見出し画像

【詩】キリン

キリン

超高層ビルの工事現場は
都心のエアポケットのようだ
赤と白の骨組みの大きなタワークレーンが
宇宙から来たキリンみたいに
青空に向かって夢を語っている
フックはキリンが首から掛けた
ミッキ-マウスのペンダントヘッドだ

建築中の期間限定で
赤白キリンは華やかに輝く
並んだり背中合わせになったり
現場で働く仲間達と一緒に
飾り気のない日常で地道に作業をする
「オ-ライ オ-ライ」と
あちらこちらから張りのある明るい声が飛んでくる
人々はそれぞれの生活を抱えて毎日汗を光らせる

はじめ地上の高さで働いていたキリンは
ビルの建築が進むに連れて 
だんだん高い位置に上がっていき
やがて思い切り見上げても頭の一部しか見えないほど
高くて遠いところに行ってしまった

完成後のビルには
煌びやかな別世界が広がった
開けっ広げで際限のない豪華さの中を
おしゃれに着飾った人々が闊歩し
火照った頬で目を輝かせながら上る舞台になった

建築を一から支え続けた赤白キリンは
一緒に働いてきた仲間達と共に
いつしか
消えた

宇宙に帰ったのだろうか

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?