り続けている。どうか読んで欲しい。そしてどうか、この作品がどこかで掲載されることを願っている。

作者予想:逆佐亭裕らくさん

タイトルだけで誰が書いたかがわかってしまった。逆にこれが師匠でなかったら、師匠を模倣した天才だと思う。チャーミングでどこかあたたかい。何かに夢中になったことがある人ならば、きっと古い思い出にトリップしてしまうだろう。

作者予想:?

一瞬を「スローモーション」のように描ける天才だと思った。どの時代になろうとも、人間の心も柔らかさも、愛おしさも変わらない。この作品はまごうことなき人間讃歌。この流れで最後の1文書けるのすごいよ!大好きです!

坂るいすさんへ

素晴らしい企画を本当にありがとうございました。
細かいところまで行き届いた心遣いと、企画を成功させようと尽力されていた様子に、心から感謝の気持ちでいっぱいです。

この企画がなければ、私は小説を書くことはなかったでしょう。

アウトプットとして出来上がったものは稚拙でゆるいものではありましたが、小説を書いて、多くの方に読んでいただいた体験はこれからの私が「書く時の心構え」に大きく影響すると思います。それほどに、刺激的で貴重な時間を過ごせました。


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おや、インターフォンが鳴りました。誰か来たようです。

「わあ、カイくん、おかえり!」

128回目が始まった。

いただいたサポートは、妄想に使います。