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【詩】蟻

私は 炎天下
仲間と一緒に一列になって
誰かが落としたビスケットの残骸を
せっせと巣に運んでいた

ここは そう 家の近くの公園
行動範囲は小さな公園の
百分の一にも満たないものらしい

   どうして自分はこんなに小さくなって
   こんなに小さな場所で
   こんなにくだらないことをしているのだろうか

突然 地響きと共に辺りは暗くなり
横殴りの洪水が私達たちを襲った

「神様 どうかお守りください」
そう口々につぶやきながら地べたにひれ伏した
天災は一瞬で唐突に止み
再び明るい太陽に包まれると
私たちはすぐにまたもとの列を作り
何もなかったかのように作業に戻った

「今のは天災じゃない
人間の子供が走ってきて
水たまりに足を踏み入れただけじゃないか」
私は仲間に訴えた
皆が私を無視した
その子供の後ろ姿をよく見ると
自分の息子だった
人間の私と手をつなぎ
はしゃぎながらどこかに出かけようとしている

慌てて追いかけようとしたら
蟻の長老に呼び止められた
途端に動けなくなった私は必死で叫んだ
「人間は子供でも蟻よりずっと大きくて
すごいことがたくさんできる」
「じゃあその人間とやらは
蟻より偉い生き物なのかね」
蟻の長老が私に詰め寄り尋ねてきた

答えを探しているうちに
今度は大きな泥の波が畝ってきた
私はまともに飲み込まれ
息ができずにもがきまわっていた

私は目を覚まそうとしている蟻だった


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