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【詩】休憩

休憩

休憩

彼女はとうとう離婚してしまった
自分の痛みを小さな缶に無理矢理詰め込み
ハンマーで釘を打ちまくって蓋をしているようだった
小学生になったばかりのひとり娘のために

何が正しいとか
誰のせいとか
きっとどうでもいいことなのだ
愛と優しさ以外のもろもろ

無力な私の胸は焦燥感でただれそうだ
彼女の家まで通い慣れた大通りの並木道が辛い
強風と雨で桜はほとんど散ってしまった
薄紅色の絨毯の上を歩きながら
惨めさばかりに傘が襲われる
春の寒さに魂が芯から凍える

彼女は
深い穴のどん底に落ちて
どこにも摑まる場所が見つからない感じだと言っていた
両手と両足を
もろもろと崩れる壁につっかえさせるようにして
少しずつでも自力で上っていけるものだろうか
それとも自然に浮き上がれるまで待つべきなのか

工事中の黄色い看板が
「右に行け」と矢印で命令する
横柄な態度に八つ当たりをしたくなる
工事現場を覗くと
オレンジ色の夜光を灯して
作業の順番を待つマンホールがあった
底には散った桜の花びらが
丸い絨毯のように厚く重なっていた

どん底にいるというのなら
「しばらくそこで人生を休憩して」
とでも伝えようか


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