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面と向かってあなたの事が嫌いと言われた話

友人と「専門大学を出た人」の話をしていたら、ふと30歳の時に働いていたコールセンターのパート仲間の川野さんの事を思い出しました。この川野さん、私と同い年(当時30歳)で独身、某分野の専門大学を卒業して、フリーターを経て派遣社員となり、私と同じコールセンターで働いていました。(氷河期世代ではこんな感じの人は多いです)

川野さんの見た目は、色白の少しぽっちゃり、服装は軽いロマンティック系、顔は笑うととても可愛らしくて男性にはモテるのではないかと思いましたが、、、彼女はなぜかとても暗く、あまり人前では笑いませんでした。

私の友人で、見た目が川野さんに似た子がいますがとてもモテました。どうしたらそんなにモテルのかと言うほどモテたので、逆に川野さんとの違いはなんだろう?と思うようになり、私は勝手に川野さんに興味をもってしまったのです。(いつもながら不謹慎ですみません)

大きな会社のコールセンターだったので食堂があり、よくそこで休憩時間はパート仲間と話をしました。私は勤め始めてから数週間程は、借りてきた猫のように大人しく、淡々と仕事をこなしていましたが、だんだんと素が出るようになり、そのうち休憩中はドッカンドッカンと話に花を咲かせるようになりました。

私は女子高出身なので、女同士の居心地の良さを好むんですよね。
だからあまり笑わない川野さんに対しても、

「川野さーん、今日もワンピースかわいいですね」

「そう?」

「川野さーん、パーマかけました?」

「くせ毛だよ」

「川野さーん、週末もディズニー行ったんですか?」

「なんか文句ある?」

川野さんめっちゃ塩対応www

それでも私、なんだか頑張っちゃって、色々と川野さんからプライベートの話なんかを根掘り葉掘り引き出したんですよ。詳しい事は書きませんが、結構よく喋っていたと思います。


勤め始めて2年程経ったある日、川野さんが退職する事になりました。私も2人目の子を妊娠し、数ヶ月後にやめる事が決まっていたのですが、川野さんはそれよりも前に辞める事を決めました。

最後の日に、川野さんが私の所に饅頭を配りに来たので、私は言いました。

「同い年の川野さんと仲良くなれて楽しかったです。地元に帰っても元気でいて下さいね」

すると川野さんは、いつもの抑揚の無い口調で、

「実は私、高島さんのことはずっと嫌いだったんだよね。私がこれまでに会った事のないタイプだったし、絶対に合わないと思ってた。だけど、高島さんって凄くしつこくて、なんでこんなに私の事色々聞いてくるんだと思ってたけど、あまりのしつこさに、なんか私もペラペラと自分のこと喋ってたわ」

「そんな気も知らず、、、図々しくてすみませんでした。ついつい同い年だからか親近感湧いちゃって」

「親近感ね。私は高島さんに対して、湧いた事は無かったけどね」

「川野さんて本当塩対応w」

「親近感は湧かなかったけど、今回実家に帰ることを決めたのは、高島さんの存在があるんだよね」

「そ、そんなに私のこと、、、」

「同い年の高島さんが、今度2人目が生まれるって聞いて、私何やってんだろうって思っちゃったんだよね。親に高い学費払って貰って東京の専門大出ても、結局何者にもなれなくて、フリーターやって、今は派遣社員で、週末はディズニー行って、、、なんだか地に足着いてないなって思っちゃったの」

「は、はぁ」

「だからさ、ひとまず実家帰って、親に心配かけさせないように、お見合いとかしてみようかなとか思ったんだよね。同い年の高島さん見てたら、ここら辺で方向変えた方がいいかなとか、思っちゃったんだよね」

「そ、そうなんですか、、、」

「そう。だからある意味高島さんには、ちょっと感謝してるんだよね」

「いつもしつこくイジってすみませんでした」

「ほんとしつこかったよね」

「川野さん笑ったらかわいいんで、実家帰って落ち着いたら沢山笑って下さいね!」

「ありがと」

「あと、毎回言ってますが、ワンピースに茶色のローファーは合わないので、そこだけは気をつけて下さいね!」

「相変わらずうるさいよね」

「すみません!これが私なんで」

「高島さんも元気な赤ちゃん産んでね」

「はい!川野さんもお元気で」



これが私が面と向かって嫌いと言われた話です。嫌いと言われたにも関わらず、なんだかちょっと嬉しかったのでよく覚えてます。自分の存在が、人生を変えるきっかけになったと言われたのは初めてでしたので。

川野さんが今頃、幸せな47歳でいてくれますように。



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