ツイステで露呈するコスプレの不都合な真実(後編)

さて、これで公式衣装が出るようになると、購入派にマウントを取っていた自作派の連中に「公式派」がマウントを取り返す可能性が出てくる。
「公式衣装は購入すれば公式に金が入るが、自作は公式に金が入らない。公式衣装を買うことこそキャラ愛」
と云う理論だ。
レイヤー同士の争いは不毛だと書いたが、15年間その業界にいた自身も呆れている。

さて、誰かがWDJにコスプレについて問い合わせ、その回答をTwitterに書いていた。それによると、ツイステのコスプレは…前提としてDハロ以外は…「ルールとモラルを守った上でなら問題ない」が「個人のコスプレは認めていない」らしい。この一見矛盾した回答は解釈を巡って議論と混乱を生みそうではあるが、自身としては「ルールとモラルを守るなら可能」だと解釈した。
この「ルールとモラル」とは、簡単に言えば海賊版の衣装を使わないこと、ツイステのコスプレでアダルトや暴力的なことはしないことだ。つまりは、ディズニーの著作権やイメージ…作品や企業…を損ねないことを条件に可能と言える。
ただ、そうすると「個人のコスプレは認めていない」が矛盾する。これについては、「個人のコスプレは公認しない」と読めるのではないか、と判断している。

仮に「個人のコスプレは認める」と書くと、解釈によっては「ディズニーの公認」と受け取れる。
例えば、コスプレの公認と言われて連想するのは、イベントでの企業ブースのコンパニオンや雑誌のモデルと云う形の「金が絡む」方向だ。この連想を当てはめれば、「認める」と書くと「版権モノのコスプレで金を得ることを認める」と云う解釈をする者が出てくる可能性が有る。つまり、著作権に関わることになる。
コスプレは基本的に「三次元のファンアート」であり、あくまでファンによる活動の領域でしかない。そこに利益が出ると、それは著作権の侵害に抵触する可能性が有る。コミケなどの同人活動でも
「利益を出してはいけない」
と言っている連中の根拠は同じだ。
相手が著作権を侵害する可能性を、自ら誘発するようなことを言うワケにはいかない、言えば後々厄介になる。
だから「個人のコスプレは認めない」と云う回答が出るのではないか。つまり、正しくは「個人のコスプレは公認の形では認めない」だろうと解釈できる。
その上で、「ルールとモラルを守るのであれば(ファン活動としては)可能」と云うことであれば、2つの辻褄は合う。

これはあくまでも個人的に推測しただけの話で、正しいとは限らない。しかし、ここまでTwitter上で事が大きくなっているのは、コスプレ業界がグレーゾーンな部分が多く、特に衣装やウィッグ、小道具に至るまで海賊版が横行している、著作権的にはブラックな業界だ。
そして、何よりツイステの版権はアニプレックスではなくWDJが管理している。あの世界的にも厳しいと言われるディズニーだ。
ツイステは世界観のモチーフにヴィランズが使われている。そのため、仮にファンによる著作権の侵害が酷いことを理由に、WDJがアニプレックスとのライセンス契約を解除すれば、ツイステの世界観から成立しなくなり、サービス終了に追い込まれる。

採算的には全く問題も無い…ように見える…にも関わらずサービス終了を余儀なくされると、配信元のアニプレックスや開発元のf4samuraiにとっても業績に影響を及ぼす。しかし、最も影響…正しくはとばっちり…を受けるのはこの問題とは無関係のところでツイステを愉しんでいたファンだ。
採算面で終了するならば、残念ではあるものの諦めはつく。恨むとすれば、それこそ課金が足りなかった、と云う部分に留まる。それはそれで割り切れるとは思わないが。
しかし、一部のファンのコスプレなどがWDJの怒りを買い、ライセンス契約解除によってサービスが継続できなくなったとなると、諦めがつくことは無かろう。これが、ファンが現状最も警戒しているのだ。

その上、犯人を特定して炎上させる流れに至るのは容易に想像できる。そして、コスプレは顔出しで活動する世界だから、それこそ身バレやプライバシー問題にも発展する。
その、所謂特定厨によるネット上での社会的制裁…私刑は、最早当事者の自業自得で片付けられないほど、刑法に抵触する部分も有る。
しかし、そのリスクも大きいことを鑑みると、ツイステのコスプレは相当慎重に、最も安全な牌を選ぶしか無い。つまりは、公式衣装が出るまで待つのが一番安全だ。

遅かれ早かれ、恐らくアニメイトのコスプレ部門と云う形の公式衣装メーカー、アコスあたりが出すと、個人的には思う。ライセンスを基にした公式衣装の実績は豊富だ。尤も、ライセンスと需要次第による上、それがどの時期になるかは知らないが。
その上で、WDJが公式衣装でのコスプレは「個人相手に公認はしないが、ルールとモラルを遵守すればよい」との見解を発表した後、堂々とやればよい。尤も、それでもDハロは別だが。

衣装…だけではないが…を巡る不都合な真実を語るのに、ツイステの問題は材料として適していた。それは、それだけツイステの問題がナーバスと云うことだ。

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