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いつかの落とし物

相変わらずだなぁと、つぶやくことが立て続いた11月。

つい先日、用事があって実家に帰省していた。数日間滞在する中、私は実家で探しておきたいものがあった。

戸棚を開け、ディスク化されたある映像を探す。思い当たるDVDのケースになければ、10年使っていないビデオカメラを充電して探し回った。
そうして本棚の中のDVDケースからようやく見つけたのは、中学生のときのピアノの発表会の映像。

中学1年生の時の映像が観たかった。製作中のZINEの書き下ろしを書くにあたって、これを観ることを避けては通れない気がした。

レコーダーにDVDを入れ、再生すると、ステージに上がり、中央で会釈するあどけない自分が出てきた。その自分が大きなグランドピアノの前に座る。

しかし、映像の中の自分は数分間弾かない。弾かずに肩を上下させたり、見てわかるほどの深呼吸をしている。緊張した時のその癖を見て、相変わらずだなぁと笑ってしまった。

そして本人の中で、何か今という時が来たのだろう、繰り返す深呼吸を続けるようにピアノに触れ、曲が始まった。13歳の拙い指使い、お世辞にも上手いとは言えない。だが、心にじんわりと響くものがあった。

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576字

かみつれ

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