見出し画像

夢か現実か? 情報管理社会で生き抜く人々の未来

映画作品名:未来世紀ブラジル
監督名: テリー・ギリアム
配給会社:20世紀フォックス
公開年:1985年


【あらすじ】
20世紀のとある仮想国、偶発的な爆発事故が街中で多発する不穏な状況下、政府の情報管理局で勤務するサム・ラウリー(ジョナサン・プライス)は、出世を望まず、従順に決められた仕事をこなす日々を送っていた。
サムは最近、夢の中に出てくる美女に心奪われていたのだが、ある日その彼女とそっくりの美女を情報管理局内で見かける。彼女はジル・レイトンという名で、「情報管理局に連行された犯罪容疑者は人違いだ」と告発していたのだった。サムは彼女に近づきたい一心で上層部門への昇進を受け入れるが、やがて情報管理社会がもたらす弊害に飲み込まれていく。

【みどころ】
 この映画は、離乳食のような食べ物に、タイプライターと書類という古風な仕事ツール、そして室内に張り巡らされた無骨なダクトなど、これが近未来?と疑うような映像で埋め尽くされている。


 とりわけ「書類」と「ダクト」。この二つは政府が市民を管理するためのツールとして、頻繁に映画に登場する。笑えないのが、たかが書類一枚のタイプミスで身柄を拘束されてしまうことだ。理不尽極まりない。


加えてもっと笑えないのが、映画に出てくる人が皆、他人に対して驚くほど無関心で自己中心的であることだ。サムが母の友人交えてレストランで食事をする中、爆発事故が起きるが誰も動じない。政府の怠慢を指摘されれば「それは私の担当業務ではありません、そもそも今は休憩時間中ですし」と切り返す様子に、ギョッとする人もいるのではないか。自分も形式やルールばかりにとらわれて同じセリフを吐いていやしないだろうか、そう反省させられる。


夢の中の美女を追い求めて情報管理局の内部へと飛び込んでいくものの、情報管理社会がもたらす負の現実を目の当たりにし罪悪感にさいなまれるサム。彼を見て滑稽で悲惨だと笑ってばかりもいられないのは、働き方改革が進む現代の日本人も同じだ。

頂いたお金は、会社の同僚と食べるお菓子代に使わせていただきます。