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女性研究者と育児(1)

3年前にreserchmapに書いた「女性研究hさと育児(1)」という研究ブログを読んでくださっている方がいると知り,こちらに再掲します。その後,途絶えています。。

志波 彩子 (Ayako SHIBA) - 研究ブログ - researchmap


発信していきたいことの1つに女性研究者と育児についてがあり,今年最初のトピックにしました。

私は博士後期在学中の博士論文執筆中に長女を出産し,長女が2歳になる2009年に博論を提出しました。

長女の誕生は夫婦ともに初めての子供で興奮し,超真面目に育児本を読み込んで,子育てに情熱を持って熱心に励みました。長女が発した言葉はできるだけ記録し,やれ寝返りした,お座りした,バイバイした,と言っては喜んで,慣れないことに奮闘しながらも楽しんでいたと思います。1歳になった頃には6キロ離れた保育園に自転車で30分以上かけて預け,2往復合計24キロを走りながらダラダラと博論を書き続けていました。

博論提出後,東京外国語大学のグローバルCOE研究員に雇っていただき,その2年目に次女を出産して,約4ヶ月の産休と育休をとりました。30代半ばの身体で妊娠し,酷暑の中,大きなお腹を抱えて妊娠9ヶ月まで,1時間半の通勤でしたので,大学に着いたときにはすでにヘトヘトになっていました。そして,産後の身体にたった3ヶ月の休暇は非常に厳しいものでしたが,当時は同じ研究員の人たちに迷惑をかけたくない,さらに,仕事をして稼ぎたい,という思いがあり,職場に戻りました。

職場では,授乳できないおっぱいがガチガチになり,トイレで絞ろうとしてもうまくできずに,相当に気持ち悪くなりながら,ヨレヨレで勤務しました。次女が0歳,長女が3歳で,連れはサバティカルでカナダに行ってしまい,完全にワンオペのすさまじい日々でした。が,幸いにも両方の実家が近所で,母たちにずいぶん助けられました。週末には子供二人を午前中は公園に連れて行き,そのあと連れの実家で倒れるようにぐうぐう寝ていました。家の中はぐちゃぐちゃでしたが,次女は平和でよく笑い,よく寝る子だったので,まだ前を向いて育児ができていたと思います。

ただ,仕事の方は,研究員でしたがほとんど研究も進めず,非常勤をしていた授業の準備ばかりに明け暮れていました。授業といっても週に2コマ程度なのですが,作文の授業で添削などかなり時間を取られていました。連れがカナダに行ったこともあり,車の運転をはじめて車で通勤していましたが,通勤途中に睡魔で一瞬意識がなくなったことがあり,怖すぎて車通勤はやめたのでした。

そんなバタバタの日々をなんとか乗り越え,次女がようやく1歳を過ぎ,さあ,これからはもっと仕事に専念して研究を進めよう!,と思った矢先,図らずも三女の妊娠がわかり,愕然としました。すでに研究員の任期も切れ,せっかくいただいていた非常勤の職もすべて断って,後悔と不安を抱えながら三女を出産。このあとの2年は,自分としては人生でもっとも辛い,地獄の日々でした。

この地獄の日々についてはまた日を改めて書きたいと思いますが,研究者を志す女性に伝えたいことの第一は,研究という仕事に理解のある方を家族に持つことが大事だということです。一方で,研究と3歳までの育児を「両立」というのは,無理だと思います。なぜなら赤ん坊には授乳しなければならない,授乳すれば血液はほぼ頭に回りませんし,夜泣きもするから常に寝不足です。論理的な思考や集中力の要る観察・分析などができる状態ではありません。日々の雑務をこなすので本当に精一杯です。だから,赤ん坊を抱えながら研究が進められるなどとは考えない方がいいと思います(特に最初の1年)。

しかし,そうだとしても,子供を預けられるようになったときに周りで支えてくれる人たちがいるのといないのでは大きな違いです。わたしの場合は,幸いにも,2つの実家の近くに住むことができたため,なんとか細々と研究の道を途切れ途切れであっても,歩いて来ることができました。

ただ,ほとんどの人は実家が近くにないのが現状だと思います。どうするか。

これは人から聞いた話です(TVで取り上げられた)が,ある大企業に務める女性が妊娠し,休日に近所の公園で散策する人を観察するうちに,ある老夫婦に惹かれ,この赤の他人の夫婦に付いて行って,お家を訪ね,自分の育児を手伝って欲しい,生まれて来る子供を預かって欲しいと頭を下げたそうです。老夫婦はこの話を受け入れ,子供を預かり,それはそれは可愛がってくださったとか。すごい話だと思います。

ここにあるのは情熱です。自分がどのくらい仕事(研究)がしたいか。自分が研究が好きだという気持ちと自分の能力を信じて進む気持ちです。その強い気持ちがあれば,できない理由ではなく,どうすればできるか,を考えられるでしょう。そして,育児を助けてくれる人を周りに見つけることがとにかく大事です。「遠くの親戚より近くの他人」は,育児にとっては非常に大事です。

今はベビーシッター制度もかなり一般的になりましたし,市町村のサポートもいろいろあると思います。また,男性の育児への関心も年々高まってきてはいます。しかし,やはり育児というのはどうしても母親に負担がかかるものです。これはまぎれもない事実なので受け入れるしかありません。

よく,子供が生まれたあとに「こんなに大変だと思わなかった」というお母さんがいらっしゃるのですが,育児は冗談でなく大変な一大事業です。とくに3歳まではとにかく手がかかります。できれば生まれる前に,できる限りのサポート体制を整えておくことが大事かな,と思います。

書きたいことはたくさんあるのにありきたりなことしか書けませんが,またつづきを書いて行きます。

PS. 写真はこどもの日に作ったちらし寿司。


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