菖蒲 亨(あやめ とおる)

あやめエージェントグループ®代表/一般社団法人自分史活用推進協議会代表理事/『自分史2…

菖蒲 亨(あやめ とおる)

あやめエージェントグループ®代表/一般社団法人自分史活用推進協議会代表理事/『自分史2.0 ~ これからを楽しむための活用マニュアル ~』(幻冬舎ルネッサンス新書)上梓/ターニングポイントノート®、ビビッとカード®考案/

最近の記事

『彼は早稲田で死んだ 大学構内リンチ殺人事件の永遠』 樋田毅 文藝春秋

 1972年11月8日の夜、早稲田大学文学部構内の自治会室で第一文学部二年の学生が革マル派に殺されたという事実に挑んだ、当時同大学同学部で被害者の一年後輩であった著者によるリベンジ自分史。事件の真相を突き止め、闘いの意味を世に問う本を書かずにおくものかという元朝日新聞記者の執念。執念は自分史の原動力となる。  第53回大宅壮一ノンフィクション賞受賞。  印刷は萩原印刷さん。社長の萩原誠さんはお互いに自分史活用アドバイザーとして私とご交誼いただいた。  早稲田大学において革マ

    • #あなたの本棚のかたつむり

      河出書房の河出岩夫さんがFacebookに #あなたの本棚のかたつむり で投稿されていたので私も。 か 『からくりからくさ』(梨木香歩) た 『太郎物語 高校編』(曾野綾子) つ 『つかこうへい正伝』(長谷川康夫) む 『むすんでひらいて』(小松シキ) り 『りかさん』(梨木香歩) 小説3冊、評伝・自分史で2冊。 南部煎餅屋のおばあさんの自分史『むすんでひらいて』(二十年間で八版も重ねていた!)以外はなぜか全部新潮文庫、新潮社刊。 このお題は「かたつむり」だけれど、そうい

      • 『同志少女よ、敵を撃て』 逢坂冬馬 早川書房

         第二次世界大戦における独ソ戦線を戦った、ソ連赤軍女性狙撃手の話。モスクワ陥落寸前までいったソ連が、ナチスドイツを追い込み、勝利する。その後の極東日本への転戦の話も出てくるし、ハリコフなどの地名も出てきて、また時代考証や文化考証、戦史関係の記述の正確性などについて、専門家の方々の監修と協力、助言をいただいたそうなので、現在進行形のウクライナロシア戦争の背景を知るのに、参考にもなる。  読もうかなとアガサ好きの家内に言ったら、貸してくれた。  装画。いいね。

        • 『野生のアイリス』 ルイーズ・グリュック KADOKAWA

           2020年にノーベル文学賞を受賞したルイーズ・グリュックの六冊目の詩集。1992年に出版されたもので、翌年にピュリッツァー賞を受賞した。  Wikiによれば「ノーベル文学賞はその作家の作品、活動の全体に対して与えられるものであって、一つの作品に対して与えられるものではない」とのことであるが、「特に代表的な作品や選考の上で評価された重要な作品などの名前が賞記に記されることもある」ことによるのだろうか、私は『野生のアイリス』の題名を目にし、アメリカから英文の詩集を取り寄せた。

        『彼は早稲田で死んだ 大学構内リンチ殺人事件の永遠』 樋田毅 文藝春秋

          『敗戦は罪なのか オランダ判事レーリンクの東京裁判日記』 三井美奈 産経新聞出版

           第二次世界大戦中、本土をナチス・ドイツに、アジアの植民地を日本に占領された、日本はナチスと結託した「敵」でしかなかったオランダの、極東国際軍事裁判(東京裁判)代表判事ベルト・レーリンクは、その東京裁判で、インド判事ラダビノド・パルらとともに、多数派による「有罪」判決に対抗し、独自意見を出した。  本著はレーリンクが約二年九カ月の東京滞在でつづった日記と、オランダに残していた妻などへの約七十通の書簡とで、その間にレーリンクに起きた変化を描き出している。  東京裁判からほぼ

