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「ネットは信用できない」からの15年後

All Aboutのファッションガイド、宮田理江さんと平格彦さんのclubhouseを聞いていたら「ガイドになった15年前は、記事を作るときにファッションブランドからお洋服の“写真さえ”借りることができなかったから、NYまで実費で行って、コレクションの合間に来場者のスナップ写真を撮って記事を作っていた」という話があって、「すごい情熱!」というリスペクトとともに「そうそう、そういう時代あったー!」と思い出した。


「ネット掲載NG」も当たり前だった15年前

15年前といえば私が新卒でAll Aboutに入社した2006年。Google検索はまだ精度が低く、検索結果は雑多で、「ネットはどれが正しい情報かわからない」という人も多かったと思う。

メディア業界では雑誌の編集者が少しずつネットへ進出しはじめて、ウェブ上で雑誌が展開される“ウェブマガジン”が続々と誕生。勢いはありながらも、私が担当していた20代女性向け、40代女性向けマガジンの特集企画でも、ファッション、ジュエリー、コスメなどは「撮影用商品を貸してもらえない」「ネット掲載NG」という時が確かにあった。

ブランドの担当者さんからは「ネットには商品をださないことにしているので」というお返事。その言葉の前には「ネットは煩雑で信用していないので」という暗黙の前置きがあったように思う。


ネット編集者だって読者に喜んでもらいたい気持ちは同じ

雑誌のように校正された情報だけではないネットの世界。「ネット情報=信用できない」というレッテルがあるなかでも、私の周りの編集者やライターさんは「ネットで記事を読んでくれるユーザーを喜ばせたい」と、奮闘していたように思う。

ただ「媒体で商品を紹介する」ため。そのためにウェブメディアの編集者たちは「紙媒体のように丁寧に責任をもって記事を作ります」ということを行動とコミュニケーションで継続的にしぶとく示し続けないといけなかったし、雑誌からやってきた先輩たちがいかに紙と同じように世界観を作り込んで、商品の魅力が読者に伝わる記事を作ろうとしているのか、取引先やクライアントにプレゼンする姿を私は何度もみていた。それはまるで「ウェブメディアの信頼を積み上げていく」、そんなプロセスだった感じもする。

紙には紙の良さ、ウェブにはウェブの良さがあるし、クリエイティブは作り手によって変わるもの。ウェブだからといって不真面目、適当なんてことは全くなく、新人時代の私も死ぬほどダメ出しをくらいながら記事を作っていたし、先輩たちが作る記事には雑誌とかわらぬクオリティにプラスして、ウェブだからこそ加えられる“動き”があったりと、革新的なものが多かった。それでも商品をすんなり貸してもらえるまではすごく時間がかかったように思う。


ネットをいかに安全で信頼できる、ハッピーな場にするか

そんな経験もあってか、ウェブ編集者としてコンテンツを作る時によく考えていることがある。それは「ネットをいかに安全で信頼できる、ハッピーな場にするか」ということ。これは私が記事やコンテンツを作るうえで、とても大事にしているポリシーでもあるし、個性の光るカフェが探せるアプリ「CafeSnap」にも反映されている。

たとえば、アプリのなかで「お店を点数などで評価しない」ということもひとつ。私にとってカフェはオーナーさんの分身のような存在で、カフェにはオーナーさんの好きなものや得意なこと、想い、人生がつまっている。

お店に点数をつけることは人に点数をつけること。個人的にそんなことは全くやりたくないし、お店、オーナー、お客様であるユーザーのあいだに、ネガティブな歪みは必要ないと思っている。それからカフェをオーナーと考えると、「お客さんとカフェ」は「人と人」。相性もあるし、「自分の好き」が見つかればいいので、CafeSnapは自分好みのお店をさまざまな切り口で探せる「検索機能」を強化している。

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もうひとつ、CafeSnapはユーザーが自由に写真とコメントを投稿できる「ユーザー参加型カフェアプリ」という形を採用しているのだけれど、ユーザーの投稿に悪口や批判はほぼ皆無で、逆にポジティブなコメントが多い。これは、まさに自分が作りたかった世界で嬉しいなと思っている。

カフェは人と同じように、つねに「成長中」。いまはうまくできないことや苦手なことがあっても、成長していくにつれて、いろんなことができるようになったり改善されていく。それは人もカフェも同じ。だから、欠点に目をむけるのではなくて、魅力に注目したい。そんな想いは、CafeSnapの発案者としてこれまで公で言ったり書いたりはしていないのだけれど、ユーザーにも不思議と伝わっているように思う。

いつアプリを開いても「カフェっていいな……」と思う写真やコメントが投稿されているCafeSnapは、わたしひとりではなく、カフェ好きのユーザーやオーナーをはじめとするカフェの作り手のみなさん、エンジニアやライター、みんなで作っているもの。

このちょっとしたユートピアを、より安全で信頼できる、ハッピーな場にしていくためにはどうすればいいのか、アプリのアップデートをふくめて、2021年の思いを巡らせているところであります。


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