依頼

別居から半月を過ぎた頃
私は住所の変更や子供の転園などの手続きで
あちこち車を走らせていた

転出届は後々夫に行き先がバレない様に
転居先を全く関係の無い場所にした

転入届時には
配偶者暴力相談支援センターで発行した
DV証明書を提出して
住所秘匿にする支援措置を受けた

これで夫は私がどこに住んでいるのか分からない

娘の幼稚園は夫の在職証明が用意出来ない為
別居状況を説明する必要があったが
ひとり親と同等の扱いで手続き出来た

1番厄介だったのは児童手当だった
DV証明書では手続き出来ず
必要なのは
離婚協議中である旨の証明

まだ離婚協議どころか
別居したばかりの私には
調停調書や申立書などは手元に無かった

「とりあえず 離婚 の文言と弁護士さんのハンコがある書類があれば手続き出来るから!」

そう言って必要書類を渡してくれた窓口の職員さんも
離婚へと背中を押してくれている様に感じた


弁護士さんのハンコ…
知り合いに弁護士さんなんて居ないし
お世話になった事もない

もらった弁護士相談のパンフレットや
インターネットで法テラスの存在を知り
無料相談の予約を2件取った


1週間後

1件目の弁護士さんは若手の方で
離婚協議について知識の無い私に
離婚までの手順や
相手から取れるお金の話をしてくれた

とてもわかりやすかったが
せっかちな印象で
即日依頼するのか決めて欲しい様子に
何だか合わないなと感じて断った


2件目の弁護士さんも同じく離婚までの手順を話してくれたが
とても優しくお話してくれる方で
安心感もあったが、夫を相手にするには頼り無い印象もあった

「どの弁護士に依頼しても、やる事は同じだから。信頼出来る人にお願いしなさいね。もちろん私になった時は、全力でやらせてもらいますから。」

信頼出来る人
そんな方に出会えるだろうか
法テラスの無料相談を利用出来るのは
残り1回である

そこから数日色々なサイトを漁り
ひたすら弁護士さんのプロフィールを読んだ

ようやく見付けた気になる弁護士さんは
開設して間もない個人弁護士事務所にいた


これが無料相談のラストチャンス
私は短い相談時間で出来る限りの情報を伝える為に
結婚から別居に至るまでの年表を作成した

夫とのLINEの履歴を何度も読み返し
Twitterや日記等の証拠になる部分を抜き出した

その作業は非常にメンタルに負担がかかる
嫌だった事や辛かった事も思い出して文字に起こす
吐き気が止まらずトイレにこもったりもした

書ききればもう思い出す必要無くなると信じて
3日かけて作成した


そしていよいよラストチャンスの相談の日

緊張しながら通された個室で
私は持参した証拠品を何度も確認した

扉から見えたのは
ふわふわのロングスカートにショートヘアの女性弁護士さん

挨拶を済ませて
アンケートと証拠品を渡して読んでもらう

「お子さんいらっしゃるんですね。様子は、大丈夫でしょうか?」

1番最初に子供の心配をしてくれたのは
この方が初めてだった
一瞬でこの弁護士さんにお願いしたいと思った

その後も私のペースに合わせて話を聞いてくれた

間もなく終了の時間という所で
私は是非依頼したいと申し出ていた



私は沢山の方の後押しで
離婚に向けて本格的に動き始めた


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