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スペインの病人食「トーストにハム」が辛すぎる

いまのいままで実感することがなかったのですが、海外に住んでいて一番困るのは病気になったときです。気が付くのが遅すぎやしないかと、6年ちかく住んでいる人がいうセリフではないのではないかと、そう思うかもしれません。ですが、私はありがたいことに、基本的には非常に健康。だからちょっと具合が悪いかもと察知したら、すぐに寝る。それで回復してきたわけです。
 
ところが今回、日本に一時帰国し、バルセロナに帰る日の数日ぐらい前から体調が悪くなり、こちらに戻ってきたときにはゾンビのようになっていました。
 
日本にいたら、薬と栄養ドリンクやポカリスエットをがぶ飲みして寝る。それでも辛かったら近所のクリニックへ行く。回復してきたら、お粥からスタートして徐々に通常の食事に戻していてく。というのが多くの人の行動パターンかなと思うのですが、ここにいるとそのどれもができないのです。
 

「風邪薬」がない


 
まず、市販の薬。こちらの薬局は日本の処方箋を持っていくような本気薬局です。薬から化粧品から何から何まで売っています、というような日本のドラッグストア的存在ではありません。
 
そしてこちらには、日本で売られているような強力な風邪薬がなく、なぜかすごく優しいオーガニックな方法で治そうとするのです。「咳が止まらない」ならシロップ、もしくはハチミツの要素が入った飴。「頭が痛い」「体が痛い」「熱がある」ならとりあえずイブプロフェンかパラセタモールの2択。こんな方法では一生治らないのではないかと、本気で絶望しました。
 
さらに医者。スペインでは公共の医療機関が無料で受けることができるのですが、ここに行くのは本当に最後の手段にしたいというレベル。このように風邪で辛すぎてもうダメ、という場合は緊急に行くことになりますが、何時間待つことになるのかは誰にもわからない。運が良ければすぐ診てもらえるかもしれないし、運が悪ければ延々と順番を待たなくてはいけないのです。
 
自分でお金をさらに払って(医療費が無料なのは高い税金を払っているからです)、プライベートの保険に入れば日本でいうクリニックのようなところで比較的早く診てもらえるようですが、入っていない私は緊急へ行くしかありません。もちろんお金を払えば、誰でも診てもらえますが1回の診察に何十ユーロも取られるうえに、びっくりするくらい適当な医者もいるので気軽には行けません。
 
結局、今回は病院に行くのは免れましたが、日本にいたらすぐに病院に行けるのにと絶望の淵を彷徨っていました。
 

スペイン人の病人食


 
そして極めつけが食事。ここの人たちの病人食は、なんとトーストにハム(普通のハム。さすがに生ハムではない)。私が倒れているあいだ、パートナー(カタルーニャ人)が買い物にも行ってくれたのですが、ひたすらトーストにハム、そして鶏肉を勧めてくる(ほかの日本人からこの話を聞いたことはあったけど、まさか本当に勧めてくるとは思っていなかった)。そして、咳がひどいというので生姜ハチミツ紅茶。喉に良いのはわかるけど、オーガニックすぎて治らないわけです。
 
想像してみてください。こちらは吐き気がしていて、気力もないのにトーストなんか食べられるわけがない。ハムの姿なんて見たくもない。お粥とか雑炊とか、栄養もあるけど優しい味ものを欲しているのに、辛い、辛すぎる。
 
お粥を作ってほしくても、それが何だかわからない人に頼んでも仕方ないので、這い上がって自分でお粥を作る。甘いものがあまり得意ではないのに、紅茶にハチミツと嫌いな生姜なんか入れたら余計に吐き気がする(とくに冷めたとき)──こんなに切実に日本に帰りたいと思ったことはありませんでした(帰ったばかりだったのに)。
 
結局1週間ちょっとでだいぶ復活したのですが、コロナにかかったときですら3日目くらいから通常営業していた身としては、永遠のように思われる日々でした。そして、いかに日本の医療制度が素晴らしく安心できるものであるか、いかに自分の味覚が日本人であるかということを痛感した日々でもありました。
 
バルセロナだけでなく、海外旅行でも移住でもする際は、日本の風邪薬を常備しておくことを強くお勧めします。健康には気を付けましょう。

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