よい文章を書く 〜中級編①〜
編集とは、すでに書かれた文章を「読む人のために整える作業」。
前回は主に「一つの文をどう書くか」について考えていることを書きました。
今回もCRALINETの「よい文章を書くには」から引用します。
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/clarinet/002/003/002/010.htm
中級
6.接続詞を適切に使う。
7.主語と述語を照応させる。
8.係る言葉は受ける言葉の近くに置く。
9.体言止や、…や‐‐を使いすぎない。
10.漢字を適正に使う。漢語は交ぜ書きしない(例「じゅく語」など)。ただし、平仮名で書く言葉にまで使わない。
11.一つの段落では一つのことを述べる。
文法用語のおさらい
「初級」に比べると文法用語が多く出てきました。おさらいです。
接続詞:語と語、節と節、文と文の関係を明らかにすることば。
主語:述語の主体。
述語:動詞、形容詞、名詞を用いて動作・状態・性質などを叙述することば。
係る言葉、受ける言葉:先行する語句が、後続の語句に文脈上つながっているとき、先行する語句を「係る言葉」後続する語句を「受ける言葉」という。
体言止:和歌や俳句をはじめ、文末を体言(名詞、代名詞)で終えること。
接続詞を適切に使う
①黒もしくは青の靴下を履くこと。(語と語)
②行くのか、それとも行かないのか、返事をください。(節と節)
③公園に行った。すると、彼もまもなく現れた。(文と文)
太字部分が接続詞です。
学校文法とは異なり、日本語教育では「と」「から」といった接続助詞や「そうすると」「いってみれば」といった複数の語からなる表現も含めて接続表現として扱われます。
順接、逆接など機能面での使用方法はそれほど難しくありません。ここでは「適切に使う」の意味について私なりの考えを記します。
①〜③の太字部分を削ってみます。
④黒、青の靴下を履くこと。
⑤行くのか、行かないのか、返事をください。
⑥公園に行った。彼もまもなく現れた。
読点(、)や中点(・)の使い方はさておき、①と比べ④は意味がぼやけてしまったように感じます。
①では、許されているのは「黒もしくは青」の2色だと明確にわかります。一方④でもわかりますが、もしかしたら「黒と青2色使いの靴下」かもしれません。バイカラーはだめだと伝えたいのなら「黒もしくは青」とした方がよいでしょう(無地とか単色といった語句を加えるともっと明確になりますね)。
他方、②と⑤および③と⑥は同じ意味です。太字はなくてもいいということ。書き言葉の場合「あってもいいけどなくても通じる」ことばは優先的に削りましょう。伝えたい部分を目立たせるためです。
「適正に」とは「必要最小限」と私は解釈しています。
主語と述語を照応させる
主語は述語の主体です。ところが、述語の主体が何かわからなくなってしまうことがあります。
○○焼き壺湯 この焼き物は遠赤外線を多量に放ち、なおかつ「育成光線」と呼ばれる特殊な長波を放射していることによって、細胞を活性化させ人体にとって有効な光線であると実証されています。(引用者が一部改変)
とある温浴施設で見かけた能書きです。主語は「この焼き物」のようです。
述語はどうでしょうか。「放ち」「放射している」「活性化させ」「実証されています」と四つも出てきます。
「この焼きもの」を主語にして確認します。
○この焼き物は遠赤外線を多量に放つ。
○この焼き物は…放射している。
×この焼き物は細胞を活性化させる。
×この焼き物は…光線であると実証されている。
後半二つの主語は「育成光線」ですね。「この焼き物」の話をしていたのにいつの間にか「育成光線」の話に変わってしまいました。
述語が二つ以上ある文を複文といいます。
雨が降ってきたので家に帰った。
そのうち節同士が対等・並列である場合は重文と呼ぶことがあります。
風が強くなり、雨も降ってきた。
今回の文は述語が四つ。文章を詳しくしたりつなげたりしているうちに主語と述語が照応しなくなってしまったのでしょう。
1人で書いているとあまりこういうことは起きません。私の経験上、編集者や監修者など複数の人がかかわっている場合に起きます。「あれも入れたい」「もっと正確に伝えたい」と語句がどんどん追加され、文章が引き伸ばされてしまうのです。
編集や監修がなくても、大きな会社の公式サイトに書く場合もそうです。組織が大きくなればなるほど文章をチェックする人数が増え、あれもこれも盛り込みたがる人が現れやすくなります。
主語と述語を正しく組み合わせるには、一文を短くする。これに尽きます。語句を追加したがる人には「これじゃ意味が通らなくなります」と毅然とした態度で断ってください。執筆担当者は、追加要望の出た語句を使い別の短文を書くのです。仕事が増えますね……。
長くなったのでまとめ
中級の項目を全部達成できたら、かなりわかりやすい文章を書けるようになります。なので8番以降はまた別の原稿で書くことにします。
接続表現は必要最小限に抑える。
主語と述語を正しく組み合わせる。
文章を長くしたがる人の要求は毅然として断る。
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