          『敗戦は罪なのか オランダ判事レーリンクの東京裁判日記』 三井美奈 産経新聞出版

          『ドストエフスキー 黒い言葉』 亀山郁夫 集英社新書

           タイトルの、「黒い言葉」という言葉に誘われて購入した。  序に、「豊饒の「黒」」とある。 「黒」は、なんと魅力的なんだろう。  別の「黒」だが、『赤と黒』なんていうのもあった。  ドストエフスキーもスタンダールも、その読解なんて、とうに忘れた世界だけれども。  この本は、ドストエフスキー作品の中の言葉から、それらの訳者でもある亀山氏が、現代人にとって魅力的と思われる言葉を抜き出し、解説を加えたものという。  昨年2021年が、ドストエフスキー生誕200年だった、その言

          『ドストエフスキー 黒い言葉』 亀山郁夫 集英社新書

          『考えて、考えて、考える』 丹羽宇一郎 藤井聡太 講談社

           1939年愛知県名古屋市生まれ、伊藤忠商事株式会社社長、会長を経て、民間出身では初の駐中国大使に就任などした丹羽宇一郎氏と2002年愛知県瀬戸市生まれ、現四冠の将棋棋士藤井聡太氏の対談本。  藤井聡太四冠の頭の中が知りたくて購入した。  題名は『考えて、考えて、考える』だが、その考える手順がまず重要だ。 そして次に質だ。  言われてみると私も同じようにやっているはずなのにと思うのだが、 にもかかわらず出来が違う。  なぜか。  集中力か、頭のつくりか。  同じことをやっ

          『考えて、考えて、考える』 丹羽宇一郎 藤井聡太 講談社

          『2050年のジャーナリスト』 下山進 毎日新聞出版

           私の父は大学生時代(1952年頃)、ジャーナリストになりたいと考えていたようだ。  ジャーナリストとは何者なのか。  新聞社のなかで、夕刊を廃止する社が増えている。  多くの人が情報を得るのはいまやネットやSNSなのかもしれない。  私が一日でもっとも早く、まともに接する朝食時のテレビニュースで得た、新聞の朝刊原稿締切以降の情報が夕刊を出していない新聞に掲載されて私の目に触れるのは、翌日朝食後に出勤して、新聞を読んでからになる。まさに一日以上遅れ。忙しくてなかなか読めなけ

          『2050年のジャーナリスト』 下山進 毎日新聞出版

          『岸田ビジョン 分断から協調へ』 岸田文雄 講談社+α新書

           2020年9月に刊行された単行本を2021年10月に新書版へ改めたもの。「はじめに」は第100代内閣総理大臣就任したという報告から始まっている形に改稿、「あとがき」を削除している。  第101代内閣総理大臣に就任してから、読んでみようという気になった。 この手の、政治家の政策本というのは読んだことがなかった。  なぜいま?  生身の私にとって残り三十年のいま、あらためて私の「ビジョン」を明確にし、発信する時に来ている。当代の総理大臣のそれと対比することで、より質の高い「ビ

          『岸田ビジョン 分断から協調へ』 岸田文雄 講談社+α新書

          『2050年のメディア』 下山進 文藝春秋

           慶應SFC(慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス)での調査型講座『2050年のメディア』からスタートし、読売新聞社、日本経済新聞社、新聞販売店主、ヤフー・ジャパン関係者等への取材からその軌跡を読み解く。  いまから三十年を、まさに60歳になんなんとするわれらの時代と言うことができるとするならば、まさに2050年まではわれらの時代。その終わる頃、メディアはどうなるか。まだデジタル化、グローバル化なのか、データなのか。  新聞販売業界に18年余身を置いた私としては、実際にその際に交誼

