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《聖書-5》アブラハム

こんにちは。
Ayaです。
《聖書》第5回の今回はアブラハムについて取り上げます。

アブラハム

第2回で取り上げたノアの何世代か後の子孫にあたります。妻サライと、甥のロトと慎ましく生活を送っていました。そんなアブラハムが75歳になったとき、神から『わたしの示す地にいきなさい』と命じられ、旅立ちます。アブラハムはカナン地方に到着し、神から祝福を受けたので祭壇を築きました。このカナン地方がのちに『約束された地』となるのです。アブラハムはさらに旅を続け、ケネブ地方に定住しましたが、飢饉が起きたため、エジプトに避難します。
さて、アブラハムの妻サライはアブラハムより10歳ほど年下ですでに高齢でしたが、とても美しい女性でした(今でいう美魔女?)。そのためアブラハム 

「エジプト人があなたを見たら、『あの女はあの男の妻だ』といって、わたしを殺し、あなたを生かしておくにちがいない。どうか、わたしの妹だといってください。」

創世記12-10

というよくわからないお願いをします。案の定サライの美貌はファラオの目に止まり後宮に連れていかれました。そのとき『兄』として贈答品をたくさんもらったアブラハムでしたが、すぐサライがアブラハムの妻であるとわかり、追い出されました。このときもらった品は返していないようで、美人局のような話だなと思ってしまいました汗。
さてエジプトからケネブ地方に戻ったアブラハム一行。甥ロトは独立してソドムという町に住むこととなりました。

ハガル母子の追放

話は変わって、アブラハムとサライの長年の悩みは子どもができなかったことでした。サライは年齢的に自分の妊娠は難しいと考え、自分の女奴隷ハガルを夫に差し出します。アブラハムは妻の提案を受け入れ、ハガルと何度か関係を持ちました。めでたくハガルは妊娠しました。しかし、そのハガルが横柄な態度をとったため、サライはハガルを虐待します。ハガルは耐えかねて逃亡しようとしますが、天使の力づけによってとどまり、『イシュマエル』という男児を出産しました。
アブラハムはイシュマエルの誕生を神に感謝しました。しかし、『イシュマエルは正式な跡取りではない。正式な跡取りはサライが生む』と言われます。半信半疑のアブラハムの前に、天使3人が現れました。アブラハムはサライとともに彼らを歓待しました。天使たちはアブラハムとサライの間に跡取りが生まれるという神の言葉をまた話しますが、サライは内心あてにならないと笑っていました。天使たちは彼女の内心を見透かしているように、彼女のサラへの改名と、生まれくる男子には『イサク(笑う)』と名づけるようにと神の命令を伝え、去っていきました。この天使たちの訪問に決心がついたのか、アブラハムは99歳にして割礼(男性器の一部を手術すること)を受けました。これによってユダヤ人の男子はかならず割礼を受けることが風習となっていきました。その甲斐もあったのかわかりませんが、アブラハム100歳、サラ90歳にして念願の男児・イサクが生まれました。
実子が生まれた以上、サラにとって妾ハガルとイシュマエルは邪魔でしかありません。サラはアブラハムに強くハガル母子を追い出すように求めます。アブラハムは最初躊躇しましたが、神に相談したところ『サラの思う通りにしてあげなさい』と言われたので、わずかな水と食糧を渡してハガル母子を追い出します。その絵がこちらです。

ヤン・ステーン『ハガル母子の追放』
アブラハムの後ろにサラがいる。ファラオに召されるくらい年齢不詳な美女のはずのサラはこの主題では年相応の老婆で描かれている。

いまでもイスラエル周辺は過酷な暑さですから、ハガル母子にとって死ねと言われているのと一緒です。イシュマエルが倒れ、絶望したハガルは座り込みます。そのとき天使が現れ、オアシスの場所を教えました。そのおかげでハガル母子は助かり、イシュマエルは無事成人しました。この彼の子孫がアラブ人となり、ユダヤ人と未だに争うこととなるのです。

