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現代詩2

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過去に発表した現代詩の作品集です。
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#詩

【詩】書く

書く 蝉の声を聞きながら 掛かり付けの内科まで 火照った身体を引きずるように 歩いて行った …

【詩】大空からの涙

大空からの涙 揺りかごに揺られるような心地良さに いつの間にかうたた寝をしていた 当然訪れ…

【詩】ひな祭り

ひな祭り 「今日は楽しいひな祭り」と歌うメロディーが どうしてこんなに切ないのだろう 3…

【詩】寄り道

寄り道 緊迫したミーティングを終え オフィスに戻ろうと乗ったタクシーは 月末と秋雨が重なり…

【詩】月の鏡

月の鏡 群青色の夜空 神さまのおとぎ話みたいに 満月が静かに微笑む 散りばめられた星屑の下…

【詩】絆

絆 青々とした強気な自我に反し 刹那の戯れへの未練を残しながら 抗えない力に導かれるように…

【詩】公約

公約 リビングで うとうと  久しぶりに心地良い昼寝をしていた 子供達と一緒にさっきプールから帰ってきて 美味しいランチを食べたばかり 灼熱の太陽に直接エネルギーをもらい遊び疲れた 丁度いい設定温度のエアコンが快適だ 心も体も満ち足りた幸せ いきなり家の前の道に 選挙カーが候補者の名前を連呼しながら近付いてきて 無理やり起こされた そのまま停車し演説が始まる 「わたくし 皆さまおひとりおひとりのお声を政治に反映させ...」 「皆さまのためにこの身を捧げる覚悟でございます.

【詩】非常階段

非常階段 以前住んでいた我が家のリビングから 水色のオフィスビルが見えた 隣の大きな月極駐…

【詩】読む

読む 早朝の私鉄駅 小銭入れのジッパーを無意識に開け閉めしながら 券売機の前で運賃表を見上…

【詩】薬指

薬指 三歳になったばかりの娘が 赤いクレヨンで絵を描いてくれた たどたどしい線がかろうじて…

【詩】休憩

休憩 休憩 彼女はとうとう離婚してしまった 自分の痛みを小さな缶に無理矢理詰め込み ハンマ…

【詩】独り占め

独り占め 花冷えの午後 白いトレンチコートの下に 薄紅色のセーターを着込んでいた 桜並木の…

【詩】ひがん

ひがん 春分の日が終わろうとしている 境界のない空が 穢土を知らない子供のような 屈託なく…

【詩】怖い一日

怖い一日 午後にはまた あの人に会わなければならない 怖い 先日投げ付けられた ネガティブな言葉がよみがえる 渓谷を流れる清らかな水のように 湧き上がる嫌な思いを留めず受け流し 上手く扱えたら こういう日に限って どうして曇天なんだろう キッチン全体が 寒々とした湿原のようだ 胃がよじれるようにざわつき 苦い液体が湧き出てくる ミクロの虫たちが際限なく産まれては 胃の中をぐるぐる廻っているようだ 時折 心臓近くまで侵食してくる感じで 臓器がドキンと波打つ たった今や