          『2050年のメディア』 下山進 文藝春秋

          『後列のひと 無名人の戦後史』 清武英利 文藝春秋

           著者の名は「清武の乱」で初めて知った。  10年ほど前、プロ野球読売巨人軍球団代表だった清武英利氏が、読売新聞グループ本社会長兼主筆・読売巨人軍球団会長である渡邉恒雄氏がオーナーや球団代表・GMである自分の頭越しに、あらかじめ球団が決定し承認したコーチ人事を覆したことに対して、重大なコンプライアンス違反であると告発したものだった。一週間後、清武氏は渡邉恒雄氏への告発会見などにより球界を混乱させたことを理由として、読売巨人軍の一切の役職から解任された。  そんな同氏がこういう

          『後列のひと 無名人の戦後史』 清武英利 文藝春秋

          『もしも徳川家康が総理大臣になったら』 眞邊明人 サンマーク出版

           2020年4月1日、AIとホログラム技術で復活した歴史上の偉人たちで構成された最強内閣、その最初の閣議が開かれ、2021年10月20日、その後の新たな内閣が発足した。  私たちが私たちの時代のためにできること。  私たちの時代は未来の時代の助けとなる必要がある。  昔、「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」と言ったそうであるが、 いま、一般人の経験が歴史に流れ込み、未来の時代を変える時節である。    未来の時代をよりよく変えるために、私たちにも自分の経験を有用のものとす

          『もしも徳川家康が総理大臣になったら』 眞邊明人 サンマーク出版

          『明治を食いつくした男 大倉喜八郎伝』 岡田和裕 産経NF文庫

          渋沢栄一と多くの場面で同じ舞台にいた大倉喜八郎。 個人的には東郷神社に祀られている東郷平八郎と並んでその名に親しみを感じてきたが、その理由は定かではない。 あやめ城とも呼ばれる新発田城のある新潟県新発田市出身。 自分史の神様色川大吉先生が教授を務めた東京経済大学の前身大倉商業学校を設立した。 The Okura Tokyo (旧ホテルオークラ)は子息喜七郎の手による。 此里と共にさかえよ なれ来つる 松のあるしは けふかはるとも 鶴彦

          『明治を食いつくした男 大倉喜八郎伝』 岡田和裕 産経NF文庫

          『復活の日』 小松左京 角川文庫

           米国ポーツマス近くの細菌戦研究所でつくられたMM-八八が持ち出され、それを積んだ飛行機が落ちることで、気づかれず、対処できぬまま、人類は、南極大陸と2隻の原潜の搭乗員約一万人以外、死滅してしまう。 「たかが風邪」「たかがインフルエンザ」で滅びる人類。  小松左京は舞台を一九六×年二月はじめから書きはじめ、初版あとがきを昭和三十九年(1964年)八月付で書いている。  いまコロナ禍下の令和三年(2021年)九月。  小説は、大映画化された作品すら、社会を導くには力が足らな

          『復活の日』 小松左京 角川文庫

          『三十年後』 星一 新潮社

           星新一の父親星一が大正七年に出版したSF。星新一が約半分の長さにちぢめ、星新一の次女が監修している。  舞台は『三十年後』であるから、大正三十七年、つまり昭和二十三年。 星一自身は昭和二十六年まで生きていたから、その違いをどう思ったか。『三十年後』としたが、自らの想像した未来を描いた小説であって、その年数はどうでもよかったのかもしれない。令和三年の今、ようやくそれらしいものが登場し始めていたり、まだ当分かかりそうなものすら登場する。『人民は弱し 官吏は強し』によれば星一は発

          『三十年後』 星一 新潮社

          『人民は弱し 官吏は強し』星新一 新潮文庫

           私が中学生だった頃、級友がよく星新一の本を読んでいて、私もまねて『ボッコちゃん』などを読んだ。星新一の親戚筋の先輩が同時期に在校されていたのは、先輩も私も卒業してだいぶ経ってから知った。  星新一がこの作品で描いた父親星一はよく後藤新平伯のお宅へよく通っていたと、この作品の解説で知った。後藤新平伯の写真は私のその母校の学校案内に使われていて見慣れ感があり、このあたりの縁の糸に、私は不思議な感じがする。  先にも記した通り、星新一はこの作品で実父星一の実業界での闘いの姿を描

          『人民は弱し 官吏は強し』星新一 新潮文庫