イサクの犠牲

イシュマエルを追い出し、アブラハムの跡取りとなったイサク。
しかし、神はアブラハムに予想外の命令を下します。『イサクを生贄に捧げろ』というのです。アブラハムは迷いに迷った末、決断します。
アブラハムはイサクを連れて山に登ります。イサクは生贄にする動物を連れて行かない父に疑問を抱きながらついていきます。山頂につき、アブラハムはイサクに打ち明けます。当然ながらイサクは泣いて抵抗しましたが、父に説得され自分が生贄となるたことを受け入れます。イサクを祭壇に横たえ、ナイフを振り下ろそうとした刹那、天使がアブラハムをとめます。神は『あなたのわたしに対する信心を試すためだった。生贄の動物は準備してある』といい、イサクは助かりました。
この『イサクの犠牲』はたくさんの画家がとりあげています。ほとんどのイサクは観念し抵抗していませんが、カラヴァッジョのこの作品は叫び声が聞こえてきそうです。

カラヴァッジョ『イサクの犠牲』

実際、いくら神の命令とはいえ、実の父に殺されると知ったらこんな感じになるでしょう。しかし、イサク自身も息子たちとの関係に悩まされることとなるのです。

ロトとロトの娘たち


さて、アブラハムのもとから独立した甥ロトも強烈なエピソードが残っています。
ロトはソドムという町で結婚し、娘を2人もうけていました。問題はこの『ソドム』という町です。この町は繁栄していましたが、同性愛が流行っていました。第2回のノアでも述べましたが、同性愛は聖書の世界では大罪とされています。神は天使たちをソドムの町に派遣し、もし本当にそうなら滅ぼしてくるようにと命じました。
天使たちがソドムの町に到着すると、早速荒くれ者たちに目をつけられました。ロトは天使たちを見てただものではないと感じ、自分の家の客だと言ってかばいます。美しい天使たちの姿に欲情した荒くれ者たちがロトの家に押しかけました。すると、ロトは、

「どうか、皆さん、乱暴なことはしないでください。実は、わたしにはまだ嫁がせていない娘が二人おります。皆さんにその娘たちを差し出しますから、好きなようにしてください。ただ、あの方々には何もしないでください。」

創世記19-8

と実の娘たちを盾に見知らぬ天使たちを守ろうとします。天使たちはロト一家だけ助けることを決め、『決して振り返るな』と厳命して逃します。天使たちの攻撃で町は火の海となり、命令に反して振り返ったロトの妻は恐怖のあまり『塩の柱』となってしまいます。

パティニール『ソドムとゴモラの崩壊のある風景』

辛くも逃げ延びたロトと娘たちは洞窟で生活を始めます。年頃になっていた娘たちは結婚したかったのですが、周りには相手になりそうな男はいません。姉娘は妹娘に、

「わたしは夕べ父と寝ました。今晩も父にぶどう酒を飲ませて、あなたが行って父と床を共にし、父から子種をいただきましょう。」

創世記19-34

と衝撃の発言をします。ロトにたらふく酒を飲ませて正体を失わせ、行為に至ったのです。こうしてロトの娘たちは子供を妊娠・出産、モアム人とアモン人の祖となりました。
この『ロトとロトの娘たち』のエピソードは、旧約聖書内でも一・ニを争う淫靡なエピソードとして知られます。

ヤン・マセイス『ロトとその娘たち』

聖書では近親相姦は禁じています。もうひとつの近親相姦のエピソードでは神から罰が下されているので、『ロトと娘たち』が異様すぎます。これは男性のロトではなく、女性の娘たち主導で行っているからではないでしょうか。イヴのエピソードで『女性は男性より下と扱われています』と述べましたが、男性のロトはあくまでも被害者、娘たちによる逆レイプという解釈がなされています。また彼女たちの子孫であるモアブ人とアモン人はユダヤ人と対立した民族なので、彼らの出自を蔑めるためのエピソードとも考えられます。
それにしてもいくら泥酔していたとしても、父親が娘と気づかないものでしょうか。そんな状態で行為して、妊娠するものなんでしょうか。
アブラハムは様々な試練を乗り越えたので、『信仰の父』とされています。しかし、実際に苦しんでいたのはサラ、ハガル、イシュマエル、イサクであるような気がします。しかも、サラの死後、アブラハムは再婚し、その間に子どもたちも生まれています。十分幸せじゃない…??
さて、父に殺されそうになったイサクでしたが、自身も息子たちとの関係に悩むこととなります。





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